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勇者、魔王入門?

 ひょんなこと(で済ませていいのか?)から邪竜王の跡継ぎにされて、魔界の勇者的ポジション《魔王》になってしまった俺は、まず魔王としての仕事を知ることにした。

 邪竜王はあんなことを言っていたが、玉座の上に配下の名簿と《なれる!魔王!》なる書物を置いていってくれた。



「ねぇ、あなた…?」


「これが配下の名簿か。一人一人にちゃんと名前あったのか…えっと、じゃあそこの、クライゴーストのナキオ。一旦ここに城内の魔物を集めろ。顔ぶれを確認したい」


『ひぃ!?りょ、了解っす!』



 邪竜王から授けられた紋章のおかげか、魔物の言葉が分かるようになっていた。

 いつも泣き顔の青い幽霊は恐るべきスピードで玉座の間から出ていった。普段の戦闘からあのスピードならば強かっただろうに。



「ねぇん…あなたぁん…」


「次は…そこの骸骨霊媒師(がいこつれいばいし)のコッツン。俺は、魔王はこれからどうすればいい?」


『ヒッヒッヒ、そうですな。いつもはワタクシに魔界の半分の統治権を…』


「次にくだらねぇ嘘ついたら…分かるな?」


バチバチッ


『あ、はい、すんませんもうしません。いつもは負傷した仲間の手当てと蘇生(そせい)をワタクシたちに命じております』


「よし、じゃあ行け」



 あからさまに嘘をついていることが見え見えだったので、説明書通り魔法で少し脅してやると途端に正直になり、玉座の間から飛び出して行った。

 それにしても、魔物も蘇生魔法で復活できるとは。今まで倒してきた他勢力の魔物もその後復活しているのだろうか。早急に手を打たねば。



「あなたぁ…ん…ぁあなた…ぁん…」


「ミラ!もうやめろ!ほら、構ってやるから…」


「っしゃー!」



 ローブに身を包んで拳を頭上に突き上げているこいつは、邪竜王の娘、ミラ。邪竜王が勝手に俺の嫁として置いていったやつだ。

 いい加減無視できない領域に達していたので、ここでしっかり言っておかねば。



「まずその『あなた』って言うのやめろ…ミラが言うように俺にもジークって名前があるんだ」


「えぇー?じゃあジーくんで」


「ぐっ…もうそれでいいよ…」



 本当にミラの相手は疲れる。なんで邪竜王はこいつを連れて行ってくれなかったんだ…

 なんかバカっぽいし、魔王の仕事について聞いても絶対に情報は得られないだろう。



「次は…っと」


「あー、そこスキップしていいよ。あと、こことこことここは形式的なものだからとばしちゃって。その代わりここは絶対やらなきゃダメ。この前それを抜かしたおかげでドラゴニュート隊が大混乱しちゃって大変だったから。それから…」



 次々に書物の項目にバツ印や二重マルをその鋭い爪でつけていくミラ。所々で注意点を述べてくれるおかげでわかりやすい。

 あっという間に『なれる!魔王!』はマルとバツだらけになって返ってきた。



「…ミラ、もしかしてできる子?」


「ん?実際配下を指揮してたのはあたしだからね」



 まさかとは思うが、邪竜王は魔王の仕事について把握していなかったのではないだろうか。それで、より詳しい娘のミラに丸投げしたのでは…



「あいつ何してたんだよ!?」


「パパ?姫とイチャついてた」


「威厳の欠片も無ぇ!」



 …やはり、ミラの方が魔王の仕事について詳しいようだ。

 邪竜王、まさに形だけの魔王じゃん。



「じゃあミラ、俺に魔王のすべきことを教えてくれ」


「いいよ、ジーくんを立派な魔王にしてあげるっ」



 笑顔でVサインをこちらに向けるミラはとても嬉しそうだった。

 だって、尻尾振りすぎて床抉ってましたもの。

 どうも、肉付き骨です。

 次回、今度こそ魔王業務を学ぶ。

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