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第1話 学校へ行こう

この作品にご関心頂き、誠にありがとうございます。

本作品はフィクションです。

また、作者が用語の誤解釈、間違った表現・使用などを引き起こす可能性もございますが、作者の創作物ということで、何卒ご容赦いただきたく存じます。

僕は、幼少のころから、空き箱や厚紙で張りぼての剣を作ったり、宇宙船を作って遊ぶのが好きだった。小中学校の頃は、プラモデル作りに夢中だったが、ただ作るだけではなく、パテで肉付けしたり、プラ板を追加して、オリジナル形状にしてみたり、オリジナル武器を作ったりして楽しんだ。とにかく、一からオリジナルで形を作っていくのが好きだった。


僕が中学を卒業した直後、地球は滅んでしまった。北方の国の侵略、半導体やリチウムの利権争い、ウイルスの蔓延による先行き不安等、色々な要素が絡みついた結果、各国の首脳は、自国の核のスイッチを押すことを選んでしまったようだ。僕の家族、友達、周りの人、重要文化財、ビルや家屋、船や工場、お寺、大仏さま、そして僕自身、地球上の全てが、炎で焼かれてしまい、何も残らなかった。


地球から、次元も距離も遠く離れた惑星『マギナル』では、大きくわけて3つの種族、人族、魔族、魔獣族が生息していた。


人族は、通常がほぼ人の姿の種族で、人間、エルフ、魔族とのハーフの人などが該当する。大量の魔力を保有しても、体つきが人のままの人は、人族だ。この惑星に存在する全ての生物は、大なり小なり魔力を保有しており、人族も例外ではない。


魔族は、大量の魔力の保有により、顔や体つきが変化してしまい、人族と共存することを望まなくなった人々が分離独立して、自らを魔族と称している集団のことを差し、独立した領土、国家を保有している。オーク、ゴブリン、リザードマン、ラミア等が該当する。因みに、悪魔は、神話上の存在とされている。魔力は、伝説上は悪魔の力とされているが、実際は天然由来の力とされているらしい。また、悪魔のような姿をした存在は、魔人とよばれている。魔族イコール悪魔ではなく、秩序と理性をもって生活している。悪人もいるが、そこは人族も変わりはない。


魔獣族は、この世界での動物のことといってほぼ間違いなく、高度な理性・感情・意思をもたない、野生の生物のことをさす。犬、猫、鳥、ダンジョンに出没するモンスターだけでなく、理性を失ってしまった人族や魔族が政府等からモンスター認定されてしまうと、魔獣扱いにされてしまう。人族といえども、過度の魔力の保有の果て、魔獣と化してしまった例は、過去数件確認されている。


以前の世界ではお金が重要だったが、この世界では、お金よりもむしろ、魔力に対する向き合い方が、生きていく上で高い重要性を占めている。高い魔力が高度な魔術・スキルを使っていく上で必要になる。強い魔獣を狩るのにも、インフラを整えるのにも、病気や怪我の治療にも、その他、製造・物流や交通、教育・娯楽に至るまで、生活の隅々で魔力が必要になる。


逆に言えば、魔力を駆使すれば収入に繋がるということだ。しかし、魔力が沢山あれば良いということではなく、マジックアイテム等、他からの要因で、自己の器を超えた量の魔力保有は、魔獣化の促進に繋がるし、短寿命化の可能性もあるらしい。また、高い魔力自体が贄となって、魔獣を引き寄せるトリガーになるので、常に身の危険に晒されることも考慮しなくてはならない。


僕は、こんな世界でひっそりと暮らす、人族の農家の三男坊『アムス』として、再び生を受けることができた。しかも、早い時期に、以前の地球での記憶も思い出すこともできた。異世界転生というやつだ。


実家が農家ということもあり、幼少より野良仕事の手伝いをよくやっていた。その中でも、前世での手先の器用さを生かして、農機具の手入れを積極的にやっていたことが親から認められ、三男で土地を継げないということもあり、将来は町へ出て、職人として生きていくことを勧められ、自分でもその道を歩もうとおもった。


この世界では、実家を継がない者は、冒険者として生きていくパターンが多い。だが僕には、手先が器用以外には特に取り柄的なものはないので、職人になる方が手堅いと親も思ってくれたのだろう。そこで、16才になった僕に、町の職業訓練学校への入学を勧めてくれて、当面の学費も準備してくれた。


