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PKと復活

「あ、お兄ちゃん! お帰りなさい」

「ただいまー」


 雑貨屋に戻ると僕に気付いた琳音ちゃんが出迎えてくれた。やっぱりちょっと寂しかったかな?

 リアさんもわざわざ売り場まで出てきてくれる。エプロンを外してるから今日の作業は終わったみたいだ。


「あ、リアさん。ただいまー」

「お帰り、センヤ君。どうだった、満足な量採れた?」

「うん。北の森まで行ったんだけど、薬草なんかも採ってきたから後で渡すよ」

「ほんとに!? ありがとう、とても助かるわ」


 嬉しそうにお礼を言うリアさん。薬草類でこんなに喜ぶなんて、趣味が調薬の彼女ならではだね。


「1人にしてごめんね琳音ちゃん。今日は何してたの?」

「昨日の続きを読んでたから大丈夫だよお兄ちゃん。そういえば、お昼過ぎに変なウィンドウが出たよ」

「変なウィンドウ?」

「プレイヤーキラーって書いてあった」

「あと、久瀬 大地って人のステータスが書いてあったって言ってたわね」


 そっか、琳音ちゃんの所にも出たんだ。やっぱりあれは全プレイヤーに向けて表示されたみたいだね。


「お兄ちゃん、プレイヤーキラーって何?」


 うーん、どうしよう。11歳の女の子にしてもいい話なのかな? でも、知らないのも危険だしなぁ。


「いい、琳音ちゃん。これから話すのはゲームでの話で現実では駄目な話だからね?」

「お兄ちゃん、ゲームと現実が違うことくらい私分かってるよ?」


 取り越し苦労だったかな? 僕が小学生くらいの時は結構一緒にしてたと思ったんだけど、琳音ちゃんは女の子だから心の成長が早いのかな?


「ねぇ、ゲームって何?」


あちゃー、今度はこっちかー。ゲームについて説明すると僕達がこの世界を救うために来てるわけじゃないってこと知られちゃうんだよね。問題にならないかなぁ?

 ……でもどうせだからきちんと説明しよ。リアさんなら分かってくれると思うし。


「ゲームって言うのは説明が難しいんだけど、空想の世界で人や魔物と戦ったり、旅したり、恋愛したりする遊びのことなんだ」

「えぇっ、あなたたち遊びで魔物と戦うの!? それなら確かに救世主として女神様に呼ばれたのも分かる気がするわ」

「いやいやいや、そうじゃなくてね。僕たちの世界には魔物とかいないんだよ。だからそういうのが娯楽になるの」

「それじゃあどうやってスキルを上げるのよ。聞いた話だとプレイヤーの中には衛兵レベルの剣の使い手もいるみたいなんだけど」

「プレイヤー?」

「あなたたちみたいに女神様に呼ばれたって人たちがそう名乗ったのよ。あなたはちがうの?」


 誰が名乗ったのかは知らないけど確かにその方が言いやすいし、現地の人たちと区別できていいかも。どういう意図があったかは知らないけど結果としていい判断なんじゃないかな?


「ううん、ゲームを遊んでた人は皆プレイヤーだから僕たちもそうだよ。それで、スキルだけど、この世界に来る原因になったゲームのスキルをそのまま引き継いでるんだよ」

「そうだったの? ならそのゲームってゆうのをずっとプレイしてるのね」

「え? こっちに来てからを合わせても2週間くらいだけど」

「うそでしょ!?」


 リアさんは信じられないといった顔をしている。今度はなにで驚いてるんだろ?


