メアリーさんの電話
友人緑との合作です。
私は原案、本編作成
緑はキャラ設定、地図設定、資料集め、アレンジです。
今回はメリーさんの電話
「五月、もう行くわよ。準備できた?」
「うん・・・。」
佐藤 五月12歳。小学校を卒業して親が「自然の中で子を育てたい。」という誰でも思いつきそうな考えから山奥の田舎に引っ越すことになった。
小学校も卒業して中学から別の村でもすぐ友達は出来るだろ。などと父親も言っているが、五月はそんなこと微塵も思わなかった。
どうせ人が寄ってきたとしても奴らは、都会から来た人間だからという好奇心や興味だけで近づいて来るだけだと諦めていた。もともと人間に対して疑心難儀になる五月はこの引越しには反対だった。「どうせ不便だからってすぐ諦めるに決まってる。」「あそこから学校まで往復で3時間じゃん。」と説得をしていたのだが、
「何事も挑戦だろう。」
の一言で片付けられてしまってさらに不機嫌だった。
田舎なんかに行きたくないと今でも思っている。スーパーは車で30分以上かかるし、田んぼや畑臭いし、大好きなネカフェもカラオケもゲーセンも無い。全部電車に乗らなくちゃ何もない。都会で12年も育った人にとっては不便すぎだ。
「五月。この人形どうするの?持ってく?」
母親は、幼稚園のときに買った人型のぬいぐるみを指さした。
メアリー。ショートヘアーで、たかがぬいぐるみのくせに偉そうにドレスを着ている女の子のぬいぐるみ。昔は友達だと言って毎日話しかけたりして遊んでいた。そんな大切なものも、今になればただの娯楽品の1つとしか思えない。皐月は人形を拾ってしばらく見つめたあと、ゴミ袋の中に放り込んだ。
「いらない。途中のゴミ捨て場についでに捨てよう。」
「そうよね、あなたもこんなもので遊ぶような年じゃないものね。」
そう言って母親はゴミ袋の口をキュッと縛って持ち上げる。
「ほら、お父さん車出して待ってるから急ぎましょ。」
何も反応せず母親についていく。
ふとゴミ袋を見ると、ぬいぐるみがこちらを見つめるような位置にいた。
五月はぞっとして、袋から目を離して携帯をいじり始めた。
*
森の中を移動していた。ずっと木ばかりだった。ふとケータイからポコンとメッセージが届いた音が聞こえて携帯を手に取る。
〔五月、今どのへん?〕
小学校の時の同級生だった。彼女はクラスでは女王のような存在だったから、下に見られればすぐいじめられると思い仲良くしているフリをしていた。きっと数ヶ月経てば忘れられてIDを消されるんだろうと思い、最後の会話になるのかな?と返信をする。
〔よくわからない。ずっと木ばっかりでさっきから同じようなところ移動してるみたい。〕
〔もしかして・・・無限ループ?((;゜Д゜)〕
〔怖いこと言わないでよ~(´Д`;)〕
五月は表情も感情も一切変えず、相手にいい感じの言葉と顔文字を選び返信を返す。
〔ずっと携帯やってると酔いそうだから着いたらまたメッセ送るね。〕
〔うん。またねー。〕
もちろん送るつもりなんて全く無かった。ツイ○ターやラ○ンなどのSNSサイトや電話帳から本当に仲のいい人以外のクラスメイトや彼女の記録を消してから、マナーモードにする。五月は眠くなり、眠った。
*
「五月、起きて。着いたわよ。」
目をこすりながらゆっくりと起き上がる。この前家を探しに行った時に見た家だった。
とうとう着いてしまったのかと、車から出てため息をつく。
「どうしたんだ。元気ないなぁ、せっかくの新しい家なのに。」
「新しいって、中古でしょ?このために建てたわけでもないのに。新しいとか・・・。」
「そこはいいだろ。お前も荷物運ぶの手伝え。」
車に積んである分も全部引越し業者に頼めばいいじゃん。と小声で愚痴りながらも、軽そうな荷物を選んで運ぶの手伝うフリをしようと動き出す。
