名物おじさんの真実ーおじさんの言い分ー
15分短編です
事の始まりは、家の庭に落ちていたスカートだった。見覚えのないそれは、夜、疲れて帰ってきた私に、妙な活力をくれた。
妻の物でも、娘の物でもない。近所のどこかの誰かの物だろうと思った。
あの時、私は、疲れていたんだと思う。仕事もうまくいかないし、妻と娘には煙たがられていたし、部下には舐められるし、夕飯も準備されていないし。
なんて、いろいろな感情がないまぜになって、私の心にズンと重くのしかかっていた。その時目の前に現れたのが、スカートだった。
私は何を思ったか、そのスカートを身につけたのだ。不思議と自分のカラダにフィットしたそのスカートが、私の中の妙な扉を開いたのは確かだった。
私はその日、スカートを履いまま、夕飯を買いに、近所のコンビニに向かっていた。家を出てすぐ、変な目で見られるんじゃないかなんて、ドキドキしていたけれど、夜中と言うこともあって、知り合いは愚か、ほとんど人と会うこともなく、近所のコンビニに到着してしまった。そして、すんなり買い物を済ませ、私は帰宅した。
快感だった。
昼間であれば、“普通”であれば、咎められるようなこの行為が、自分が、認められたような気がした。
翌日、俺はそのスカートをリビングに置き忘れてしまったが、妻がお隣さんのだと気付いて、一瞬喧嘩になりかけた。しかし妻がお隣さんに持っていくと「風で飛ばされてしまって困っていた」と言ってくれたおかげで、事なきを得た。
それからしばらくは気持ちも落ち着いていたのだけれど、ストレスがかかると、スカートを求めるようになっていた。
仕事帰りに、近所の家を見て回って、洗濯物が遅くまで干されている家をさがす。スカートのある家を見つけると、飛びつくようにそれを盗んで、履いて、コンビニに買い物に行った。でも私は、わかっていたんだ。そのまま持って帰ってしまっては、妻に見つかった時に言い訳が出来ない。このままでは通報されてしまうかもしれない。そう思うと怖くなった。
そして考えた挙句、タイツを履いて、皮膚や体毛が付着しない様に気を付けて、スカートはコンビニでの買い物が終わったら速やかに返そうと決めた。
それから私は、筋トレにもいそしむようになった。一階に住む女性は防犯意識の高さから、スカートなどを外に干さないことが多い。二階以上のベランダに忍び込むには、自分も体力を付けなくてはいけない。これは必須項目だった。
おかげで出っ張っていたお腹は凹んでいき、スカートの種類も、ふわりと広がるタイプから、タイトなものまで、様々な種類を履けるようになった。私はより一層、スカートにのめりこんでいった。
しかし、私にだって良心はある。娘と同い年の高校生のスカートを履くなんて、履くなんて・・・。そう思ったが、今日はこのスカート以外に、見つけられなかったのだ。背に腹は代えられない。速やかに買い物を済ませることにした。
コンビニを出て足早に公園のトイレに駆け込んで、着替えを済ませた。体毛の付着などが無いかをチェックして、一応、粘着ローラーで細かいホコリまで取り去ってから返す。これは私のせめてものお礼の気持ちだ。
さて、このアパートのベランダに登って、これを返そう。
今日も良いスカート日和だった。ありがとう、名も知らぬ女子高生。君のおかげで、私は明日も仕事が頑張れそうだ。
心の中でお礼を言って、私はベランダを降りた。
——明日はどんなスカートに出会えるかな——
・・・・いや、普通に犯罪じゃねぇか!




