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イチゲー

 そこは実社会において異常なまでの評価を受けている。

 卒業生は常に大学から特待生推薦を受け、また企業からも就職の斡旋が積極的に行われている。その教育方針はただ一つ、イチゲーである。

 器用貧乏な天才を必要とせず、総合能力は一切評価されず、認められるのはただ一つのイチゲーのみであった。

 イチゲーの、イチゲーによる、イチゲーのための教育。官僚を養育する日本教育に真っ向からさおさす教育の現場。

 それは社会から追い出された一部の突出した天才達、異能者の巣窟。

 どんなくだらないことでも、一位であれば問題ないがこの学校の教訓。

 その入学条件は厳しく、資料による選考の後、入試はすべて面接官の前でのイチゲーの披露である。

「今田コナイです、特技はとくにありません、普通です」

 自己紹介を始めたのはその言葉どおりのごく普通の少女である。

 彼女は友達の付きそいで試験を受けるという、ごく当たり前で、ごくありきたりな理由の受験生であった。

 これまでの人生で特に何かイチゲーというものがあったわけではないし、特に何か秀でたものがあるでもなかった。

 その場にいた面接官三人は少女のその言葉に揃って眉をひそめると、ある用紙を差し出してきた。筆記テストを受けるようにとの無言の指示である。

 少女は緊張したまま、筆をとった。

 全教科だいたいわかって、だいたいわからなかった。

 おそらくどれも満点は取れなかっただろう。

 答案用紙を採点する面接官達の顔は見る間に青ざめていった。

 不合格おちた。その理解が相手の言葉よりも先に少女の胸の内へと届いていた。

 一向に動く気配を見せなかった試験管達は急にせわしくパソコンをいじりはじめだした。口にこそ出しはしないが、彼らは何かに驚いているようにも思えた。

 仲間うちで耳打ちをしあっている。

 彼らの中で何らかの審議が終わると、真ん中の面接官が口を開いた。

「君の偏差値なんだが、私も実際に見るのは初めて、としかいえない数値をたたき出した」

 黙って疑問符を出していると。

「50.00どれだけこの数値が異常か、統計上の観点から指摘することはできるが、実在するとは思っていませんでした」

 50とは則ち平均である。つまり分布と分母が最も多い数値ということ。この学校のスタンスからは対角線上に位置する数値。

 やはり落ちたのだ。そう確信する。

 向かいから右側の若い面接官は、

「ちょっとサイコロを振ってみてくれませんか」

 差し出されたサイコロを6回振ると、1から6くまでがそれぞれ1回ずつでた。

 それに驚いた男は次に一六面ダイスを用意した。

 16回振って順番はバラバラだったがやはり、1から16までの数字が一回ずつ出た。

 向かい左、初老の面接官が落ち着いた様子で。

「今から体力測定をお願いしてもよろしいですかな」


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