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リアの雑貨屋

 今日はお婆さんが紹介してくれたお店の初仕事の日だ。お店の場所は住宅区を四つの区画に分けた内の北西、エニフの町で見ると北西の角に位置している区画になる。

 と言うわけで地図を頼りに早速来て見た。お店の名前は”リアの雑貨屋”、わかりやすい名前だね。でもわかりやすいって言うのはお店にとっていいことだと思う。

 

 住宅区が入り組んでるからちょっと道に迷っちゃったけど、見かけた人に道を聞いて無事にお店に辿り着いた。

 木造の一戸建てで外観はなかなかに綺麗だ。ただ両隣がボロボロなので浮いて見える。

 入り口の上には店名が書かれているらしい看板が。らしいって言うのは滲んだり字がかすれていたりでほとんどの文字が読めないせいだ。かろうじてリアという字はわかるのでお店は間違ってないはず。

 とりあえず中に入ってみよう。

 ドアを開けると木製の棚が並んでいる部屋。その奥にはカウンターがあった。でも店員の姿が見あたらない。


「すいませーん。誰かいませんかー」


 店員さんを呼びながら中に入っていく。お店なのだから不法侵入にはならないはずだ。

 店内を見てみたけど3DファンタジーRPGによく出てきそうな普通のお店って感じだ。

 この世界の雑貨屋って何を売ってるんだろう、と思って入って左の壁際にある棚を見てみると、学校の理科室にある細長かったり三角だったりするフラスコにカラフルな液体が入ったものが並んでいた。この棚だけかなと思って今度はお店の中央にある棚を見てみる。するとそこにはカプセルや淡い色のタブレットが。もしやと思って最初に見た棚とは逆の壁際にある棚も見たけど、そこにあったのは草、草、草。いろんな草が植木鉢ごと並べられていた。

