第27章:二兎追うものは・・努力する
GWは執筆で頑張ります
放課後の体育館。
練習が終わり、ミッチがボールを片付けていると、
顧問が呼んだ。
「小林、ちょっと来い」
顧問は腕を組んだまま、ミッチをじっと見つめた。
その目は、最初から“実力を知っている人間”の目だった。
「……大阪で府代表だったことは、前から聞いている」
ミッチは少し驚いた。
「当たり前だ。転校生が来たら、前の学校に確認くらいする。
お前がどれだけの選手か、最初から把握していた」
顧問は淡々と続けた。
「ただな―― “実績”より“このチームでどう戦うか”を見たかった」
ミッチは息をのんだ。
顧問は少しだけ口元を緩めた。
「結論から言う。 お前はセンターで使う。来週からレギュラーだ」
胸が熱くなる。
「それと……来年を見据えて、キャプテンの補佐を任せたい」
「えっ……私が?」
顧問は頷いた。
「お前は声も出るし、周りを見て動ける。
来年はチームの中心になる。今から準備しろ」
ミッチは返事をしながら、心の奥がざわついた。
(紅緒の稽古もあるのに……
バスケでも責任が増える……
時間が……足りない)
顧問は宝塚のことを知らない。
だからこそ、純粋に“バスケの選手”として期待してくる。
(……言えない。 宝塚のことなんて、絶対に言えない)
顧問の期待は嬉しい。
でも、その期待がミッチの胸をさらに締めつけた。
悩みながら家へ帰った。
ミッチは鏡の前に立ち、紅緒のセリフを口にした。
「これからの女子は自分の道は自分で決める」
声は自然に出た。
でも、その声の奥に“焦り”が混じっているのが自分でもわかった。
(私……どうすればいいの)
そのとき、胸の奥にふっと浮かんだ言葉があった。
「ミッチは……マリンカみたいだな。 小さくて、まっすぐで、強くて」
シュートのあの言葉。
(……そうだ。 私は、そんなふうに見られていたんだ)
マリンカの花は、
小さくても、広野にあっても力強く折れない。
(だったら……私も、折れない)
ミッチは深呼吸をした。
(宝塚も、バスケも、どっちも大事。 どっちも“私の夢”)
どちらかを捨てるなんて、できない。
(だったら……やるしかない)
ミッチはスケジュール帳を開き、
稽古と練習の時間を細かく書き込んでいく。
朝練の前に発声練習
稽古のない日はバスケに全力
バスケの試合前日は紅緒のセリフだけ
移動時間はストレッチ
夜は必ず体幹トレーニング
(全部やる。 全部やってみせる)
ミッチはペンを置き、鏡の前に立った。
「……私は、マリンカ。冬の季節も耐えて花を咲かせる」
紅緒の声でも、冬星の声でもない。
ミッチ自身の声だった。
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