短編6
【道化師祭り】
真夜中と言えども、都会のここでは街灯が目まぐるしく 、はたまた神々しく輝いている。暗闇に屈しない、そんな折れない心の象徴だ。略して、おれここ(折れない心)と言ったところだろう。近年、希に見る”長い言葉は省略してしまえ風潮”の物真似だ。パクることには臆さない、それが私だ。天職は道化師。
世の中は騙し合いが、瀕発している。騙された方が悪いのか、騙した方が悪いのか、そんな台詞を耳にする。私に言わせれば、おまえらは片方を悪に染めてしまわないと気が済まないのか、との一文句で一蹴する。価値観とは様々なわけだけれど、正しい価値観も間違っている価値観も、結局あんたらは白黒をつけたがる。
曖昧な位置づけをハッキリさせたい気持ちは多いにわかる。人間、未知には戸惑い、喘ぐ者だから仕方のない。掴みどころがなければ、取っ手を添え安心する。天気はいつだって晴れてほしい、と願うのが我々だ。わからないもには距離を置く。前例のないものには身を寄せない。素晴らしいことだ。大いに尊敬しよう。
かくして、私みたく”へんてこりんのおませさん”は希少価値があるのだ。、、、以上を、深夜堂々叫んでいたのだから、おもしろい。もちろん彼とて、普段は内なる思考をあけっぴろげにはしない。それこそ大事だ。日常に潜む、スパイスとでも言い換えようか。辛味はピリッと刺激を与えた。彼にとっても、そして僕にとっても。
【道化師祭り1-2】
非日常を求めても、最後には日常に返り咲く”時間にして、午前3時。未成年なら、職務質問に捕まり、あえなく補導される。そんな丑三つ時にどうして居合わせていたのか。私っ子男子と僕っ子女子。夜分遅くの奇妙な出会いもあったもんで、アイコンタクトを交わす彼らは驚くのだった。
少女は目をパチくりする。おばけでも、宇宙人でも見た驚き具合とは違う。どちらかと言うと、阿呆らしさに呆れるような驚き。彼女の目は節穴か、点になっていた。「っひゃー!!」打って変わって、素っ頓狂な悲鳴を上げる少年。イナバウアーめいたリアクションも去る事ながら、美しい。児童の専売特許、軟体である。
何が起こったのか、状況把握に務める少女は滑稽だ。口をあんぐり開けて、脳内整理に務める少女は滑稽だ。とても重要だから二度言う。なぜなら、彼女の第一印象が決定した瞬間だからだ。かと言って、幼さない彼女を誰も責める者は、いない。そう思うのが普通だ。「え、え、なになに!?」「ヤンバルクイナ!?」
あまりにも驚いたせいか、少年の目は鳥を認識してしまった。ぶっとんだ認識にもほどがある。この場合、印象の良し悪しは彼の鳥好き嫌いに、左右されるのだ。どうしてヤンバルクイナ、なんでヤンバルクイナ、彼女の脳内に渦巻く疑問ナンバーワン。不意にヤンバルクイナの群れが彼女をさらっていく、という絵面が思い浮かんだ。




