表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
4/24

4日前 職業は教師

 キーンコーンカーンコーン


「それじゃあ、残りの夏休みも怪我とかしないように気をつけて過ごしてね」


 今僕は高校の教室にいる。


千夜せんや先生ー、また9月ー」

「さよならー」


 もちろん生徒じゃない教師としてだ。

 高校は夏休み真っ最中だが、今日は登校日なので生徒が登校している。授業はなくホームルームだけなので生徒達は午前中で帰れるが、僕達教師はいろいろと雑用がある。友達とおしゃべりをしながら教室を出て行く生徒達がうらやましい。


「先生、《RMMO》の正式版やりましたか?」


 そんな中で僕に声をかけてきたのは1人の男子生徒だ。彼の名前はむかい 健人けんと。昨日フレイズとの会話に出てきたギルドを辞めた生産プレイヤーは彼のことだ。


「うん、やってるよ。向君はやらないって言ってたけど、無料でもらえる正式版はどうしたの?」

「妹に上げました。それで、もし会うことがあったらいろいろ面倒見てやって欲しいんです」

「一緒にプレイしてってこと?」

「その、僕は妹に僕の代わりにあのゲームを楽しんで欲しくて正式版を上げたんですけど、何を勘違いしたのか僕の敵を討つって言い出して・・・」


 つまり後からレシピの権利を主張したプレイヤーを懲らしめようとしてるのか。


「妹はケイって名前でプレイしてるんで、無茶しないように助けてやって下さい」

「わかった。出会えるかはわからないけどそのときは面倒見てあげるよ」

「ありがとうございます」


 そういうと向君はほっとした顔で教室を出て行った。

 向君の妹の為にも出来るだけ《RMMO》の世界にいないと、そのためにも仕事を早く終わらせて帰ろう。


「千夜せんせ~」


 教室を出たところで横から猛スピードで突っ込んでくる女生徒をバックで教室に戻ることで回避。おお、まさか生で顔面スライディングを見ることが出来るとは。


「千夜先生、避けるなんてひどいよ~」

「多田さん、ナイス顔面スライディング!」


 僕は親指を立てた右手を女生徒の方に出した。

 彼女は多田ただ 愛実まなみ去年担任だった生徒だ。


「こんなに好きなのに何で受け止めてくれないんですか~」

「君が生徒で僕が教師だからだね」


 彼女はなぜか僕を好きだといってはばからない。彼女を助けたとか相談に乗ったりした覚えはないので理由はわからない。

 ただ、何度言ってもショックを受けたりやめたりする様子がないので、冗談半分だとは思うんだけど。


「じゃあ、卒業したら付き合ってください!」

「はいはい、卒業したら考えてあげる」

「まなみー!! おいてくよー!!」

「ほら、呼ばれてるよ。早く行ってあげなよ」

「うー、先生のいけず~」


 立ち上がった多田さんは僕より少し身長が高い。もう諦めたとはいえ女子高生にも負ける自分の身長が悲しくなってくる。


「先生またね~」

「さようなら、多田さん。こら、廊下は走っちゃだめだよ!」


 走って友達のほうに向かった多田さんに注意するが直ることはないんだろうな。


「も~、遅いよ~」

「ごめんごめん」

「今日どっか寄ってく?」

「あ~今あるゲームにはまっててさ~。今日は真っ直ぐ帰るよ~」

「え~、じゃあさ~……」


 多田さんの口から出たゲームという言葉に《RMMO》が思い浮かんだ。どうか別のゲームでありますように、もし《RMMO》でも出会うことがありませんように。




 《RMMO》にログインしました。現在地点は生産用施設の直ぐ横だ。昨日と同じ部屋が空いているのを確認して中に入る。

 今日は昨日途中まで作った人形を完成させる。背負い袋から取り出すのは昨日作った歪な人形と最後に作った人形、ナイフそして糸だ。

 まずは歪な人形をナイフでバラバラに切る。切ったらそれをナイフで輪っか状に削ってリングを作る。指のサイズに合わせて中を削るので結構大変だ。

 それを10個、手の指の分だけ作ったらナイフの先で出来るだけ小さく穴を穿つ。その穴に糸を通し、小さな木片に巻きつけて抜けないようにしたらリングは完成だ。

 今度は人形の方に糸をつける作業だ。現実の操り人形とは違い糸はどこにつけてもいいらしいので、適当な10箇所に切れ込みを入れて糸を巻きつけて縛ってみる。

 問題なければ、リングを手にはめてどう動くのかをイメージするだけで人形が動き出す。


 とりあえず右手を上げるようイメージしてみたら、人形の右手が微かに動いた。イメージどおりにスムーズに動かせないのは人形繰りのスキルがないからだろうか?とりあえず楽になるまで続けてみることにした。

 人形が動かしやすくなってきたのはそれから30分後、人形の右手を動かし続けてやっと地面と水平になる高さまで上げたところだった。

 そこからは10秒で右手を上げきることが出来た。確実にスキルを習得できたはずだ。

 その後はスキル上げとして1時間かけて人形にラジオ体操を始める。膝の屈伸があるところは難しいし、ジャンプするところは相当勢いを入れないと足が浮かなくて大変だった。

 終わったところでいい時間だったのでログアウト。

 はぁ、早く明日の夕方にならないかな。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