 雑貨屋ってメモには書いてあったけど薬屋の間違いじゃないかな? 看板の文字が読めないせいで確かめようがない。


「誰もいないのかな?」

「ドアに鍵かかってなかったからいると思うんだけど。……すいませーん! 誰かいませんかー!」


 さっきよりも大きな声で呼んでみると中から何かが倒れたりぶつかったりする音がして、その後から軽快な足音が聞こえた。


「いらっしゃいませ、お待たせしました」


 奥から出てきたのは中世的な顔立ちの女性だった。

 髪は明るめの茶色で短髪。顔はちょっとすかした感じのイケメン風。肌は少し日に焼けている。

 背丈は当然僕より高いけど多田さんよりはちょっと低そう。多田さんが168だから、多分160半ばくらいだと思う。

 服装はこの世界でよく見かける麻っぽい長袖のシャツとパンツ。その上から白いエプロンをしている。

 そして何よりも目を引くのがエプロンを押し上げるその胸だ。小ぶりなスイカくらいはありそうだ。


「……おっきい」


 そのサイズにあっけに取られていたら琳音ちゃんがストレートな感想を口にしていた。琳音ちゃんもあの胸に驚いたようだ。


「ありがと。あなた達はお使いかな?」


 そうだった。仕事をしに来たんだった。


「馬のひづめ亭のお婆さんに紹介されてきたんだけど」

「スクロさんの? 何か注文受けてたっけ」


 あのお婆さんはスクロと言う名前だったみたいだ。お婆さんで問題なかったから名前を聞くのわすれてたよ。


「そうじゃなくて仕事の紹介。リアの雑貨屋ってここの事だよね?」

「ああ、そんなこと頼まれてたわね。って、まさかあなたが?」

「うん、僕がお婆さんに頼んだんだ」

「何であなたみたいな子供を――」

「これでも25歳だよ」

「あたしよりちっちゃいくせに!? 嘘でしょ!?」


 いいえ本当です。なんていっても納得はしてくれないだろうな。

 さて、どうやって納得させよう。向こうだったら免許書で一発だから問題なかったんだけど、こっちにはそういう証明書みたいなのあるのかな。


「まあ、スクロさんがよこしたんだから大丈夫か。それじゃあ早速手伝ってもらおうかしら」


 おう、自分で納得した。そして、納得したらしたで次に行くのが早い。


「その前に自己紹介しない?」

「それもそうね。あたしの名前はリア・マルティ、このお店の主人よ。年は18。趣味は薬草の栽培と薬の研究よ」


 薬の研究って言葉だけだとなんか危なそうだ。あと、このお店の品揃えはリアさんが趣味に走った結果なんだろうね。


「僕はセンヤ。物作りがしたくてここに来ました。これからよろしくね、リタさん」

「私は五島 琳音、11歳です。お兄ちゃんのことよろしくお願いします」

「2人とも変わった名前ね。それで? ものづくりがしたいって事だけど何のスキルを持ってるの?」


 そっか、スキルを聞けば何が出来るのか大体わかるのか。こういうところはこの世界のほうが便利かも。

 ステータスを確認っと。


ジョブ:〈人形使い〉8 〈製作者〉12(1) 〈採取者〉6

能力値:筋力・・・8

    体力・・・9

    器用・・・14(1)

    敏捷・・・4

    魔力・・・5

    精神・・・13

スキル:△操術12 鍛冶7 木工7 裁縫8(5) 調薬7 人形作成1

    伐採2 植物採取4

称 号:駆け出し


 あがってるのは裁縫だけか。あのイベントの時からシャツ1枚以外何も作ってないからしょうがない。


「物作りに関係ないスキルも?」

「もちろん。持ってるスキルは全部教えて頂戴」

「うん、わかった。操術と鍛冶と木工と裁縫と――」

「ちょっとまった。持ってるスキルにまとまりがなさ過ぎない?」

「そんな事言われても、物作りに関係あるのは全部取る気だし……」

「そ、そう。とりあえず続けて」

「えっと、裁縫からだっけ? 裁縫と調薬と人形作成と伐採と植物採取。これで全部だよ」

「……失礼だけど、ジョブを教えてもらってもいい?」


 すべてのスキルを教えると下を向いてなにやら考え出したリアさん。顔をあげたと思ったらそんなことを聞いてきた。

 ……ジョブを聞くのってこの世界じゃ失礼にあたるんだ。覚えとこ。


「別にいいよ。僕のジョブは〈人形使い〉〈製作者〉〈採取者〉だよ」

「正に物作りの為に産まれたようなジョブ構成ね。あなたの両親が見てみたいわ」


 そうなるように選んだからね。でも何でここで両親の話?


「ジョブ構成に両親は関係ないと思うけど?」

「なに言ってるの? ジョブは両親から1つずつ受け継ぐものって、常識でしょ?」


 へー、そうなんだ。でもそれじゃジョブは2つだけになっちゃうんじゃ。


「3つ目のジョブはどこから来るの?」

「本当に知らないの? ……本当みたいね。後1つは生まれ持っての才能よ。だから両親のジョブと一切関係ないジョブになることも多いわ」


 つまり両親から受け継いだジョブ次第ではまったくの役立たずになる可能性があるってことか。うわあ、不便なシステム。


「何でこんなことも知らないのよ。常識よ、常識」

「それは僕が邪神を倒すためにこの世界に連れてこられた救世主ってヤツだからだよ」

「救世主? それって女神様のお告げの?」

「そうだよ。琳音ちゃんもね」

「あんた達みたいな子供までいるのね」

「僕は大人だけどね」

「そういえばそう言ってたわね」


 この様子だとまだ信じて無さそうだ。まあ、子ども扱いしてくれる分には油断も誘えるし構わないか。


「まあいいわ。奥に行きましょう。そこで仕事について説明するわ」

「僕からもいろいろ聞きたんだけど」

「とりあえず説明してからまとめて聞くわ」

「あの……」


 奥に向かおうとした僕達は琳音ちゃんの発言で足を止めた。


「なに? 琳音ちゃん?」

「私はどうしたらいい?」

「そっか、待ってる間やることがないもんね。ってことなんだけどリアさん、何か琳音ちゃんに出来ることってある?」

「そうね。作業は流石にさせられないから読書でもしててもらいましょうか」

「読書?」

「あたしが子供の頃に買ってもらった本がいっぱいあるから。好きな本、読んでいいわよ」

「琳音ちゃん。僕が仕事してる間、本を読んで待っててもらっても大丈夫?」

「うん、大丈夫だよお兄ちゃん。私、本読むのも好きだから」


 琳音ちゃんの笑顔を見るに嘘は言ってなさそうだ。これなら退屈させることもないかな。

 それじゃあ仕事だ。まずはリアさんに話を聞かせてもらおう。

同シリーズ

【異世界のお節介な道化師】

【親愛なる魔王さま】

もよろしくお願いします。

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