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第五章:ハイカラさん

ある土曜日の午後、西村は松岡の家を訪れた。

インターホンを押すと、すぐに玄関の扉が開いた。


「いらっしゃいませ〜」

玄関を開けたのは、髪をゆるくまとめた『しずか』だった。

大学のゼミ帰りらしく、ほんのりラベンダーの香りが残っていた。


「我が妹よ、よく来たね」

『しずか』は両手を広げて、西村を迎え入れた。


「お姉ちゃん、今日も元気そうで何より」

西村は慣れた調子でそう言いながら、靴を脱いだ。


『しずか』と西村は、昔からの仲だった。

小学生の頃、滋昭が近所の子と喧嘩して泣きながら

帰ってきたことがある。

そのとき、西村がランドセルを放り投げて、

相手の子に一発かました。


それ以来、『しずか』は西村のことを

「我が妹」と呼び、何かと気にかけていた。


「のりっぺ、なんか今日…ちょっと大人っぽくなってない?」

『しずか』は目を細めて、西村の落ち着いた佇まいに

目を留めた。


西村は白いブラウスに紺のスカートを合わせていた。

髪はいつもより丁寧に整えられていた。

西村は

「やめてよ〜」と笑いながらも、どこか嬉しそうだった。


リビングに入ると、滋昭がソファで漫画を読んでいた。

西村が覗き込む。

「それ、まだ読んでたの?」

「『はいからさんが通る』って、昨日も読んでいたじゃん」


『しずか』がすかさず反応する。

「滋昭、それ読み終わったら、のりっぺに貸してあげなさいよ」

この漫画は、女の子の魂を震わせるのよ」


「魂って……」

滋昭が苦笑する。


「私が読んだら、お姉ちゃんと語り合えるね」


『しずか』は満足げに頷いた。


滋昭は漫画を閉じて、そっと西村に手渡した。

「じゃあ、魂を震わせてきてくれ」


西村は受け取りながら、ふと小学生の頃のことを思い出した。


泣いていた滋昭の背中。怒っていた自分。

そして、

『しずか』が「ありがとう」と言ってくれたあの夕方。

今も変わらず、この家には優しい空気が流れていた。


西村は家に帰って早速「はいからさんが通る」を読んでいる。

おおよそのあらすじは

「大正時代、お転婆で快活な花村紅緒は、親が決めた許婚である

陸軍少尉伊集院忍と結婚を前提とした花嫁修行をさせられます。

許婚という関係に反発する紅緒でしたが、忍の優しさや誠実さに触れ、

次第に惹かれていきます。

しかし、忍はシベリア出兵で消息不明になってしまいます。

紅緒は自立した女性として出版社で働き始めます。


そんなある日、瓜二つのロシアの亡命貴族、サーシャ・ミハイロフ侯爵と

出会います。彼は記憶を失っており、自分が忍であるという自覚はありませんでした。

侯爵の正体を知った紅緒でしたが、勤め先の編集長である青江冬星と

結婚することを決意します。

関東大震災が起こり、忍は記憶を取り戻し、関東大震災の混乱の中で

紅緒を救出します。多くの困難を乗り越え、二人は結ばれることになります。」


読み終わった西村は、

(うーん……なんか、時代の空気が遠すぎて。うまく入っていけないなぁ)

でも、しっちゃんが夢中になる理由

それだけは、ちょっと気になった。


(ミッチにも読ませてあげて、意見を聞いてみよ!)と考えた。


翌日、ミッチにはいからさんが通る全巻を渡して、

「ねぇ、読んだらどう思うか教えてよ」

「しっちゃんが夢中になっているのがよくわからない」と伝えた。


小林は

「うん、わかった。読んでみるね」と受け取った。

小林は、知っていた。

この漫画がもうすぐ「宝塚テレビロマン」にアレンジされ、

脚本・配役が進められていることを。


ただ、原作を読んでいなかったため、全巻を熟読した。

「歌劇の夢が叶えて、いつかこの舞台に立ってみたい!」

と強く思うようになった。


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