短編3
【思い老ける】
遊びたくても、できない状況がある。行動は不自由でも、考えるのには制限がない。そこんところ、よろしく。しかし、容量は悪い。大抵、暇でないと、と妄想は難しい。それこそ脳がパンクし、白目を向いてしまう。挙句の果てにアヘ顔をかまして、舌をベロベロしているかもしれない。想像しただけで恐気が走る。
【カニっ子】そういえば夏っぽいことしてなくない? そう思った僕はすぐさま行動に出ました。おばあちゃんの家へ行こう。一人では心許ないので、小学生の弟を連れて、一泊二日をすることにしました。初めのプランでは、電車と歩きで行くつもりでしたが、車で送ってくれるという話になり、言葉に甘えて車で行きました。
道中、ラーメンを食べ、おばあちゃん家への手土産として適当にお買い物をし、余呉湖という小さな湖を一周して、約二時間半をかけておばあちゃん家に到着しました。どうやら、おばあちゃんはソーメンを作っていたそうで、着いた頃には、伸び伸びソーメンが出来上がっていました。どうするもこうするも、お腹は一杯です。
荷物を降ろして、さっそうと弟と共にカニを捕まえに行きました。これこそ、夏っぽいこと。水に足を浸かってビシャビシャしながら、カニを探す。そういう理想です。けれども、そういう風にはなりませんでした。弟に付いていき、川というより溝っぽいところに行くと、地元の先客がいました。弟と同じ小学生達です。
彼らにとって僕らは思わぬ来客です。ですが、ぼくはキチンと挨拶をします。挨拶をせずには何事も良好にはなりません。会釈して、そらから溝を覗き込みます。あらあら、まん丸なスイカを冷やしてるではありませんか。水に触れると、とっても冷たい。さすが田舎です。僕の住んでるとこは都会ではありません。
むしろ、田舎だと思います。ですが、生活が都会なわけです。毎日、外で遊ばない。なぜなら、パソコンや携帯で事足りてしまいガチなのです。それに本ばかり読んでいると、家内で過ごすことも多い。都会っ子は内の遊びが多いということです。そして、話は戻りおばあちゃん家周辺。地元の一人は僕らを毛嫌いしているようです。
「カニとか素手で掴むもんやろ。そんなんで捕まえられるわけないやん。これだから都会っ子は」という風に挑発めいた発言を浴びせてきました。知らないものは知らないので、僕は聞きに徹します。反論はしようとすれば、できたと思いますが、さすがに小学生相手には大人気ないだろう。むしろ、関心して聞いていました。
自然に慣れ親しんでいる彼ら、自然に疎い僕ら。カニの捕まえ方、溝のどこらへんにいるか、タマゴパックに入れられるカニの気持ちになってみろ等々。そうです、弟はタマゴパックでカニを捕まえようとしていたのです。僕としては、斬新なので笑っていました。何で取ろうが、取れればいいんじゃないかな、と思っているからです。
ですが、彼らにとっては素手で捕まえるのが当たり前のようです。都会っ子は生物と触れる機会が少ないから、実際に自分で触れて捕まえる大切さがわからないのかもしれません。論理的ではなく、直感の問題です。自然なので、感じることで知るのだと思います。だから、都会っ子がすぐに理解できるようなことではないのかも。




