短編16
【かまってちゃん】
あなたの隣にもいるかもしれませんよ。「ギャ~ギャ~」まるでカラスの呻き声を、朝起きや起きに叫ぶ彼女には幽霊が見える。地縛霊とか背後霊とか精霊とか多岐に渡る生命の残りカスとも言える存在が見える。こればっかしは慣れないし、毎度のように驚くせいで親に心配される。幾度も精神科へ行った。
残念ながら場所を変えて、人を変えて津々浦々の病院を巡ろうが、診断結果は同じだった。「至って正常ですけれど、そんなに心配なら精神安定剤でも出しますよ」そうやってセールスアップをしてくる詐欺医者ばかりだ。世の中、金の猛者しかいない。「はあ~、いつになったら見えなくなるんだろう」溜息が出るのも無理はない。
【開示】
僕の大きく背負うことになる大荷物の紹介。率直に申して"奨学金"だ。しかも無利子ではなく返済必須の奨学金。こんなことになったのは自分の努力不足だと恨むに他ならないけれど、それにしたって高すぎだ。高杉晋助が奇策を講じても、跳ね返される。坂本龍馬さえも屈服せざる負えない。この大荷物、どうしたものか。
【殺現場】
ポリスオフィサーが駆けつける頃には、とうの犯人は逃げ去っている。現場に残された物物は動かすまえに型をとる。人であろうと関係なく、床に散らばっている三々五々共にひとときの領域を持たせてあげる。そうすることで、誰かが報われるとかは一切ない。あくまでもマンネリ化した調査過程、つまり通過儀礼だ。
【ヘンテコ】
なんじゃろな。素人の目には、赤ちゃんの目には、新入社員の目には、理解不能のエラー文がところ狭しと映っていた。初めて何だもの、ヘンテコなんだもの、未知なんだもの、パニック障害になったら責任とってよ。責任者はどこか、いるなら何時間でも問い質したい。無知に生まれた理由を教えろ下さい。