動き出すのと同時に、ポケットの入れておいた携帯が振動する。さっきの女とは縁を切ったはずなのにと確認すると、ツイ○ターのダイレクトメールだった。
(相手は・・・。)
『メアリー』。知らない相手からのダイレクトメールだった。プロフィールを確認すると『フォロー1 フォロワー1』で、五月としか繋がっていなかった。
(気がつかないうちにフォローしたのかな。)
ダイレクトメールを開く。
〔私メアリー。今、あのゴミ捨て場にいるの〕
おかしな内容だった。
五月は気味が悪くなり、相手のフォローを外してから携帯をしまって父親のところに向かった。
*
あれから3日が経っていた。五月は夕方に届いた中学の制服を試着していた。
(セーラー服なんて・・・安直。)
ワンピースタイプやイートンタイプが制服として好みな五月にとってはあまり嬉しくはなかった。これは引越しが嫌だった原因の1つではあった。
引っ越していなければ一番近い中学がイートンタイプ。紗月なら余裕で入れる受験型の私立中学はワンピースタイプ。5年生の頃から楽しみにしていた中学生活も今となってはただ歳をとるだけの無駄なイベントだった。
着替えようとボタンに手を取る。
ぴろん
ダイレクトメールが届いた時の音だった。携帯を取り確認する。
〔私メアリー。今、○△高速道路の○○県側の出口にいるの。〕
あのアカウントからのメッセージだった。
フォローを外した外したはずなのにとプロフィールを確認する。
「『フォロー1 フォロワー1』。私としか繋がってない。」
不思議に思いながらも、またフォローを外してから自動フォロー返し機能になってないかを確認してから携帯をしまう。
ボタンを外す手が不思議と震えた。
*
入学式前日。説明会の時にもらった書類の『頭髪について』を見直していた。
③女子
・前髪は目にかからない。※頬にかかる横髪は、きちんと留めるか結うこと。
・後ろは肩にかからない。
・長い髪の人(肩にかかる人)は、一つあるいは二つに結う。ただし、一つに結う場合は真ん中にする。
・髪を結ったり、留めたりするゴムやピンの色は濃紺・黒・こげ茶とする。ピンは多く付けない。
・ポニーテールなどの特別な結い方はしない。
五月は小学1年生の頃から二つ結いなので別にかまわないと思っていた。でも、
(ゴムの色まで指定すんのかよ・・・。青が良かったのに。)
東京の、行こうと思っていた中学はどっちもゴムの色までは指定しなかったのに、と書類を放り投げ、友人に愚痴ろうと携帯を取るとダイレクトメールがきていた。
まさかと思い確認する。
〔私メアリー。今、○○県○×市にいるの。〕
ぞっとした。
○×市と言ったらこの県の県庁所在地でこの村の近くにある市だった。
ゴミ捨て場、○△高速道路、○×市。どれも引っ越すときに通った場所だった。そしてメアリーという名前。
「メアリー・・・来てるの?」
まさかと思い携帯を引き出しの中にしまう。
怖かった。
もしかしたらメアリーが捨てられたからと復讐する為に近づいてるのかもしれない。
部屋にいたくなくなり、家から出て散歩に出かける。少しでも自然を見てたら落ち着くかもと人や田んぼが多い方に向かいながらここが田舎でよかったと片隅で思う。
皐月がいなくなってからまたダイレクトメールが届いた。
〔私メアリー。今、○×市×△町にいるの。〕
*
中学生活が始まってから1週間後。五月に友達が出来ていた。
名前は工藤 海。男だった。
彼とは席が隣同士だった。そんな縁もあるが、ゲーム好きで趣味が同じだった。好きなゲームの種類はお互い違ったけど、これがいいあれがいいと議論しているうちに仲良くなっていた。
「そういえばさ、最近変なダイレクトメールが届くんだ。」
仲が良いのだからとあのアカウントについて相談してみることにした。
「ダイレクトメール?ツイ○ターのか?」
