第12章 揺れる心
数日後。
ミッチは音楽学園のレッスンで、ふと気づいた。
(あれ……脚が軽い)
開脚の角度がいつもより広がっている。
ジャンプの着地が安定している。
先生にも言われた。
「小林、最近動きが良くなったね。何か始めた?」
ミッチは思わず笑った。
(ブラジル体操……効いてるんだ)
ある帰り道。
ミッチは偶然しっちゃんと一緒になった。
「しっちゃん、あのね」
「ん?」
「ブラジル体操、ありがとう。すごく効いてるみたい」
しっちゃんは驚いたように目を見開いた。
「え……俺、何かしたっけ」
「しっちゃんがやってるって、シュートが教えてくれたの。
「そっか……よかったな、ミッチ」
しっちゃんは静かにそう言った。
しっちゃんと別れた後。
夕日に染まる宝塚大劇場の屋根を遠くに眺めながら、ミッチは一人、妄想の渦に飲み込まれていた。
「……これって、まるで『はいからさん』じゃない」
彼女の頭の中では、華やかな大階段のフィナーレが幕を開けていた。
「まずは少尉。それはもう、**シュート(佐伯)**しかいないわ」
あの爽やかな笑顔、静岡の名門から来たエリート、そして何よりピンチの時に私を助けてくれる騎士道精神。私がバレエの柔軟性で悩んでいた時、ぶっきらぼうに「ブラジル体操」を教えてくれたあの姿……。
少尉は、いつも私の目の前で道を切り開いてくれる。
「でも……忘れちゃいけないのが、しっちゃん。彼はまさに編集長だわ」
知的な瞳。いつも本を読んでいて、チームの「頭脳」として一歩引いたところからみんなを見守っている。シュートが私に教えてくれた「ブラジル体操」だって、元を辿ればしっちゃんの知恵。
「私が道に迷ったとき、そっと正しい知識を授けてくれる。少尉のような華やかさはないかもしれないけれど、あの包容力、そして時折見せる鋭い指摘……。
私を支えてくれるのは、この知的な編集長なんじゃないかしら?」
「そして、この二人の間で揺れ動くじゃじゃ馬娘、花村紅緒……それが私、ミッ!」
夢(宝塚)に向かって一直線に突き進みたいけれど、恋のハードルも高すぎる。 シュートの熱いシュートに胸を撃ち抜かれたい気もするし、しっちゃん(編集長)の冷静なパスに導かれたい気もする。
現実のミッチ: 「……なんてね。一人で何考えてんだろ、私」
ミッチは顔を赤らめて首を振った。
「今は二人とも、私の大切な『相棒』だけど……」
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