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魔法が日常となった世界で、今日も地球は廻る。  作者: おみたらし
2章_2 コウキ始動編
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80話 造られた使命

「面会の時間や……と言っても、豚箱ブチ込んだのはワシが相手やけどな」


「……何の用ですか」


 ユウヤ達が搬送されたタイミングを見計らったかのように、再びシュウタロウはヒカリの前に現れた。乱雑に作った檻を膝屈みで壊しながら尋問する。


「……言うてみぃ、昨日変な夢見たやろ? そして、その内容を今でも鮮明に覚えておる、そのはずや」


「……知りません、そんなこと! それより早くここから出し――」


 ヒカリは錬力術でシュウタロウを攻撃しようとするが、シュウタロウはノーリアクションだ。むしろ、ヒカリへ強く迫ろうとしている。


「……ワシも見とんねん。シャボン玉みたいな虹色の光放った何者かに、洗脳されるかのような。そしてまるで自分達は、人間ではないと言われたような」



ーーーー

『ここは……いつもの場所やな』


 眠りについたはずのシュウタロウは、ふと目覚めると雲に囲まれた無人島のような場所に立っていた。波が打ち付ける砂浜であるが、その先に見えるのは水平線というよりは金色に輝く空と雲である。

 シュウタロウは辺りを散策することもなく、その場で棒立ちして黄昏れていた。すると、目の前に虹色の“何らかの存在”がふわっと現れた。脊椎反射的にシュウタロウは頭を垂れる。


『……我が母体。お久しゅうございます』


『人間界での働きはどうだ? もちろん動いているな、あの目的のために……』


『……はい。今は鳥岡ユウヤという者の動向を探っております』


『少しずつ崩していくつもりなのだな……それと、できれば分身ナンバー20の躾もしてくれないか? 今は琵琶田駅から降りて少し歩いたところのカフェで生活費を稼いでるらしい』


『あぁ、行ったことあります……確かに働いてましたね、この前』


『そうか……それでは頼むぞ、分身ナンバー14。あともう1つ……』


『何でしょうか』


『お前は人間ではなく《《神の遣い》》なのだ……歯向かえばいつだって抹消できる! 分かっているよな!』


『グアアアアアアア! 夢なのに、夢なのに頭が割れる……!』


『それでは頼んだぞ。ナンバー14、人間名七田シュウタロウよ……』



『……ハッ! ハァ、ハァ、ハァ……またアレ、見てもうたわ……でも、行くしかないよな。だってワシは……』

ーーーー



「……!」


「おぉーっと、図星みたいやな。それで発狂したんやろ、さっき。自分の使命がどうのこうのって」


「や、やめてください! やめて、やめて!」


「実際さ、この世界はメチャクチャや。特に錬力術が人間に発見されてからは……豊かさという絵の具で彩ったつもりのキャンバスは、実はあらゆる色でベチャベチャに汚れていくだけやった。それを真っ白に戻す……それが役目」


「やめてやめてやめてやめて! やめてってば、うるさい!」


 ヒカリは再びヒステリックに陥った。どうやら、ヒカリもおかしな夢を見たのは間違いなさそうだ。ヒカリは号泣し、もはやまともに話すことはできなさそうだ。それでもシュウタロウは話すのをやめない。


「ワシも昔からそういう夢見てきたんや。最初は怖かった、学校とかで周りの人間に相談しても気味悪がられるだけやったからな。一番怖いのは体験したワシやっちゅーのに」


「うるさい、うるさいうるさいうるさい! うるさあああああい!」


「だから、ワシはもはや諦めた。その使命のために生きることにした。今でも定期的にその夢見るんやけどな、でもヒカリはんは昔から特に《《強くその呪縛に囚われてた》》」


「いやあああああああああああああああ!」


「……もうさ、その使命とやらに従う方が楽と違うか? だってワシらは……”産まれた“のではなく……“造られた”、あの方の……作品みたいな存在なんやから」


「ギャアアアアアアアアアアアア!」


 ヒカリは耳をつんざくような泣き声を響かせる。シュウタロウは淡々と話そうとするが、気付けば言葉がところどころ詰まり、不意に涙までこぼしていた。

 ヒカリは大声をあげた反動で息を荒らげ、咳き込みながらうずくまる。シュウタロウはそれを見てヒカリを捕らえた穴へと降り、肩に手を置き、


「……一旦離れよか、また人が来たら困る」


 と呟き、どこかへとテレポートするように、はたまた光のように消えていった。

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