『自動車教習所』
「おいおい、いったいどこ見て運転しているんだね」
「すみません」
リリ子は、もう半年も教習所に通っているのだが、いまだに仮免すら取れないでいる。
「君みたいな生徒は初めてだよ、まったく・・・」
隣に座っている教官は、あきれきった顔をリリ子に向けた。
「すみません」
「はい、エンジンかけ直して、再スタートして」
リリ子は、エンジンをかけると、クラッチを踏み込みギアを入れて、アクセルを少し踏み込みながらゆっくりクラッチを離した・・・
いままで何度も教習所で習ったことを頭の中で繰り返しながら車をスタートさせた。しかし・・・
ゴスッ、ゴスッ、ゴッゴッ、ゴスッ・・・
車は見事にエンストしてしまった。
「君は、わざとやっているんじゃないの。まったく最低の生徒だね」
「すみません」
「あやまればいいってもんじゃないよ・・・だいたい・・・やる気があるのか・・・あきらめた方が・・・」
教官は延々と説教を始めた、毎度のごとく説教は自動車の運転のやり方から、リリ子の人間性にまで及んだ。しかも、今日はいつまでたっても説教が終わらない。さすがにリリ子もうんざりしてきた。ふとバックミラーに目をやると、後方に何台も他の教習車がつかえている。隣の教官の説教は終わりそうにない。リリ子は耐えられ なくなって、この場から逃げ出したくなった。
「もういやっ」
リリ子は、車から降りるためにドアを開こうとしたが、カギが掛かっているわけでもないのにドアが開かない。
「・・・だいたい、自動車の免許なんか取ろうというのが無理なんだ・・・」
あいかわらず教官の説教は終わりそうにない。
その上、後方の教習車からはクラックションまでならされ始めた。
リリ子はパニックになって、ドアをガチャガチャして開けようとしたがどうしても開けることができない。隣の教官の声も、後方のクラックションの音もますます大きくなっていく・・・。
リリ子は、頭を抱えてハンドルを握りしめて、大声をあげた・・・
「ここから、早くだしてーーー」
「はやく卒業したかったら居眠りなんかするんじゃない」
はっとしてリリ子が顔をあげると、そこは教習所の教室だった。
おしまい




