没落転生ざまあ
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第一章:転生して秒で没落、そして港町へ
「これが……異世界……!」
少女・ミナは目を覚ました瞬間、すべてを悟った。
ふかふかのベッド。絹の寝間着。銀細工のティーポットに、天蓋つきのベッド。
そして――鏡に映る、金髪碧眼の超絶美少女。
「やった……!ようやく……ようやく来たあああああああ!!」
「わたし、異世界転生ッ!!しかも公爵令嬢!!」
ごく普通のオタク女子だったミナの悲願。それは――
「転生して貴族になって、イケメン捕まえて、ざまぁされる前に成り上がる」こと。
転生したのは、王都でも有名な公爵家“リュミエール家”の令嬢、ヴァネッサ=リュミエール。
おしとやかで品のある、まさに“ヒロイン枠”の存在だった。
だが。
ミナ「この人生、わたしが楽しませてもらいますね――前の人格さん!」
そして、数ヶ月後――
公爵家、崩壊。
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◆ やらかし記録:ミナver
・紅茶パーティーで「水道水のがスッキリしてる」発言 → 上流貴族ドン引き
・婚約者に「見た目はいいけど中身がチョロいのキモい」と爆弾発言
・舞踏会でDJを始め、貴族に“イモビート”を叩き込む → 退出命令
・社交界でLINEの概念を広めようとして“黒魔術疑惑”
・貴族投資詐欺にホイホイ乗って家計を吹っ飛ばす
・結果、王都追放。公爵位剥奪。
ミナ(当時):「あれ?思ってたのと……ちょっと……違くない……?」
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◆ 現在のヴァネッサ視点(港町・夜逃げ後)
「……そして、気づけばこうなっておりましたのよ」
月明かりの下、ヴァネッサ=リュミエールは、干からびた芋を見つめていた。
泥のついたドレス。風の抜ける小屋。家族と一緒に、港町の片隅でひっそり生き延びている。
「“転生して勝ち確”などと……ええ、本当に……夢のようでしたわ」
(ミナ:えっ、ちょっと、まだ根に持ってる? まあまあ、これから巻き返そ!な?)
「黙っていてくださる?」
母クラリッサは釜の火を焚き、父アルフォンスは詩集を書き、
弟レオンは何かをこぼして転んだ。
そしてヴァネッサは――
かつて“乗っ取られた”自分の人生を、もう一度取り戻すために、芋を焼く。
「おしとやかに、でも確かに。もう二度と、燃えすぎたりしませんわよ」
(ミナ:でもちょっとは燃やそ?バズってこ?)
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次回予告:
第二章「焼き芋と屋台と、ちょっぴりの復讐心」
港町での焼き芋商会、始動!
弟(元・兄)レオンの地味すぎる戦力、母のバナナ熱、父の謎ポエムが暴走する中、
令嬢ヴァネッサの“焼き芋商人”としての第一歩が始まる。
ミナの囁きは止まらない――
「芋にラベル貼ろ!名前つけよ!“焦げすぎナイト”とか!!」