疑惑
「東野社長、今までお世話になりました」
「これから、どうするつもりだ?」
「生活保護でも受け取って何てことも考えたけど、まだ考えてないよ」
「だったらこれ受け取れ」
「私は貴方に頼らないって決めてるからそんなのいらないよ」
「後で労基(労働基準監督署/ろうどうきじゅんかんとくしょ)にチクられても困るからな。養育費じゃなくて退職金です。こちらこそいままでありがとうございました」
そう言って純也から退職金を受け取った。それにしては随分多い気もするけど私はそれを冬史郎の養育費として受け取った。彼に頼らないって決めたけど普通に貰ってしまった。新しい仕事探さないとなぁ。
「ところで愛華」
「何?」
「俺達の事星にバレてないよな?」
「その内バレると思うと早いうちに話そうよ」
「絶対話すなよ言ったら余計喋りたくなるか...」
「...白石さんの子供の顔、何か私の子にそっくりですね」
「いや、そんなはずは...」
「白石さん、私に何か隠してませんか?」
「実は、いつかは離さなければいけないと思っていましたが、私と貴方の夫東野純也は前に結婚してました」
「ちょっと冗談は止めてください、私怒りますよ!」
「いいえ、今のところは無いです。お腹大きいですね、お子さん二人もですか羨ましいですね」
「信じてもらえないのも無理はありません、ですか、事実なのです」
「そうだとして、白石さんの子供が純也との親子だという証拠はあるんですか?」
「いいえありません、今から作ります」
「DNA鑑定するんですか?」
「はい、後で書類お渡ししますよ。後、誤解しないで欲しいのが純也は浮気してません。私はあの人に捨てられたんですよ」
「前にそんな事いってましたね...」
「ごめんんさい...」
「ことらこそカッとなってしまってごめんなさい」
「ではさようなら」
私は、純也と共に病院でDNA鑑定に行った。念のため自分も受けた。もう分かりきってる結果だけど星さんが納得してない様子だったのでこの際はっきりさせることにした。この男は最初嫌がっていたけど。私が説得してやっと来てくれた。
「これがDNA鑑定の結果です」
「そうですか、この書類はお返しします」
「持ってなくて良いんですか?」
「後で彼に問い詰めますよ。それにしても白石さんみたいな良い人を手放すなんてもったいないですね」
「良い人なんてとんでもないです、私は悪魔ですから」
「悪魔、ですか...そうは見えませんけどね」
「結果として純也と離婚してしまいましたから」
「そうだ、これから仕事どうするんですか?」
「そうですね、アルバイトでもいいですけど人の下で働くのは性に会いませんし、新しい旅行代理会社作ってまた一から始めようかなぁなんて」
「そうなるとライバル同士になっちゃいますね」
「そっちの方がやりがいあって楽しいですから!」
流石に純也の会社と同じ地区に事務所は構えるのは気まずいので潰れたコンビニを改装して新たな旅行会社が誕生した名前は『白石旅行代理株式会社』である。ところであの男は妻の星さんに激怒ってわけではないけど問い詰められたそうだ。
「愛華、俺とやり直そう!」
「ちょっと何?私とあなたはもう、終わったんだよ!それにあんた星どうするつもり?また捨てるの?」
「捨てるって?お前は俺を否定するのか?!」
「帰ってよ!警察呼ぶよ!」
「それがお前の答えか!」
その瞬間体全体に強烈な電圧が拡散した。ふと気づいたら無機質なコンクリートの空間に拘束されていた。見回すと隣に星さんも同様の状態になっていた。
「目が覚めたか」
「あんたこんなことしてただで済むと思ってんの?」
「うるせぇな!お前は俺の事が好きでしょうがないんだろ?」
「何馬鹿なこと言ってんの?勘違いすんなよ!」
「...この雌犬がぁ調子に乗るなよ!」
「いや、止めて!」
「嫌だね俺の心の苦しみをお前らもとことん味わえ!」
その言葉通り私と星さんは素っ裸にされたと同時に冷たい水が掛けられた。真夏とはいえ寒く感じる。寒いし恥ずかしくて頭がおかしくなりそう。純也に突然自身の柔肌を触られた。昔だったら良いけどこの状況ではただの拷問だった。とここまでは夢だった。




