芋令嬢
喜んで!
それでは再構成版――**第三章「屋台はじめました~売れない、燃える、猿が暴れる~」**をお届けします。
今回は、港町での初営業を丁寧に描きつつ、ヴァネッサの心の揺れや家族のやりとりも厚めに盛り込んでいきますね。
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第三章:屋台はじめました ~売れない、燃える、猿が暴れる~
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◆ 開店前夜、家族会議
「それでは明日、いよいよ《芋屋リュミエール》の開店ですわね」
古ぼけた木箱を囲んで、家族は“なんとなく”整列していた。
食卓代わりの板の上には、母の手作り――
いや、密林式製法のバナナ芋ジャムが載せられている。
「このジャム、芋なのかバナナなのか、食べてるうちにわからなくなるわね……」
「それが“発酵の妙”よ。正直、冷蔵庫が欲しいけど」
「……母様、やっぱり食べてるうちに腹が熱くなる気がしますの……」
「安心して。密林では問題なかったわ」
「その“密林基準”が不安ですわ!」
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◆ いざ、開店
朝、潮風と共に焼き台に火が入る。
「いらっしゃいませ~。本日は、“蜜の香りの芋”と“少し焦げた芋”の二種ございますわ」
焼き芋に種類はない。焼け具合で強引に分類しただけである。
だが、ヴァネッサは真剣だった。
「これはリュミエール家、再興の火……!絶やしてはなりませんわ!」
(ミナ:でもその看板“焦げても恋は焦げない”ってセンス、ちょっとどう?)
「静かにしてくださる!? 今は恋より芋が大事ですのよ!!」
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◆ トラブル1:客が来ない
一時間経過――客、ゼロ。
「……おかしいですわね。焼き芋、香りは十分に漂っているのに」
「姉上、たぶん、潮風が芋の香りを全部“イカ干しの香り”にしてるんです……」
「いえ、わたくし、イカ干しに負ける気はしませんわ。焼きます、もっと焼きます!」
ヴァネッサ、怒りの芋追加投入。
火力、過剰に。
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◆ トラブル2:燃える
ボウッ!!
「きゃっ!? 火が……!? も、燃えすぎですわ!!」
「密林式は薪を追加するたびに“倍焼き”になるのよ」
「倍焼きって何ですのその恐ろしいルール!!」
「姉上! 猿のシモンが! 火の周りでバナナ回してるうう!」
シモン「キーッ!!」
(※器用にバナナを串焼きにしている)
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◆ トラブル3:魚粉屋の洗礼
そのとき、隣の屋台から香ばしい風が吹いた。
「魚粉! 焼きとうもろこし! イカ飯三点盛り~!」
港町では名の知れた屋台《魚粉天国》の女将・マルタが、風上から香りで攻撃してくる。
「この町で焼きたいなら、“潮と炭の真剣勝負”ってことを覚えな!」
ヴァネッサ「……魚粉で勝負!? あなどれませんわね……!」
(ミナ:魚粉ステッカーつくろ。今すぐ)
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◆ でも、笑った子がいた
そのとき。ひとりの子どもが、焼き芋を受け取って、
「おいしい」と言った。
ヴァネッサは目を見張る。
それは王都で何よりも得られなかった――
“率直な称賛”だった。
「ありがとう……ございますわ。お代は、いりませんの。今日は、記念ですから」
(ミナ:うん……そういうとこ、嫌いじゃないよ)
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◆ エンディング:はじめの一歩
「……港町は、思ったより、冷たくなくて……温かいですね。風は強いけれど」
「火を守れば、あとは“焼けるまで待つだけ”よ」
母の言葉に、ヴァネッサは微笑む。
「焼けるのを待てる女……それがわたくしの、第二の人生ですわ」
(ミナ:いや絶対、もうちょいバズった方がよくない? “焼けるまで待て”ってどんなSNS戦略よ!?)
「……次回から、試食ポップでも作りましょうかしら」
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次回予告:第四章「王都にバレた!芋令嬢再炎上」
焼き芋の噂、王都へ!
「港町で芋を焼いている、あの令嬢は……まさか……」
王都社交界がざわつく中、ヴァネッサに再び“呼び出し”の知らせが――!