第七章:能ある鷹は
放課後の校庭。
西村は、バスケ部の練習を終えたばかりの小林に声をかけた。
「ねえ、最近みんな部活ばっかりで、つまんないよ」
小林はタオルで汗を拭きながら笑った。
「まあね。松岡と佐伯なんて、サッカー部で毎日走っているし」
西村が面白くなさそうに
「話しかけても、ボールの話ばっかり。なんか、置いてかれいてる感じ」
「これから中間試験だし。私、英語を見るとめまいがするの」
小林は言った。
「じゃあ、中間試験が終わったら、部活も休みだし、みんなでハイキング
でも行こうよ」
「それ乗った。楽しみ」
「でも、赤点とって補修があったら延期ね」
「うん、がんばる。しっちゃんにも伝えてくるね」と
走っていった。
松岡と佐伯はサッカーの練習を終えて、ボールの点検を
していた。
そこに西村がやって来て、ハイキングの話を伝えた。
「気分転換にいいかもな」と松岡が言った。
「そうだな、でも俺いつも英語の試験で赤点補修だったから」
「皆んなで行ってくれ」
西村が情けなさそうな顔で言った。
「私も英語苦手。補修受けないといけないかも」と言った。
松岡は少し考えて
「じゃあ、3人で一緒に英語の勉強をしよう」
「わからないところは、すぐに聞けたほうが効率いいしね」
「後、シュートはプロを目指すなら試合やインタビューでの英語は
必須なんで、会話の勉強のしかたも教えるよ」
二人はその案に乗ることにした。
西村はこの事を小林に伝えた。
小林は「しっちゃんて、他人の面倒をよく見るけど。自分の首絞めて
いるんじゃない」と一瞬思った。
翌週から中間試験の前のため全部活は停止期間と
決められていた。
小林は朝の新聞配達は休まず続けていた。
いつもの配達コースの途中に小さな公園がある。
走り抜けようとすると、ボールを蹴っている人影が
目に入った。
よく見ると松岡であった。
新聞配達の自転車を隠し置いてから、松岡に近づいていった。
「しっちゃん、何しているの」
と小林が声をかけた。
少しびっくりして、
「あー、ミッチかびっくりした。見ての通りサッカーの練習だよ」
「それは分かるよ。でも、今試験前じゃん」
「左足のトラップと、パスの精度を上げる練習をしてるんだ」
「シュートへのラストパスを、もっと確実に通せるようにね」
「んー。分かるけど今、試験前で勉強期間でしょう?」
「なんか、シュートとのりっぺの英語の勉強も教えるみたいだけど」
「しっちゃんの勉強は大丈夫なの」
「あー、のりっぺに聞いたんだ」
「人に教えるって自分の復習にもなるから、効率的なんだ。
時間の融通は効かなくなるけど」
「まぁ、しっちゃんがいいって言うなら、私はいいけど」
「じゃあ、頑張ってね」
松岡は手を振って、また、ボールを蹴り出した。
小林は新聞を配りながら、
「しっちゃんって、なんか意思が強そうで優しくって。見た目もいいし。
シュートとは違う魅力があるなぁ」と思っていた。
中間試験が終わった。
シュートとのりっぺは無事に赤点ではなく、松岡にお礼に来ていた。
西村「しっちゃん、ありがとう。」
佐伯「俺、補習ないのはじめてだ」
松岡はシュートに言った
「これからサッカーの海外中継を見る時、英語モードで見るといいよ。
耳を慣らさすために」とアドバイスした。
小林は学年の成績表を見ていた。
彼女は前の学校でも成績優秀で、
常に3教科、総合でトップ10内に入っていた。
宝梅中学でも同じであった。
成績表の小林のそばに常に松岡の名前があった。
横で一緒に見ていた西村に聞いた。
「しっちゃんっていつもこんな成績なの?」
西村は何事もなかったように
「昔からこんなもんじゃない」
「それより、ミッチすごいじゃん!憧れる」と言った。
小林は内心
(前から憧れる人いるじゃないの)と思っていた。
(しっちゃんって「脳ある鷹は爪を隠す」みたいでかっこいいじゃん)
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