こうして僕は、家を出て、自立への一歩を踏み出すこととなった。町まではかなりの距離があるので、到着すれば、下宿先を探さないといけないし、親からもらった資金だけでは半年もつかといった位なので、何かアルバイト的なことも始めないといけない。あと、何よりも学校でやっていけるのかという不安もある。村では寺子屋的な教育を受けただけなので、この世界での学校がどういったものか、いまいち予想出来ないでいる。前世での記憶や経験もフル活用してやっていく必要があるだろう。


山道をひたすら歩く。まだ町まではかなりある。すると、とあるパーティーとモンスターとの戦闘に出くわした。パーティーは男子1人女子2人なのに対して、モンスターは、オークが十匹と、ビッグオークが一匹の群れで、パーティー側がかなり苦戦しているようだ。僕はパーティー側の加勢に加わる。


お手製の木製の弓で、遠距離からビッグオークを攻撃する。3本の矢を連続して放つと、全て命中し、1本は運良く目に当てることが出来た。これで奴の攻撃精度はがた落ちするはずだ。


フゴッ、ピギィィィ!


ビッグオークはこちらに気付いて走ってきた。しめたとばかり、僕は森の中に逃げ込む。上手くいけば、視野が狭くなっているし、頭に血が登っているので、木に激突したりするのではないかと期待する。矢傷からの出血も期待できる。


ドシイィィン!


案の定、大きな木の根に足を引っかけたビッグオークが、転げて他の木に頭から激突し、気を失っていた。僕は、念のため、手製の木の剣を抜いて、奴の心臓をひと突きして絶命させた。


フゴッ、フゴッ!


他のオーク達が、怒りの余りにこちらへ走ってくる。空間が狭い方が、体が小さい人族にとっては有利だ。

上手く木の影に隠れて攻撃をかわしながら、一体ずつ確実に仕留めていく。村でよく戦っていた山ゴブリンに比べるとHPが低いのか、一撃で倒せるので、上手く戦闘をこなせている。オーク達も、少しずつ仲間が減っていることに気付き、怖じ気付いたのか、戦闘への執念を欠きはじめている。そこへ、先ほどのパーティーの人達も加勢してくれたので、何とかオーク全員を倒すことができた。


「すみません。薬草や回復アイテムをもっていませんか!? ヒーラーの娘が怪我をしてしまって。」

「それはいけないですね。薬草を何個か持っていますから、すぐ治療しましょう。」

パーティーの人に案内されて付いていくと、僕と同い年位のヒーラーの女の子が倒れている。腹部からかなり出血しており、彼女は意識を失っている。


僕は、彼女の服を切って、負傷している所を露にすると、すぐにありったけの薬草を、もんで柔かくし、彼女の負傷部分に押し当て、持っていた布で固くしばった。

「取り敢えず、応急処置しました。すぐここを離れて、近くの村の教会へ向かいましょう。」

パーティーの男子は、先程の戦闘の恐怖で縮み込んでしまい、もう一人の女の子はクスンクスンと泣き出してしまいそうだ。


「皆さん、しっかりしてください! まず、この人を無事に教会まで運ぶのが第一です! 急いで運ばないと、本当に死んでしまいます。この人は大事なご友人ではないのですか? あなた方は無事だったのなら、この状況を打開して、この人を救うことを何よりも考えるべきです。躊躇する時間などありませんよ!」

負傷した彼女を背負うと、彼らを叱咤して、先へ進んだ。


幸いな事に、近くに小さな村があり、そこの教会で彼女を診てもらう運びとなった。この世界では、ヒーラーが病気・怪我を直す役割で、ヒーラーの就職先の一つに教会が挙げられるのだ。


治療をお願いしている間、僕達は宿泊先として、村の小さな宿屋に向かった。僕はそこで彼らと別れて先に進むつもりだったが、彼らからの感謝ということで、宿代を奢って貰えることになった。


夕食は、彼らから一緒にどうと誘われたので、共にすることにした。

「今日は助けてくれて本当にありがとう。本当に助かった。俺はタスクっていうんだ。戦士を志している。」

「アタシは、サリュー。魔法使いになりたいんだ。サリって呼んでね。それで、怪我した娘がマユっていって、ヒーラー志望してるの。」

「僕はアムスと申します。アムと呼んで下さい。僕も職人になるために、町の職業訓練学校に行く途中でした。」

「えっ!」

二人が驚いてしまっている。僕、なにか変な事言った?

