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第6章 騎士団からの追放決定

 翌朝、俺が宿屋の食堂で朝食を取っていると、ティナが慌てた様子で駆け寄ってきた。


「レイジ様! 大変です!」

「どうしたんだ?」

「騎士団から呼び出しがありました。至急、本部に来るようにって……」


 ティナの表情は心配そうに見えるけど、俺には何か別の感情が混じっているのが分かった。


(呼び出し? 昨日の件かな)


「分かった。一緒に行こう」


 俺たちは急いで騎士団本部に向かった。

 本部の建物は朝の光に照らされて威厳を放っているが、中に入ると重苦しい空気が漂っている。


「風間レイジ、ティナ・アルベルティア。会議室に入れ」


 衛兵に案内されて入った会議室には、昨日の副団長を含む幹部たちが険しい顔で座っていた。

 ガルバスの姿は見えない。


「座れ」


 副団長が冷たい声で言う。

 俺とティナは指定された椅子に腰掛けた。


「昨日の件について話がある」


 副団長が資料に目を通しながら話し始める。


「ガルバス前団長の件だが、彼は重傷を負い、今後の騎士団活動は不可能となった」

「重傷? そんな大げさな……」


 俺が口を挟もうとすると、副団長が手を上げて制した。


「右手の骨は粉砕、左足首も複雑骨折。精神的なショックも相当なものだ」


(あー、思ったより効いてたのか)


 俺は内心で苦笑する。

 だが表面では心配そうな顔を作る。


「大丈夫なんですか?」

「命に別状はない。だが、問題はそこではない」


 副団長が俺を睨む。


「君の力は危険すぎる。このまま街に置いておくわけにはいかない」

「危険って……正当防衛だったじゃないですか」

「正当防衛? 笑わせるな」


 別の幹部が口を挟む。


「君の力は明らかに異常だ。一歩間違えれば、街の人々に被害が及ぶ」

「そんな……」


 俺は困惑した表情を作る。

 だが内心では、この展開を予想していた。


(やっぱりこうなるか。まあ、予想通りだな)


「よって、我々は決定した」


 副団長が立ち上がる。


「風間レイジ、貴様をこの王国より追放する」


 会議室に重い沈黙が流れた。


「追放?」

「そうだ。今日中に街を出ろ。二度と戻ってくるな」


 幹部たちの表情は厳しく、もう決定事項らしい。


「でも、僕は何も悪いことしてません」

「悪いことをしていないだと?」


 副団長が声を荒げる。


「君の存在自体が脅威なのだ! あんな化け物じみた力を持った者を野放しにはできん!」


(化け物か。まあ、間違ってないけどな)


 俺は内心で苦笑いする。


「仕方ないですね」

「え?」


 俺があっさりと受け入れたので、幹部たちが戸惑った。


「そんな風に思われてるなら、いても居心地悪いでしょうし」


 実際、俺にとって騎士団なんてどうでもよかった。

 その時、ティナが突然立ち上がった。


「待ってください!」

「ティナ?」

「私も一緒に行かせてください!」


 会議室がざわめく。

 幹部たちが驚いた顔でティナを見つめていた。


「何を言っているんだ、ティナ君」

「レイジ様についていきたいんです!」


 ティナの声に強い意志が込められている。


「私、レイジ様に憧れているんです。あんなに強くて、優しくて……」


 ティナが俺を見つめる。

 その目には、まるで崇拝するような光が宿っていた。


「だが君は騎士団員だろう?」

「私なんて、どうせ落ちこぼれです。ここにいても邪魔なだけ」


 ティナが自嘲的に笑う。

 だが俺には分かる。

 この子、全部計算してる。


「レイジ様となら、きっと本当に強くなれます!」

「ティナ……」


 俺は驚いたフリをする。

 だが実際は、この展開を面白く思っていた。


(この子と一緒なら、確かに退屈しなさそうだ)


「君、本気で言ってるのか?」


 副団長がティナに確認する。


「はい! 私の意志は固いです!」

「だが、追放された者について行くということは……」

「分かってます。私も事実上の追放ですよね」


 ティナが覚悟を決めた表情で言う。


(この子、本当に何を考えてるんだろう)


「ティナ、いいのか? 俺なんかのために……」

「レイジ様の『なんか』なんて言わないでください」


 ティナが真剣な顔で俺を見つめる。


「レイジ様は素晴らしい方です。私はそれを知ってます」


 その言葉に込められた意味を、俺は深く考えた。


(素晴らしい? 俺の何を知ってるって言うんだ?)


「分かった……一緒に行こう」


 俺がそう答えると、ティナの顔がパッと明るくなった。


「ありがとうございます!」


 副団長がため息をつく。


「まったく……若者の情熱には困ったものだ」

「いつまでに出ればいいですか?」

「今日の夕方までだ。それまでに準備を整えろ」

「分かりました」


 俺とティナは会議室を後にした。


 外に出ると、ティナが俺に振り返る。


「レイジ様、本当にありがとうございます」

「こっちこそ、君がついてきてくれて心強いよ」

「えへへ……」


 ティナが嬉しそうに笑う。

 だがその笑顔の奥に、何か計算的なものを俺は感じていた。


(この子、絶対に何か企んでる。でも……面白そうだ)


「さて、準備をしようか」

「はい!」


 俺たちは並んで街を歩き始めた。

 だが俺は知らなかった。


 ティナの頭の中では、既に詳細な「計画」が組み立てられていることを。

 そして、自分がとんでもない『同類』と行動を共にすることになったのだということを。


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