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A 今に繋がるものです

 アフリカで自然動物保護活動を続けるためには学問が必要だった。それでもそんな金も時間もなかった。そのためほぼ独学で身につけることになった。

 十代の半ばになると保護団の活動を通して大きな武器密輸産業の存在をかぎとっていた。

 彼らは強大な資本力を背景に大国で余った武器を横流しにする。思慮の足りない人間はそれを買い取り、短期的な視野で略奪し限りある生命や資源を吸い取っていく。

 先進国では旧式の装備でも人間相手に殺傷力は十分だった。それは動物達をも殺戮オーバーキルするのを容易たらしめるものだ。

 例え自分たちが決死となって証拠を掴んだとしても、司法的に罰することは難しい。

 国際法は西洋人に都合のいいように出来ていることを学んでいた。

 ただひたすら表面的な小競り合いを続けるしかないのだ。根本を正すには国民の考え自体を変革しなくてばならない。その力と能力は到底自分には持ち得ないものだ。

 

 ある日、資金援助してくれている団体のトップに活動報告を求められた。

 汗と硝煙の匂いを漂わせたまま、応接間に通される。

 仲間の上役達からは報告と一緒に、例の一芸を披露してくれるよう頼まれていた。

 その頃から自分は早撃ちに関して他者より秀でていた。外国のテレビからも取材を受けた。

 密猟団との一触即発の場合に合っても、相手の指が銃把にかかる前に銃口を突きつけることができて先手をとり続けた。

 今回みたいに金持ちのごきげんとりにと、請われて曲芸紛いのことをしたりもした。

 命のやりとりで培った技を面白半分の輩に見せるのには抵抗あったが、活動資金のためならば仕方がないと妥協もしていた。

 通された応接間には同年代の少年だけが取り残されたように佇んでいた。

 浅黒い肌に長い手足、アラブ人特有の鼻の形をしているが顔立ちの幼さは東南アジア人にも見える。

 窓ガラスを背景にするその少年に、自分は目線だけで尋ねた。

「ああ、アフリカも沿岸部はやはり都会だ、でも、ここからじゃあ内陸の様子はうかがえないな。シマウマをみたかったんだがなぁ」

 一瞬思考を硬直させたが、直感で理解した。

「オマエが……」

 オマエがオレ達のスポンサーなのか。でかかった言葉は喉からでなかった。

 感覚として確信できても、理性はやはり同年代の彼をそうだと認めたくはなかった。

 唖然とする自分にそいつは、

「そう、君達の活動を援助しているケチなオトコ。仲間達からは《死の商人》と呼ばれている」

「《死の商人》?」

「人類史より存在し決して消えることない商人の称号。武器弾薬を流通させて、世界に循環させる。あらゆる戦地での兵站を担う真の意味での戦争の支配者。《死の商人ロード・オブ・ウォー》」

 うそぶく様子も見せない男の真意を、はかりかねていた。

「なぜそんな奴がオレ達に支援をしてきた。それにそれを話す理由がどこにある」

「スカウトにきた。君は本来の仕事に戻るべきだ。団体への金はこれからも出す。だから、オレと一緒にくるべきなのだ。そのためにきた。そして、名乗った」

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