「何でそんなに強いのに、職人なの? 最初、ベテラン冒険者の人だと思ってたのに。背も高いし、体つきもしっかりしてるし。お年はおいくつなのですか?」

サリが聞いてきたので答えた。

「今年で16になります。僕の村では、跡継ぎでない子供は16になると家を出て独立する習わしでして。」

「えーーっ!」

また驚かれてしまった。

「俺達と同い年なんて、くそー、相当ショックだ。」

「アタシたち、こう見えても、町の学生クラスでは一番強いパーティーだったの。それで、冒険者育成学園に入学するために、都に向かっていたんだぁ。」

「地図上では、山道を行った方が早そうだから、あの道を選んだんだけど、あんなに強いモンスターが出るとは思わなかった。」

「もう少し山奥を進むと、山ゴブリンとか、デスバードとか出ますよ。」

僕が説明すると、彼らは黙り込んでしまった。


「俺達、調子に乗っていたのかもしれない。」

「そうね。どんな敵でも倒せるって思ってたもんね。」

急に反省会に変わってしまった。

「まぁ、町まででよかったら、僕も同行しますよ。」

二人が急に明るくなる。

「ありがとおぉぉぉ!」

そんなとき、宿屋に一人の少女が入ってきた。負傷していたマユだった。血が付着していたローブも、新しい物に交換したらしい。

「楽しそう…仲間に入れて欲しい…」

「マユ! もう大丈夫なの? よかったぁ!」

サリがマユに抱きついて泣いていた。タスクもうんうん頷いている。

「処置して頂いた方の対処が完璧だったから、傷も後遺症も全く無いとのこと…」

マユは、大人しい物静かな娘みたいだ。

「マユ、この人はアムっていって、マユやアタシ達を助けてくれたんだよ。アタシ達と同い年だって、凄いよねぇ。それで、町までだったら、一緒に来てくれるらしいよ。」

サリが紹介してくれたので、僕も挨拶した。

「僕は、アムスっていいます。アムと呼んで下さい。」

「…アム、さま…」

ん、様付け?


「アムさまは、治療の為とはいえ、服を破って、私のお腹の辺りとか、乙女の見ちゃいけないところを、見てしまった… 私、もうお嫁に行けない… だから、アムさま、私をお嫁に貰って欲しい… 不束者ですが、どうぞよろしく…」

「!」

僕も含め、一同目が点になってしまった。

「ちょっと、アム君になんてこと言ってんのよ! ごめんね、アム君。 きっとこの子、回復したてで、疲れてるんだと思う。 多めに見てあげて。」

「は、はい。」

サリに静止されてジタバタするマユは、まだ抵抗を続ける。

「ちがう、サリ。 私は本気! 初めて、いいと思える人に出会えた! アムさま、何番目かの妻でもいい、愛人でもいいから、私のこと、見て欲しい!」

マユの告白と言っていいのか、全力の主張に僕も思わず赤くなってしまう。


サリは、マユの口を塞いで言った。

「御免ね、アム君。 一晩たったら、冷静になるだろうから、気にしないでね。 さぁ、マユ、もう寝よう。」

「あっ、アムさまぁ!」

サリはアムを引き摺って、その場を辞した。

タスクも気にするなとのことなので、僕も自分の部屋に戻り、明日に備えた。


次の日、宿の外で皆を待っていると、まずマユがモジモジしながら現れた。

「昨日は、御免なさい。 ちょっと冷静じゃなかった。 でもね、お嫁さんにして欲しいのは、本当だから…」

マユはそういうと、僕の手をギュッと握りしめた。僕も思わず照れてしまい、何も言えなかった。

「もう、朝からいちゃいちゃしないで! アム君も、いやって言っていいんだからね!」

サリに見つかったので、マユは、さっと手をどける。

そこへタスクも現れ、

「朝から熱々だな! なら行くか!」

と号令が掛かったので、皆が歩き始めた。


道中、何度かモンスターと遭遇したが、特に事なきを得ず、凌ぐことができ、その後無事、町に到着した。僕は、そのまま職業訓練学校へ向かうことにしたが、皆も付いてきている。


