短編46
【ラリアットカントリー③】
グーパンチの音としては、不似合いな音が響いた。それもそのはず、空気パンツアーの拳は、空を切り、おちゃらけマンの平手ビンタが、空気パンツアーの頬に炸裂していたからだ。「ホワタタタタ、ペーチペチペチペチ」「エアーエアー、アンフェアーダッ」ずさり、空気パンツアーはその場に倒れた。
【ラリアットカントリー④】
「空気しか殴っていないから、人を殴れないのさ、しかしまあ、空気には勝っていたんじゃないか、よかったと思うぜ、その分は誇っていい」空気パンツアーはもう空振ることはない。何故なら、彼の腕はぺちぺち炸裂拳によって、真っ赤に膨れ上がっているからだ。「だがな、空気は吸うもんだぜ」
【ラリアットカントリー⑤】
パツーン、パツーン。どこかで花火でもやっているのだろうか。しかし、夜でもないのに不自然極まりない。別に朝っぱら、昼っぱらに花火をするな、というルールはないが、明るい時間にして楽しい訳が無い。おちゃらけマンはあたりを見回した。いっぱしの常識人として、いっぱつ喝を入れてやろう。
【ラリアットカントリー⑥】
パッツアーン、パッツアーン。草木を掻き分け、音のなる方へ歩んでいく。しかし、近づけば近づくほど、音はでっかくなるどころか、小さくなった。つまるところ、音が止んだのだ。「なんだ、自分に気づいて退散したんかね、だったら拍子抜けのビビリだな」深追いは禁物か、いや追ってみるか。