「ホントだよ。ね、琳音ちゃん?」

「うん。だってこのゲーム、ここにくる一週間前ぐらいにお父さんが……買って来てくれた……から」


 琳音ちゃんの目にたまっていく涙。お父さんとお母さんのこと思い出しちゃったんだね。


「大丈夫だよ。僕がなんとかするから、ね?」


 琳音ちゃんが落ち着くまで、しばらく抱きしめる。まだまだ情緒不安定だけど、11歳の女の子だもん、これが普通だよね。


「辛いこと思い出させちゃってごめんなさい」


 腕の中で琳音ちゃんが首を左右に振った。


「琳音ちゃん、気にしないでって。それで、なにがうそでしょなの?」


 僕が琳音ちゃんの気持ちと僕の疑問を伝えると、リアさんは胸に手を当ててホッと行きをついたあとに僕を見た。


「成長が早すぎるのよ」

「成長ってスキルの?」

「そう、普通は5歳ぐらいからスキルの鍛錬を始めて8歳から12歳くらいでスキルを覚えるの。この差はジョブによるものね。それで、そこから1年に1から3くらいスキルレベルが上がって大体15、ジョブの適正があって30くらいで成長が止まるの。止まってからは一つのスキルに注力しても1上げるのに数年かかるようになるのよ。もちろん例外はいるけどそれにしたってあなたたちの成長は早すぎよ」


 確かにそれは早い。でもそれって女神様の加護みたいなものじゃないかな。いわゆるチートみたいな。そう僕がリアさんに言うと。


「だったら、なんであたしたちをそうしてくれなかったのかしら? わざわざあなたたちを呼ばなくてもあたしたちで邪神を倒すことが出来れば問題ないでしょ。そうすれば琳音ちゃんが悲しい思いをすることも無かったのに」

「確かにそのとおりだね。女神様にも何か理由があるんだと思うけど……」


 そうこうしているうちに琳音ちゃんが腕の中から出て行く。目じりもぬぐって、すっかり落ち着いたようだ。


「それじゃあ次はプレイヤーキラーについてだね。プレイヤーキラー、略してPK。プレイヤーでありながら同じプレイヤーを攻撃する人たちのことを指す言葉だよ」

「同じプレイヤーなのに戦うの?」

「うん。そうして他のプレイヤーが持っていたアイテムやお金を奪ったりするんだ」

「まるで盗賊や山賊ね」

「そうかも。でも全員が全員、アイテムやお金目当てじゃないんだ。中には盗賊や山賊になりきることを楽しむプレイヤーもいるんだ」

「自分から犯罪者になる人がいるの?」

「あくまで空想の世界で、だからね? いろいろ理由はあるんだ。普通の遊び方に飽きてしまったとか、現実での鬱憤がたまってるとか、単にそういった人間に憧れるって人もいると思うよ」

「変わった人たちがいるのね」


 リアさんはそう言うけど、僕はそんなに変わってるとは思わないんだよね。生きてきた世界が違うからかも。


「それになろうとしてなったわけじゃなくて、偶然とか罠に嵌められてとかもありえるから一概に悪い人とは決め付けられないんだけどね」

「なんかそれだと気の毒ね」

「まあ、どっちにしても襲われる可能性はあるから注意してね。もし見かけたら直ぐにその場から逃げて僕に連絡すること」

「お兄ちゃんが助けに来てくれるの?」

「もちろんだよ」

「センヤ君、簡単に言うけど、あなた戦えるの?」

「ほとんど戦えないと思うよ」

「だったらどうやって守るのよ?」

「身を挺してでも逃げる時間くらいは稼ぐよ」

「身を挺してって……」


 不安そうな目を向けるリアさん。あっ、もしかして死亡からの復活ってプレイヤーにしか出来ないのかな。


「僕たちプレイヤーはやられても復活できるんだよ。現に今日だって蜂にやられちゃったんだ。でも今、僕は元気な姿でここにいる。ね? 大丈夫でしょ?」

「じゃあ、その袖の大きな穴は木に引っ掛けたとかじゃなくてソルジャービーのせいなのね」


 指摘されて袖を見ると確かに野球ボール大の大きさの穴があいていた。うわぁ、いままでぜんぜん気付かなかったよ。後で直しておこっと。


「お兄ちゃん、外真っ暗だよ?」

「え!? ホントだ、結構話し込んじゃったみたいだね。それじゃあリアさん。僕たちそろそろ帰るよ。薬草類はまた明日でいい?」

「……はぁ。いろいろ言いたいことはあるけどしょうがないわね。そもそもこんな時間になるまで引き止めるつもりも無かったんだから。それじゃあ2人ともまた明日ね」

「うん、また明日来るよ」

「リアさん、さようなら」


 時間を確認すると20時半、思ったより遅くなっちゃったね。夜更かしは琳音ちゃんにとって良くないし、急いで帰らないと。

同シリーズ

【異世界のお節介な道化師】

【親愛なる魔王さま】

もよろしくお願いします。

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