短編12
【渡り橋トーレニング】
つまらない橋を渡った、道ある橋に魅力を感じない、レインボーブリッジは七色には光らない、橋をこよなく愛しこよなく批判するお粗末くんがいた。幾多の橋を蹂躙した橋の猛者、あだ名を付けるなら橋来れくんである。彼もまた筋肉痛に悩んでいた。このままで連日橋渡りのギネス認定がされない。
【渡り鳥トーレニング】
橋は人以外も渡ることがある。山奥なら熊、兎、猪、そして鳥がいる。その中で異彩を放つのが、鳥である。橋渡りというより、空渡りかもしれないが。橋来れくんは筋肉で鳥を挟めば筋肉痛がなくなるのでは、と根拠のないお粗末な考えを導きだした。生物史上最強の橋渡り、奴なら筋肉痛をぶッ飛ばせる。
【挟めばイーヨニング】
温かい一物を柔らかいお肉で挟み、優しくお肉を刺激して肉痛神経の発達を試みる。橋来れくんはさっそく市販の鳥肉を足と腕の屈折部分で揉みほぐしていた。生肉なだけに脂肪のヌメリがあった。音で表現すると、ヌメモミヌメモミ、ツルンである。橋来れくんはこれを一ヶ月続けることにした。
【事後トーレニング】
橋来れくんの筋肉は見事なほどにツヤツヤになった。ワックス塗りたての床、新装店さながらのテカリ。だが煌びやかな筋肉が仕上がったのは二の次だ。肝は筋肉痛がぶっ飛んだかどうかである。再び、連日連夜の橋渡り記録更新に臨んだ。結果、痛みがなくなることはなかったが、以前と比べて緩和した。