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琳音ちゃんについて

 女性の1人が鼻息を荒くしながら僕の服の裾を掴んだ。


「ほら、脱ぎ脱ぎしましょうね」

「ちょっ、脱がなくても測れるでしょ!?」

「サイズは出来るだけ性格に測らないと。だから潔く脱いでください」


 1人は僕のズボンに顔を近づけ鼻をひくつかせる。


「……ショタっ子。……くんくん」

「なんでにおい嗅いでんの!?」

「ヤバイ……止まんない……ふふふ……」


 最後の1人は僕の手を掴んで自分の胸に当てていた。


「ねえ、女の身体に興味ない?」

「この人、ガチじゃん!?」

「私の胸、好きにしていいのよ」


 これはダメだ。なすがままにしてたら襲われてしまう。というか既に襲われている!


「僕は25歳だ!!」

「え?」


 つぶやいたのは誰だろうか、時間が止まったかのように静かになった部屋。この容姿のせいでそういう女の子に誘われる(襲われる)事は何度もあったけど、3人でってのは初めてだよ。


「これでも25歳で高校教師。残念だけど君達の希望には添えないよ」

「あら、簡単にばらしちゃいましたねぇ。流石にこれじゃあこの子達も――」

「見た目が可愛ければ問題ありません!」

「リアル合法ショタキター!」

「メイク・ラブしましょう!」


 あっ。これはダメだわ。

 3人の女性はさっきよりも勢いを増して襲い掛かって来た。こういった事態に25年の経験で見出した対処法はたった1つ。自分を無にすることだ。

 手際よく服を脱がせていく3人組にとうとうパンツだけになってしまった時、部屋のカーテンが勢いよく開いた。


「私の先生に何してるんですかっ!!」


 僕に群がる三人組を次々と引き剥がしていく多田さん。多田さんって結構力あるんだね。


「タマちゃん戻ってくるの早いですよぉ。琳音ちゃんはどうしたんですかぁ?」

「先生の危機だって伝えて他の人に任せてきました!」


 三人組が首根っこをつかまれ部屋から放り出される。


「先生を襲うなんてなに考えてるんですか、あの人たち。先生も先生ですよ~。何で抵抗しないんですか~」

「ああなったら僕の体格じゃ抵抗しても無駄だってわかってるからだよ。それにこんな場所で最後まではしないでしょ」

「いやぁ、わかりませんよぉ。なんせあの子達、ガチですからねぇ」

「ルビーさんもわかってるんだったら止めてくださいよ~」

「あはは、センヤくんがどういう反応をするか見てみたかったのでぇ。あっ、あの子達がここに来たのは私のせいじゃないですよぉ」


 でも、けしかけたのこの人なんだよねぇ。食えない人だなぁ。


「測る人いなくなっちゃいましたねぇ。タマちゃん、責任とって測ってください」

「ええ、多田さんが測るの!? 襲わないでよ、多田さん」

「いくら先生のこと好きでも、そんなことしませ~ん!」



 僕と琳音ちゃんのサイズを測った後、下着が出来たら連絡をもらう約束をして施設を後にした。

 多田さんがついてきたそうにこちらを見ていたけど、気付いていないふりをした。だって、連れてったらいろいろ問題が起きそうなんだもん。帰ったときのことを考えたら生徒に手は出せないよねぇ。

 もう他に用事は無いし、まだ日も落ちてないけど馬のひづめ亭に戻ろっと。


「お婆さん、ただいま」

「……ただいま」

「お帰り」


 そういえば宿が足りてないんだっけ。ここにもいつまでもいるわけにはいかないな。


「ねえ、お婆さん。どこか住み込みで働けるとこ知らない? 出来ればなにかを作る仕事がいいんだけど」

「あん? 急になんだい? もう受け取った宿代は返せないよ?」

「お金が無くなったわけじゃないよ。生産系のスキル上げついでにお金を稼げないかなーと思って。住み込みなら宿代も要らないしね」

「そういうことかい。だったら坊主がここを出て行くまでに探しといてあげるよ」

「うん、お願い」


 これで住む所は何とかなるかな。琳音ちゃんを守るためにも、これからは先のことを考えて行動しないと。


「あ、そうだ。部屋で生産ってしてもいいの?」

「うるさくしなけりゃ構わないよ」


 それなら明日、裁縫道具を買ってこよっと。スキルをあげないといつまで経ってもも自作なんて出来ないからね。

 部屋へと戻ったら、琳音ちゃんをベッドに座らせて、その正面に僕も座る。ルビーさんに琳音ちゃんの事を説明する時に、琳音ちゃんについて何も知らないって気付かされたんだ。何も知らないままってわけにはいかない。


「お兄ちゃん、どうしたの?」

「琳音ちゃんの事を教えてもらおうと思って」

「私のこと?」

「そう、学校のこと、友達のこと、家族のこと。何をやっていたとか、なにが得意だったとかいろいろ教えてくれない?」

「うん、いいよ」


 それから琳音ちゃんはいろいろなことを話してくれた。途中泣いてしまったりもしたけど、それですっきりしたのか後半は楽しそうに喋っていた。手がかりが無かったせいかちょっと落ち込んでたみたい。

 結構長くなったのでまとめると、両親とも別の会社に勤めていて、お互いにオタク趣味。このゲームを始めたのも両親から勧められたから。琳音ちゃんはあまり体が丈夫ではなく、何度も入院を繰り返しているらしい。そんな娘を自由に遊ばせたくて勧めたみたいだ。

 体が弱いせいで学校をよく休んでいたから、クラスに特に仲のいい友達はいなかったみたいだけど、学校に行けばクラスメートの皆が仲良くしてくれたらしい。

 得意だったのは家庭科、病院での暇つぶしに編み物やお裁縫をしていたから。苦手なのは体育、いつも見学するだけだったから。

 

 ぐ~。

 

 ここまで聞いたところで琳音ちゃんのおなかがなった。恥ずかしそうに顔を赤くしてうつむいてしまったけど、僕のおなかもいつなってもおかしくないくらいには空いている。


「ご飯食べに行こっか」

「……うん」


 僕達は外の食堂へと向かった。それぞれ100B程度の食事を食べる。まだイベントから2日も経ってないけどそろそろ銀貨を崩さないといけなくなってきた。お金って崩しちゃうと消費早いんだよね。

同シリーズ

【異世界のお節介な道化師】

【親愛なる魔王さま】

もよろしくお願いします。

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