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邪神との遭遇

 ゲオルグの城の巨大な門は固く閉ざされ、丈夫そうな錠前と鎖で来訪者を強く拒んでいた。

 何故ここまで頑強にしているのかは不明だが、ゲオルグの配下は裏門などから出入りしているのだろう。

 ジークは錠前に触れ、魔法を詠唱した。



破錠(はじょう)、アロク」


グシャ


ゴトン


「あたしの知ってる解錠魔法じゃない…」


「こういう魔法は苦手なんだ。見逃してくれ」



 穏便に速やかに事を済ませたかったため、例の如く城門を発破、というわけにも行かず、少々乱暴な解錠魔法で錠前と鎖を潰して門を押し開けた。



「たのもー…ってなんだこれは…」


「目がチカチカするよぉ」



 ジークとミラが門をくぐり城内に進入すると、そこは異様な空間だった。

 天井にたくさん設置されている光を放つ魔界の鉱石《怪光石(かいこうせき)》が多様な色の光で暗い城内を照らし、その光の雨の下には大量の魔族がひしめき合い、皆同じ方向を見ていた。

 魔族たちの視線の先には、ジークの胸の高さくらいの舞台があり、怪光石の光はそこに集中して降り注いでいた。



「何が始まるんだ?」



 その声に気付き、一斉にこちらに振り向く魔族の軍勢。

 ミラを後ろに下がらせ、ジークは心を臨戦態勢に切り替え負けじと睨み返した。

 しかし魔族たちは何もすることは無く、再び舞台の方へ向き直った。



『おい、そこの彼女連れのあんちゃん。もしかして新しい教徒、同胞かい?右も左も分からねぇって様子だな?』



 ジークが混乱していると、直近にいたカカシのような魔物が音を立てぬようにひょこひょこと近寄ってきて小声で話しかけてきた。

 この不可解な状況を探るためにジークはミラに耳打ちして、カカシの魔物に話を合わせることにした。



「実はそうなんだ」


『うんうん、歓迎するぜ、あんちゃん。…む?そういや、その額の紋章どっかで…?』



 ここで気付かれるとややこしいことになると思い、なんとか誤魔化そうと言い訳を探す。



「気にするな、えっと、あれだ、ちょっと頭を打ってな」


『おっと、そいつは悪かったな。それより、そろそろ邪神様がお出でになるぜ』


「邪神…」



 お出でになる、ということは、どうやら邪神は架空の存在ではなく実在するようだ。

 カカシの魔物の言葉通り、舞台の上の城門程の大きさの扉が開かれ、怪光石の光が集まり扉の奥を強く照らした。

 扉が開くのと同時にこれまで以上に静まる城内。

 うちの配下にも見習ってもらいたいものだ、とジークは一瞬気が緩んだが、扉の奥から現れるものに備え、背負った戦神の剣の柄に手を伸ばす。

 ミラもただならぬ気配を感じ、ジークに寄り添い身構えた。

 扉の奥は暗く、怪光石の光さえも呑み込み逃さない。

 ジークとミラが固唾を飲んで状況を見守る中、魔族たちの歓声により静寂は打ち破られた。



「皆の衆!待たせたの!」



 城内に響いた声に魔族はワァッと盛り上がり、城内の温度が若干増した気がした。



「どこだっ!?」



 扉からは何も出てきていないのにこの地を揺るがすほどの大歓声。

 天井、後方、左右へと首を巡らせるが何も見当たらない。

 『邪神様ー!』『おぉ…神々しい…』などと魔族が叫んでいるが、新しくここに現れた者はどこにもいない。



「おんし!(わらわ)愚弄(ぐろう)しておるのかっ!」



 ジークがそうしてキョロキョロしていると、怒声と共に前方から青い炎を纏った短剣が飛来してきたので、戦神の剣を鞘から抜き袈裟懸(けさが)けに振り、短剣を地面に叩き付けた。

 弾いた短剣はストッと小気味のいい音を立て固い地面に突き立った。



「いきなり何するんだよ!」


「おんしが妾のことを小さいと暗に表したからであろう!」



 短剣が飛んできた方へ目を向けると、舞台の中央に、人間界の東の国特有の着物を着た人間の少女が立っているのが分かった。

 いや、人間ではないか。

 シルエットは人間に似ていたが、長い黒髪の頭頂には三角形の犬っぽい耳があり、腰には黒いふさふさの尻尾まで生えていた。

 そして何より、邪神と呼ぶには小さすぎた。

 おおよそだが、頭の高さがジークの胸より下くらいだろう。

 果たして、あそこまで大きな扉を通る必要はあったのだろうか。



「たしかに小さいな」


「そうだね、あたしよりも小さい」


「お…おんしら死にたいようじゃの…ええい、行け皆の衆!あの一番奥の不届き者を捕らえるのじゃ!」



 邪神と呼ばれる少女の号令により、城内の魔族が一斉に敵意を剥き出しにしてこちらへと雪崩(なだ)れ込んできた。

 ただ一体、『すまねぇあんちゃん…!』と申し訳なさそうにしている魔物もいたが、かかってくる以上、今は敵と見なしていいだろう。

 ジークはこの場を切り抜けようと、仕方なく魔法を詠唱した。



誘眠(ゆうみん)、マドロスリプ!」



 睡眠魔法が発動し、ジークを中心に青い霧がたちこめた。

 その霧に触れた魔族は次々に眠りに落ちて倒れ込み、あっという間に城内の魔族を鎮圧してしまった。

 しかし邪神は耐えたようで、よろめきながらもこちらを睨み続けていた。



「なんという魔力…危うく妾まで意識を持っていかれるところだったわ…そこの無礼者!名を名乗れ!」


「俺はジーク。人間界にちょっかいを出している魔族を(いまし)めに来た、魔王だ」


「くっ…その額の紋章、邪竜王の血族か…無能だった先代より活きの良さそうなやつじゃの…」



 やっぱり邪竜王、無能だと思われてたのか。

 少しは無能であることを隠す努力をしてほしかった。



「分が悪いか…ここはひとまず引かせてもらう!」



 邪神は着物を(ひるがえ)し、扉の向こうへと消えてしまった。

 まさか増援でも呼ぶつもりなのだろうか。



「待て!ミラ、追うぞ!……ミラ?」



 返事が無いので、ジークが不思議に思い後ろを振り返ると、睡眠魔法を食らってしまったようで、地面に丸くなって眠っていた。



「んん…ジーくん…だめだよぉ…」


「…仕方ない…」



 ここに置いていくわけにもいかないので、ジークはなんとか首にミラの腕を回させて、みっともないがおんぶをして邪神の後を追った。

 今日も今日とて誰得?(俺得!)な作品を書いております、肉付き骨です。

 自己満足というか、セルフ補給のために書いていると言っても過言ではない、私の趣味全開なこの作品を読んでくださる方々には感謝しております。

 次回、ゲオルグ出せますかね…

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