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王の泉  作者: 稲波 緑風
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3.歌

永らくお待たせしました。文章が変質しているかもしれませんが、目をつぶって読んでいただけると嬉しいです。(あ・・・目をつぶっていると読めないか・・)

そうだ。確かにあれは歌だった。言葉なく、曲もへんてこで、音もばらばら・・・。それでもたしかにあれは歌だったんだ。


 目が覚めて瞳に映したのは、朱い紅い丸。もう夕焼けか・・・。そんな思いがぼんやりと浮かぶ。

 「!!夕暮れ?!」

出せるだけの声を上げた。がらがらの声をだしただけで、身体がきしみ、痛みにうなる。

 「ば~か。夕焼けくらいで驚くなってんだ。怪我に響くぞ~。・・・ああ、頭ん中疑問だらけだろうから、ひとつだけ教えておく。あんたが気を失ってから3日は経ってる。」

後ろから声がして振り向こうとして頭をはたかれた。その衝撃で、せき込む。

 「寝てろ。寝てろ。もうひとつ教えといてやっから。懐にあった手紙なら、ふくろうに持たせて、王宮に届けてある。あんたの容体も付け加えてね。・・・信じないか?・・・そうだろうな。だが、信じとけ、難しくとも。俺は誰の味方にもなれんが、敵にもならん。戦いは面倒なんでな。」

隣に小柄な姿が座る。どこかで見たことがあるような気がする。言われたことを頭の中で復唱しながら、そこに嘘は存在しないのだと、根拠のないままにわかってしまった。いや、わからされたのかもしれない。

 「・・・・あんた、“林檎リウム”は嫌いじゃないよな?」

声を出そうとして、身体が悲鳴をあげた。しかたなく、左手で答える。

 「あれ?・・・へぇ、そっかそうだよね。・・・ごめん。こっちの話。んじゃ、寝てなよ。ちょっと採ってくるから。」

小柄な人はひょいと立ち上がり、今にもかけて行きそうになる。

 「夕暮れだから危ない。とか思ってる?」

こちらの心を読んだように、尋ねられる。

 「ここは“森”なんだ。昼だろうが、夜だろうが、同じように危険さ。・・・・・・・・・・ただの人間にはね。」

最後に何か言ったようだった。小声で聞き取れなかった。口元がちょっと動いていたから、何か言ったように思えただけで。

さきほどの一言を言い置いて、小柄な人は洞窟の外へと姿を落とした。

私は、ため息をひとつついて外を眺めた。ただ、太陽が赤く染まっている景色しか見えない外を。


 風にのってとぎれとぎれの音がかすかに聞こえた。歌っているのだろうか?それにしては、あまりにも不用心な・・・“森”で歌うなど・・・


 「寝てるか~?・・・・まあ・・・・・なんだ・・・・しっかり起きてるんだなってのは、予想できたがな。・・・・・・」

何を疑問に思うのだろうか?確かに私は横にもならずに待ってしまったが・・・。しかし、その背に背負っているのは、“林檎リウム”だろうか。いつのまに籠を用意したんだと言えばいいのか、私はその大人一人入ってしまいそうなほどの籠一杯に入っている“林檎リウム”を食べつくすほどの大食漢に見えたのだろうか?

 「・・・・・“林檎リウム”以外にも入っているからな?それに俺の分も取ってきてっから。・・・けが人に無茶な食事をさせるほど、馬鹿なつもりはないんだがね。」

ぷいっとそっぽを向いてしまった。やはり、心を読んでいるのだろうか?私はそれほど表情を変えることはないのだが・・・。しかし、先ほどから半刻ほどしかたっていないように思うんだが、よくそんな量を採って来たものだ。


 鼻歌を歌いながら、小柄な人が私の隣で“林檎リウム”の皮をむく。

2014/12/23

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