「そう、『メアリー』ってアカウントからなんだけど、いくらフォロー外してもいつの間にか繋がっててさ。なんか『私メアリー。今、どこどこにいるの。』って内容なんだ。」
話を聞いて海は顎に手を当てる。しばらくして手をポンと叩く。
「それって『メリーさんの電話』じゃない?」
「はぁ?」
メリーさんの電話。都市伝説の一種で、どんどん近づいて来る人形の話。ほとんどの話では物語のラストは、
死ぬ
「でも、あれは電話でしょ?」
「最近のメリーさんはSNSも使ってくるらしいから不思議ではないよ。」
でも・・・と反論を続ける。
「そもそも、メリーじゃなくて私が言ってるのはメアリーだよ。」
「最近、人形を捨てた覚えはない?」
人形なんて・・・と覚えがないか考える。ふと、引っ越す時に捨てたぬいぐるみのことを思い出したが、まさかと思い忘れる。
「ないよ。」
「そっかー、でも怪しいクラッカーのせいかもしれない。気をつけてね。」
「あんたじゃないの?そのクラッカー・・・」
「な!?あのねー。クラッカーってのは悪いやつの事を言って僕はただのハッカーだから!」
海の言うことをはいはいと適当な相槌を打ちながら無視をする。
もし同じ事が起こっているんだとしたら・・・と頭の片隅で考える。
〔私メアリー。今、□◆村の田んぼにいるの。〕
今日も届いていた。
*
次の日、五月は部屋のベットの中で震えていた。
今日もメアリーからメッセージが届いていた。
〔私メアリー。今、あなたの家の前にいるの。〕
自分の知っているメリーさんの電話と展開が同じだった。このままいくと部屋の前まで来る。殺される。携帯で何度も海に助けてとメールやメッセージを送り続けていた。
海からは何の反応もなく、ラ○ンでもメッセージは既読にならない。電話をかけても不在。パニックになっていて親に連絡するという判断ができなかった。
気がついたらダイレクトメールが届いていた。海からかと思い開く。
〔私メアリー。今、あなたの部屋の前にいる。〕
手が震えた。
どうすれば、どうすればと考えた挙句、ベットから起き上がり机に置いてあるハサミを手に取り扉に刃をむけるように構える。
「どうせ殺されるなら、殺られる前にお前を殺ってやるよこの人形ふぜいがぁーーーーーー!!!」
判断力を失っていた。
脳内が恐怖に包まれていて足も手も震えていた。手汗がひどくハサミを落とす。拾おうと屈むと携帯から電話の着信音が鳴る。メアリーを殺すことで頭がいっぱいになっていてメリーさんの電話のことを忘れて電話を取る。
「〔私メアリー。今、あなたの後ろにいるの。〕」
携帯と、背後から声が聞こえて振り返った________________
*
次の日の学校。海は意気揚々と教室に向かっていた。
予約したゴ○トイ○ターシリーズの最新作が昨日届いたことを五月に報告して今日の放課後一緒にプレイしようと誘うために。
いつも通り勢いよく教室のドアを開けて教卓前の五月の机に直行する。
「はよー!さつ・・・は?」
違和感があった。そこにあるはずのない物が机に置いてあった。
花瓶があった。
「なにこの花瓶・・なにこれいじめ?」
まさか五月が死んだんじゃないかという考えがよぎる。
一昨日話したメリーさんの電話と謎のアカウントの話を思い出してカバンをその場で落とした。
周りの楽しそうに会話をする声が遠ざかっていく感覚に襲われた。
*
《新聞記事
4月21日。○×市□◆村から遺体が発見された。遺体は佐藤五月(12)。遺体の状態は右手首を数箇所刃物のような物で切りつけた痕があり、警察は自殺と見ている。彼女の友人の話では「犯人は人形だ。五月とツイ○ターで繋がってるメアリーって奴だ。」と話しているが、そのような人間と繋がっていた証拠がないため、警察は耳を貸していないよう。》
読んでいただき有難うございます。
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