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魔法が日常となった世界で、今日も地球は廻る。  作者: おみたらし
2章_2 コウキ始動編
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74話 漆黒に生きる者

「……一切ダメージを受けていない、のか?」


「あぁ。こいつはアンちゃんの常識を遥かに越えた領域に立っとる」


「……さっきのホリズンなんとかってのと関係が――」


「だからそれは禁忌や!」


 シュウタロウは蛇のような目つきでユウヤを睨みつけた。思わず腰を抜かしたユウヤを見かねてか、ため息をついてシュウタロウは続ける。


「……ま、アンちゃんはそのうち分かる、いや望んでなくとも関わらないといけんくなることや。それまでに錬力術高めるなりしとけ」


「あ、ああ……」


「まぁ、とにかく! 一旦こいつはこうせんとなぁ」


「お、おい何する気だ!」


 シュウタロウは床を突き破り地面に部屋状の大きな穴を開け、そこにヒカリを落とす。そして大破したテーブルと椅子の鉄製の脚を拾い上げ、作った部屋を乱雑に塞ぐように床に突き刺した。そこには、洞穴式の牢屋が完成した。


「ここでしばらく反省してもらわないとな、罪人には」


「は、はぁ……」


「まぁワシはもう帰るで。悪夢見て頭痛いんや」


 そう言い残すとシュウタロウは駅に向かって歩いて帰っていった。それを見届けているとようやく救急車が到着し、栄田を搬送していった。栄田はもはや何か話す元気も残っておらず、終始無言で救急車に載せられた。


「……無事でいてください」


 カエデが手を組み祈るような仕草を見せる。どうか助かってくれ、そうユウヤも思いながら空を見上げていると、向こうの方から2人組の男がこちらに向かって歩いてきた。


「それにしても……ボスは本当に人使いがベリーバッド! ここでユウヤを始末しないといけないなんて馬鹿丸出しデース!」


「何寝言をほざいている! ……パークの無念を晴らすためには……手を漆黒に染め上げてでも……ヤツを地獄へ葬らなければ……」


「オー、ケンジ……その名前出すのはズルいデスヨ……」



「な、何だあいつらぁぁ!?」


 2人の雰囲気は異質だ。これまで戦ってきたチーム・ウェザーの刺客と同じ、大きなアクセサリーを付け、何より会話内容が悪役の《《それ》》である。その上、片方についてはユウヤは見覚えがあった。


「……また来やがった、サム……と中二病みたいな知らないヤツ!」


「サム? ユウヤの知り合い?」


「あぁ。自己中バトルジャンキー野郎だ……正直関わりたくねぇ」


「えぇ、大変だねユウヤも……」


「我の耳は地獄耳……全部聞こえている!」

「失礼デースネ、許さないヨ!」


「い、いつの間にっ!」


 サムとケンジはユウヤ、カエデ、イチカの前に到着すると、すぐさま殴りかかってきた。不意を突かれたのか、カエデとイチカはダウンする。


「キャッ!」

「うおおっ!」


「いきなり何だよ、サムと……誰か!」


「オー、覚えてくれていたとは! ありがたいデース」


「むしろ忘れられねーよ、そのキャラだしつい最近顔合わせたばっかだろ」


「……ま、今回もユウヤを倒すつもりはないデス、ケンジがどうかはアイドンノーだけどネ」


「……はぁ、そっすか」


「我は……全員倒すのみ……その前座として横の2人を葬ったのだか――」


「まだ死んですらねぇよ、ボケ!」

「べ、別に死んでない!」


 イチカとカエデは同時に立ち上がった。そして戦闘に備えて構えを取る。それを見てケンジはフッと2人を鼻で笑いつつ、両手を背中の後ろで組みながら口を開く。


「……面白い。ならば2人同時にかかってくるがいい」


「おいカエデ! こいつナメてんぞ! わからせてやろうぜ、一緒にな!」


「……はい!」


 イチカとカエデは同時にケンジに殴りかかるが、片腕でそれぞれの攻撃を防がれてしまう。負けじとさらにどんどん追加攻撃を仕掛けるも、イチカに対しては左半身のみ、カエデに対しては右半身のみで全ての攻撃を受け止められる。


「くそっ、舐めプしやがってぇ! 今だけだからな、そんなことできるのもォ!」


「やれやれ……2vs1はどう見てもハンデなんだ、もう少し楽しませてほしかったところだ」


「そ、それなら……お望み通りです!」


 カエデは一度間合いを取ったかと思うとすかさず背後に回り込み、大きな種子を作り上げて勢いよくケンジに向かって放つ。


「スナバコノキ!」


 風を切り裂き、今にも爆発しそうな勢いで砲丸のような種子がぶっ飛んでいく。ケンジはそれに背を向けながらイチカの攻撃を受け続けている。


(よし、これならいけるはず!)


(カエデのあの技……組手試合の時に見た、かなりの高威力を誇る技だ! ここはウチが気を引いておけば!)


 イチカとカエデは確信した。これでいきなりケンジをノックアウトできると。ユウヤもこの戦いを見ながらそれを確信していた。だが、現実はそう甘くはなかった。


「……汝らは今、勝ちを確信しているな? 特にギャラリーのユウヤ」


「あ? どういうことだ!」


「……先に礼を申し上げる。ありがとな、マッサージを」


 ドカアアアアアアン! カエデの必殺技がケンジの背中にクリティカルヒットした。激しい爆発を起こし、その音はもはや地球をぐるりと回りそうなほどだ。さらに、その衝撃でケンジの周囲半径1.5メートル程の道路が陥没した。木々は風穴を開けて倒れ、マンホールの蓋も大破した。標識やガードレールは根本から倒れ、辺り一面はグチャグチャだ。だが、黒煙の中からはすまし顔のケンジが現れる。そして再び話し始めた。


「ヒビキ班にアズハ班。アイツらと我等コウキ班は格が違うのだ。例えるならば……赤子と横綱」


「……カッコつけてるところ悪いがオレらも《《横綱》》の自信がある、特にオレとイチカは既に聖霊とやらの力を手に入れたからな」


「……うぬぼれが」


「何?」


「まぁ……汝らの聖霊は正直どうでもいい……なぜならば……」


 突如ケンジは上を見上げた。そこには両手、両足に熱気を纏い、もはや巨大な陽炎と化したイチカが真上から攻撃を仕掛けようとしている真っ最中であった。


「どうせ今から……髪の毛1本すら残らず、始末されるからだ!」


「な、んだって――」


 ケンジはハエを手ではらうように軽くフッと動かしてイチカを吹き飛ばそうとする。が、その瞬間ケンジは《《もう1つ》》陰があることに気付いた。


「ッ! てめぇは!」


「まさか、私のこと忘れてた!? いくよ、ホウセンカアアアアアア!」


「忘れてただと? オレがうっかりの忘れん坊に見えるのか、バカにしやがって……!」

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