「ありがとうございます。お蔭で無事、目的地にたどり着けました。」

皆に感謝の礼を述べるが、三人はここを離れようとはしなかった。

「俺達は、ここで、アムが出てくるのを待つぜ。」

「そうね。そうする。」

「私も待ちます!」

もしかしたら、僕の入学祝いを催してくれるのだろうか?優しい人達だなぁ。僕はとても嬉しい気持ちになって、

「じゃあ、待っていて下さい!」

と言って、走って校内に向かった。


アムが離れたあと、三人は会話を続けている。

「職業訓練学校では、入学したあと、スキル鑑定ってのをするらしいんだ。」

「うんうん。」

「それで、その人に何が向いてるのかを調べて、その道の勉強をしていく、という学校らしい。うちの召使いが言ってた。」

「それで?」

「アムの奴は、あれだけ強いんだから、スキルも戦闘系ばっかりみたいな流れになって、都の冒険者育成学園にでも行きなさい、みたいなことを言われるんじゃないかと、俺は睨んでいる!」

「なるほど、じゃあ、都までまた一緒に行けるね!良かったね、マユ。」

「私とアムさまの愛の絆…」

「いや、違うって…」

「でな、そうなったら、俺達4人でパーティー組んで、学園デビューしようぜ。アムが居れば鬼に金棒だ!」

「あんた、ずる賢いわ!」

「アムさまをそんなことに使わないで!」

「でも、課題で難しいダンジョンの攻略とかさせられたりするなら、やっぱりアムみたいな奴を早めに引き入れることも、パーティーを強くしていくには、必要なことだと思うぞ。」

「確かにね!」

「アムさまは正義!」

「だから、アムが出て来たら、誠心誠意で、今後も一緒にいるよう、皆でお願いしようぜ!」

「情けないけど、その方が楽しそう!」

「私、アムさまと寝てもいいからって言ってお願いする!」

「コラ! 学生の本分は勉強です!勉強!」

「ごめん。先走った…」

「それにしても、マユは本気でアムが好きになっちまったんだな。」

「うん、一生ついてく!」

「あーあ、もうだめだこりゃ…」

「俺とサリで、マユがイケないことしないように注意しないと、アムがマユのこと真剣嫌がり出したら、アムと同じパーティーどころじゃなくなるぞ!」

「うん、気を付けないとね。」

「何でそんなこと言うの!何でーー!」

「マユ、大人になって…」

三人があれこれ騒いでいると、アムが暗い顔をして戻ってきた。


「どうしたんだよ、アム?」

タスクが聞いてきたので、僕は答えるしかなかった。

「皆の期待を裏切って申し訳無いけど、ここの訓練学校じゃ教えられない人材だから、都の冒険者育成学園に行けっていわれたんです。」

僕はがっかりして答えると、タスクがバンバン肩を叩いて僕を励ました。

「そっか、でも、そんなに残念なことじゃないぜ!だって、俺達だって、その冒険者育成学園に行くんだぜ。せっかくの縁じゃないか。これからも是非よろしく!」

「そうよ、皆でがんばろうよ!」

「マユはなんとしても、アムさまについていきます。」

皆が握手しようとしてくれているが、僕はその手を取ることが出来ない。

「皆さん、ありがとうございます。でも僕、お金が無いんです。そんな都の学校なんか行けっこありません。」

僕はガクッと膝をついた。涙が出そうでつらい!でもタスクはニコニコして僕を立たせて言った。

「そんなアム君に朗報です! 学園の入学費はタダです!」

パチパチパチ

三人が拍手する。

「そうなんですか?」

僕は飛び上がった。

「ただし…」

「ただし?」

タスクが勿体振る。

「月謝が高いらしい。そこで、アム君に提案があります。」

「なんでしょう!」

僕は身を乗り出して聞いた。職業訓練学校に行けない以上、なんとしてもその冒険者育成学園に行かないと、親に顔向け出来ない。

「俺達のパーティーにアム君も入って貰おう。そのかわり、パーティーで稼いだ金は、アム君の月謝に充てよう!これでどうだい?」

「いいんですか?」

「いいよ! でも、絶対抜けさせないよ! いいかな?」

「はい、よろしくお願いします!」

僕は即答し、三人と握手した。

「よし、パーティー結成だ!」

「アムさまぁ!」

マユが抱きついてきて、サリが一生懸命引っ剥がそうとする。


まあ、何はともあれ、よろしくお願いします!

この作品をお読み頂き、誠にありがとうございます。


もしご関心頂けましたら、よろしければ、ブックマーク、いいね、ご評価など頂ければ、大変有難いです。


次回も何卒ご贔屓に!

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