異世界で再会
遅くなりました。
自分の中にキャラがきちんと出来てないと大変ですね。
今日は服を揃えるために、琳音ちゃんと一緒に商業区の道具屋に来ていた。道具屋はゲームの時と変わらず、東の大通り沿いにある。もちろん武器屋、防具屋、道具屋と横並びだ。
この世界でもきちんと服屋は存在してる。それなのに道具屋に来ているのは、服を自作しようって思ったから。いやぁ、生産職が必要になったものを安易に買ったら意味無いよね。
道具屋の中へ入るって裁縫関係の売り場を探す。ゲームでは入って右奥の方にあったはずだけど、この世界ではゲームの時より奥に行った所にあった。と言うか全体的に店が大きくなっているような気がする。
そういえばこの店に来るまでも、ゲームの時より歩いたような……。もう少し周りに意識を向けないと、考えごとしてたから景色なんて見てないや。
反省は後でするとして今は買い物だ。欲しいのは服にあった生地。さっきからいろんな生地の手触りを確かめてるけど、やはりいい生地はそれなりに値段が高い。
持っていた生地の値段に頭を悩ませていると琳音ちゃんが服の裾を引っ張ってきた。昨日、部屋まで案内してくれた時も裾を引っ張ってきたけど、こうやって呼ぶのはくせなのかな?
「それ買うの?」
「うーん、どうしようかな。琳音ちゃんはどの生地がいい?」
「生地? 何に使うの?」
「服とか下着を作ろうと思って。ほら、最初に来ていたのだと擦れて肌荒れになりそうだなって」
「そっか。じゃあ……これ!」
琳音ちゃんが指したのは森蜘蛛シルクと言う生地で、光沢のある白い色をしている。琳音ちゃん、なかなかお目が高いね。なんたってこの生地、この道具屋で扱っている生地の中で一番高いのだ。まあ、肌に直接触れる下着用ならこれくらい使ってもいいかもしれない。
そういうわけで森蜘蛛シルクを購入。10cm×10cm単位で23Bからの切り売りになっていて、買ったのは100cm×120cm。2760B分だ。
他の生地も頭につく言葉は違うけど麻や綿、ウール等の誰でも知ってそうなものばかり。僕がゲームで買った生地も確認したらデシクオ麻と言う麻だった。デシクオ麻の生地はまだ結構残ってるし、とりあえずこれで作ってみよっと。
途中でお昼をはさんで今度は生産施設に向かう。忘れないように道中に周りの確認もしたんだけど……やっぱり建物も道も全体的に大きくなってる。
琳音ちゃんと手をつないで当たり前のように巨大になった生産施設へ。中はどう変わっているかな。
1階、炉や織機などの大型の道具が置いてある階だ。道具は数が増えて各10台前後、合計で50台はあったけど全部使用中。まあ、今日は2階以降の作業部屋に用があるからここが混んでいても問題なし。
2階、作業部屋が並んでる部屋なんだけど……入り口のところのカーテンが全部閉まっている。全室使用中って事だ。でも、今まで無かった階段があった。施設が大きくなったことで階数も増えたのか。
3階、ここも2階と同じつくりだ。この階もカーテンが全部閉まっていて、4階への階段があった。
4階、5階と見たけど下と一緒でカーテンが閉まった作業部屋が並んでいる。唯一の違いは5階には上りの階段がないってことだけ。つまりは満室だ。
僕と琳音ちゃんは生産施設の入り口に立って施設を見上げていた。どうしようかな、裁縫道具が無きゃ下着は作れない。ウォール丸も増産して所持金を増やしておきたかったのに……。
「お兄ちゃん。お兄ちゃん!」
琳音ちゃんが小声で僕を呼びながら裾を引っ張ったので、僕は考え事を中断した。
「琳音ちゃん、どうかした?」
「あの女の人、さっきからずっとこっち見てる」
視線を追うとそこには……げっ、あれ多田さんじゃん。鍛冶してるときに聞こえた声はやっぱりあの子だったか。
うわっ、こっちに走って来た。
「千夜せんせ~……!」
僕の前で急停止したと思ったら隣にいた琳音ちゃんの両肩を掴んだ。いつもどおり突っ込んでくると思って身構えたのに……。
「誰ですかこの娘! 先生のガールフレンドですか!」
喚きながら琳音ちゃんを揺さぶりだした。
「お姉さん、やめて!」
琳音ちゃんが今までにない強い言葉を放った。そりゃあ、首をあんな勢いで前後に揺さぶられたら、語気も強くなるよね。
――っと、そんなことより止めなきゃ。
「ほら多田さん。嫌がってるから放してあげて」
そういって力尽くで琳音ちゃんから引き離した。
「お兄ちゃん、ありがとう」
「うわ~ん! 先生が子供に取られた~! 先生がロリコンだったなんて~」
「なに言ってんの!? そうゆう関係じゃないよ!」
「でも~、身長とかお似合いじゃないですか。お兄ちゃんって呼ばれてるし! そうゆう娘が好みなんでしょっ?」
「違うよ!」
「……うう、ホントですか?」
「ホントだよ。そもそも年下と付き合ったことだって無いくらいだよ」
「それはそれで困るというか……」
いや、そこで困られてもこっちが困るんだけど。まあ、それを言ったら話が進まなくなりそうだから我慢するけど。
「先生、結局その女の子はどうしたんですか? ガールフレンドじゃないなら妹とか?」
「こんなに歳の離れた妹なんていないよ。そもそも一人っ子だし、僕。」
自己紹介は本人がしたほうがいいよね。僕は琳音ちゃんの背中を軽く押して自己紹介を促がした。
「あっ。……五島 琳音、11歳です。お兄ちゃんにはお父さんとお母さんを探してもらってます」
「探してもらってる?」
「イベントの時にログインしてなかったんだって。流石に1人には出来ないから保護したんだ」
「へー、そうなんですか。――よかったらうちのマスターに会ってみませんか?うちのギルドにもそういうメンバーがいたから参考になるかもですよ」
マスターってことは多田さんはギルドに入ってるのか。もしかしてあの時話していたメンツがギルメンなのかな。
「そうだね。今はどんな情報でも欲しいし」
「そうと決まれば行きましょう!」
多田さんが逃がさないとばかりに僕と琳音ちゃんの腕を掴んだ。そんなことしなくても逃げないんだけど……。
そのまま歩き始めた多田さん。って、ちょっと待って、僕ら2人を引きずって行くってどんだけ力強いんだよ。
やっと手を放してくれたのは3階にある作業部屋の前。ここに多田さんのギルドのマスターがいるのかな?
「ますたー、入りまーす」
「どうぞぉ」
カーテンをあけて中へと入って行く多田さんの後に続く。さて、どんな人が出てくるかな。
遅れたのは
多田さんのキャラが固まってなかったせい。
あとはアニメとアプリとフリーゲームのせい……故に




