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魔術部

 不条理。その言葉がコナイの頭を占拠する。

 納得できないこと、それは多々存在する。

 だが人は妥協という言葉を知らなければ生きてはいけない。

 コナイが現在の状況に出した答という名の妥協。

 それはそれに対する後ろ向きで前向きな考え方、つまりは現状維持。

 流れに身を任せる。その心地よさと危険性に気づかないふりをすること。

「やっぱり変です」

 それでもコナイはツッコミを入れた。

「明石教諭。なんで部活対抗で科学部の相手が魔術部なんですか」

 キープアウトの帯で厳重に封印された魔術部の扉を指さし、コナイけたたましくわなないた。

 いわれた男。若手の教師、明石教諭は両手で耳を塞ぎきると、さわやかに返した。

「科学の敵は常に魔術だよ。逆もまたしかりだよ」

 言葉の意味はわからないが、妙な自信である。

「そういう敵対関係を新入生にまで引き継がせないでください」

「大人はそうやって憎しみの連鎖を子供達に引き継がせることしかしてこない、ずるい生き物なのだよ」

 この男、ニュータイプか。

 彼はこちらの言葉を半ば無視して。

「対抗戦と言っても要は簡単なディスカッションだよ。科学部は科学の楽しさを語り、魔術部は魔術の楽しさを語る、もちろん部活動間の部員トレードも可能だ。軽い気持ちでいくといい」

 そーいうと彼は対外的に見て明らかに負のオーラ力に充ち満ちた扉を開いた。

 部室はやはりというか、もろに一般的な黒魔術の様相で、暗い部屋とその中央にでかいカマ風呂、謎の液体が煮立っており、黒ずきんをかぶった男達が整列していた。

 そして何事なのか、おしとやかそうな美女かバニー服姿で、黒服男の足元にすがりついている。

「やめて、返してください、その子達を返してください」

 まとわりつかれた男。両腕にウサギとニワトリを抱えて足元の女性を引きはがそうと躍起になっている。

「ええい、こやつらは魔王ノルウェ様に捧げるのだ。光栄に思ってはなさんかっ」

 まるで仕事をせずに酒ばかり呑むヤドロクとその女房といった図柄である。

 コナイは展開に取り残されながら呆然と。

「教諭、もう帰っていいですか」

「まて、君はこの状況を見ても、何も心が動かされないのか」

「普通に関わり合いたくないと思いますが」

 明石はええいとこちらに構わず叫ぶ。

「待てぇいッ!」

 いや、今どき待てぇいッ! ってアンタ。

「状況は大体わかった、ボク達が勝ったらその仔達は返して貰おう」

 「達」って、強制的にイベントに参加させられたッ!?

 しかも、教諭なんだから、勝負関係なく処罰できるでしょ。

「フッ、いいだろう。望むところ」

 黒服のリーダーらしき男が了承する。

 バニー姿の女性は男の裾を放すと、よよ、とこちらにスリより。

「生物棟の部長です。イチゲーは《飼育》。あのヒト達がガーデンに侵入したのを発見し、追いかけてきたのですが」

 彼女はさめざめと泣きながら。

「うう、そのニワトリとウサギさんは私達がヒナの頃から大事にお育てしましたのに」

その愛情と母性の深さに、コナイも同情を隠しきれなかった。

 おもわず彼女の手をとり勇気づける。

「大丈夫です、きっと教諭が何とかしてくれます。私もがんばります。でも、あの子達も幸せさんですね、こんなに想われてるなんて」

「はい、クリスマスには部員全員で美味しく食べようと思っていましたのに」

「食用ッ!? しかもクリスマスは七面鳥でしょ!」

「いえ、七面鳥はチキンと比べて臭みを消すのに苦労するのと、歯ごたえに問題がありますので」

 意外に肉食系だこの人。

 泳いだ目線のさきで、ウサギとニワトリ達と目が合った。

 イノセントな瞳でこちらを見つめ返すその視線。

 それに耐えきれず思わず目をそらす。

 ごめん、勝っても負けても何ともしてあげられないかも。

「ところでなんでそのカッコウなんですか」

 バニーガール姿について訪ねと、彼女は胸に手をあて、いかにも女性らしい仕草で、

「私は飼育するのに相手の気持ちを知るのが重要と考えているのです。相手の適性、性格、情熱の向き、それらを理解し最上に育てることこそ私のイチゲー、そのためのコスプレなのです」

 納得できるようで、一切理解できない理由であった。

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