Purologue ――プロローグ――
なんとなくの思いつきで書き始めた作品なので、お手柔らかに。
私は生まれた時からずっと人を殺すことばかり考えて生きてきた。生まれたその瞬間にも、親は誰だか名も知らない人を殺していた。成長の過程でも、親は言葉を教える代わりに人の殺し方を教えてくれた。
私には“殺し”しかなかった。
「い、いやだ……助け――ぎゃあああ!」
私の手に握られているそれは確かに人を殺すための道具。しかも今殺したこいつが持っていたものだった。
いわゆるサバイバルナイフにも似ている。私はそれを這って逃げようとしていた眼下の男の背に突き立てている。
「…………」
ここにもう生存者はいない。依頼されていた仕事はすべて完了した。あとはどこかで見ていただろう依頼人と連絡をとって報酬を受け取るだけだ。
用が済んだこの血なまぐさい建物から出ようと身を翻す。
「ひっ……」
「……………」
子どもがいたらしい。一人の少年が部屋の入口に立って血の海と私を見て固まっている。
こいつらの仲間か?
私は男の背中に刺したナイフをず、と抜いた。多少血が飛び散って長い髪についたが、すでに大部分が血に濡れているので気にしない。
「お前は、誰だ? こいつらの……仲間か?」
少ない語彙を集めて言葉にする。イントネーションもおかしいものだっただろうに、少年には伝わったらしい、怯えつつも必死に首を横に振っている。
「……じゃあ、何者だ?」
「ぼ、ぼく、この人達にいきなりついて来いって言って……いろんなところも殴られたし……」
攫われてきたのか。
「そう、か。だったら、もう、家に、帰るといい。……きっと親が心配、している」
そう言われて少年はやっと理解したらしい。わかりやすいほど顔には喜びが表現されている。
「私と一緒に、この建物から、出よう」
「うん!」
私はナイフを部屋の中に投げ捨てた。
私は裏の世界では結構な有名人だ。そういう仕事の人に『紅の雫』と言えば大体通じる。
殺し屋・紅の雫 リア
私という個体を表す言葉はこれしかない。
基本的にリアさんは、仕事中の格好と普段着を使い分けています。
といってもマントを羽織っただけですが。
それを踏まえ、次の話を読んで頂けるとつじつまが合うと思います。