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崩壊地球

 ここ最近のこと。街の亀たちの間で甲羅を石や花で飾る甲羅装飾が流行っていた。流行を受けて、甲羅装飾屋というお店も急激にその数を増やした。一匹のとある亀も甲羅装飾屋を営み、五匹の子供たちにも時々手伝わせていた。


 ある日、店主のもとへわがままな客が訪れてきた。「俺は神になるんだ」と豪語するその客は「金ならいくらでもある」と言って、この地球の誰にも負けないくらい煌びやかで山盛りの派手な装飾にするよう、店主に要求した。


 注文を受けた店主は、小さな草花から高価な宝石まで、今ある素材のほとんどを使って、客の甲羅をとにかく派手に装飾した。十分に豪華な装飾であったが、客はまだ不満な様子。


 そこで店主は、地味な小石、若い葉っぱ、美味しい果物、冷たい氷、綺麗な花など店にある限りの素材すべてを使った。さらに豪華になったものの、それでも客はまだまだ物足りないと言う。しかしこれ以上材料がない、店主はとうとう困った。


 その時、五匹の子供たちが現れた。そして、派手な装飾がされた客の甲羅を見て、怒った。


「僕の宝物の小石が」

「私の宝物の葉っぱが」

「僕のおやつの果物が」

「私のおやつの氷が」

「私の大事な花が」


 それぞれの好きなもの大事なものを勝手に客の装飾に使われたのだ。


「みんな、ごめんね。お客さんがわがままで、材料が足りなくなったんだ」


 店主は子供たちに謝り、新しい素材を調達してくるよう子供たちにお願いした。



 しばらくして、新しい素材を持って帰ってきた子供たちは、客をさらに飾りつけた。新しい素材の中には、珍しい鉱石や果物、生きた虫や魚や鳥も混じっており、村人と交渉して貰ったという。


 その時の客はもはや、一つの地球のような巨大な大地を思わせる容貌になっていた。その背中には川のように水が流れ、魚も泳ぎ、虫や鳥も止まっている。しかしそこまで来ても、客の要求は止まることを知らない。流石の子供たちもとうとう疲れた。


「はあ、もうだめだ」

「そうだよ、これ以上無理をしたら地球がだめになる」


 そんな子供たちにも構わず、客はもっと飾りを乗せろと要求し続けた。しかたなく子供たちはみずから飾りとなるべく、客の甲羅の上に乗った。


「まだまだ地味だ。だが、金は払わん」


 客はまたわがままを言い始めた。


「えっ、あれだけ欲張ってそれはケチだよ」


 子供たちの一匹が怒るが、客は「その逆だ」と否定した。


「最終手段として、今持っている金すべてを飾りに使うんだ」


 客はそう言って、所持金すべてを自身の甲羅に飾った。その飾りはまさに黄金色の輝きを放ち、それと五匹の子供たちが乗ったこともあり、その甲羅はさきほどよりもさらに多色な地球らしくなった。しかし客はまだまだ欲張った。


「まだまだ足りん。もっと飾りが欲しい」


 客はさらに飾りを求めて、ついに暴れはじめた。ところが直後、山のような盛りすぎた装飾のせいで体勢を崩し、客は倒れてしまった。しばらく客は起き上がれず、使われた素材はそれぞれ元の場所へ返されたという。



おわり

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