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魔法が日常となった世界で、今日も地球は廻る。  作者: おみたらし
2章_2 コウキ始動編
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70話 特殊錬力隊

 ユウヤがカフェ前に到着すると、そこには人だかりができておりパトカーも何台か停まっていた。そして、入口の前には栄田マスターが横たわっていた。


 ユウヤは慌てて栄田を介抱しようとすると、警察に止められてしまった。


「キミ! 危ないからやめなさい!」

「ほら下がって下がって! 救急車もすぐ着くから!」


「違うんです! 知り合いですし、オレの友達に怪我を治せる人が……」


「危ないから! 中にいるのは《《凶器》》、いやもはや《《狂気》》に満ちた兵器を持つ人間!」

「間違いなく死ぬから、ここは特殊錬力隊に任せて!」


 ユウヤ達が揉めていると、カエデとイチカが落ち着けと言いながらこちらに駆け寄ってきた。


「ユウヤー! もう来てくれたんだね、実は……」


ーーーーー

「こちらサンドイッチになります! ご注文通りでよろしかったでしょうか?」


「あぁ、バッチシよ! ありがとな!」

「ヒカリちゃん、制服すっごく似合ってるよ!」


「えへへ、ありがとうございます!」


「色川さん、かなり仕事にも慣れてきたみたいですね」


「はい! この仕事、とっても楽しくて――」


「ほうほう、それは良かったですね。じゃあ、今度はこの仕事を…… 色川さん? どうしましたか?」


「……なさい」


 ヒカリは手に持っていたトレーをぱたーんと床に落としてしまった。そして、ただ一歩も動かず空虚な目で天井を見つめている。


「大丈夫ですか? どこか体に異変はあり――」


「ごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさい。私の体が勝手に動くんです! “あのお方”がこうしろと命令してくるんです。居場所は元からここじゃなかったんですっ!」


 ヒカリは涙を流しながら、壊れたロボットのようにガタガタと両腕を持ち上げる。その両手からはゆらゆらと炎が煌めき出した。


「オイ! 何かやべーぞ、これ!」

「マスター、金はここに置いてく、お釣りはいらねぇ!」


「お、おいどうしたんだよ!?」

「ヒ、ヒカリちゃん落ち着いて!」


 イチカとカエデ、そして周りの客もパニックを起こす。それを差し置いてその炎はどんどん、どんどんと大きくなっていく。栄田は慌ててヒカリに駆け寄る。


「落ち着いてください! 一体何に操られ――」


「ごめんなさい、アポロンランチャアアアアアアア!」


「ぐっ、“断崖絶壁”!」


 栄田は慌てて大きな岩壁を作り出し、客と自身を守る。火球が岩壁に衝突すると爆音と共に岩と炎は消滅した。


「思い出したんです、私達に定められた運命。私はそのために《《製作》》させられたただのロボット!」


「落ち着いてください……ロボットなんかじゃなく、立派な人間――」


「ロボットだったんですよおおおおおおおおお! 私自身、こんなこと望んでいなかった! だけど、だけど! 人や物は全て、何かしら存在している意味や使命がある!

 例えば灯りが人々の生活を照らすためにあるように! 免許が技術の証明になるように! 国を豊かにするために王がいるように! 私の使命は、使命は……あああああああああああああ!」


 ヒカリは突っ伏して号泣を始めた。葛藤と葛藤がぶつかり合うように、人目を気にせず大声で喚いている。栄田はゆっくりとヒカリに近づき、屈んで背中を擦ろうとした瞬間だった。

 突然、栄田の手に強烈な圧力が降り掛かった。そしてだんだんとそれは五臓六腑にまで侵食し、内側から崩れ落とすかのように栄田を襲った。


「ゔっ……なぜ……」


「ハ、ハハ……ギャハハハハハハハハハ! アアアッハハハハハハハ! 地に墜ちた神々、《《ホリズンイリス族》》の使命を今! 叶えなければならないのだぁ! ギャハハハハハハハ!」


 ヒカリは意味深なことを叫びながら発狂している。それを見た栄田は、急いで逆に避難を促す。


「逃げて、ください……皆さん……」


 栄田は力を振り絞ってドアを破壊する。すると一目散に中にいた客が続々と飛び出してきた。ヒカリはそれを見ると再び炎を作り出す。床を這うように栄田もカフェを抜け出し、“断崖絶壁”でドア枠を塞いだ。


 中からは狂乱状態の叫び声が響く。栄田は手で出血を抑えながら、体力を浪費しないように横たわる。

ーーーーー


「私も回復はしてみたんだけど、なかなか傷が深かったみたいで……少しマシになったぐらいにしか」

「急に暴走するもんだからホント驚いたぞ! 聞いたこともない文明かなんかの使命がどうとか叫びだすし!」


「そうだったのか……とにかく裏口から入って、ヒカリを止めに行こう!」


「うん!」

「ああ、行こ――」


「ちょーーーっと待たれいぃっ!」


「だ、誰だ?」


 声のする方を振り向くと、いつの間にか重装備の車両から8名ほど、ヘルメットとチョッキを身に着けた屈強な男が降りてきた。それに、何やら火器のようなものを身に着けている。


「おお、ユウマ見てくれよ! あれが本物の……えっと……なんちゃらかんちゃらだ!」

「ユウマじゃなくてユウヤ! ……それにしても生では初めて見るな」


「と、特殊錬力隊だ! おい皆、助けが来たぞー!」

「オー!」

「やったー!」


 カフェの外に避難した人や野次馬達はその《《ヒーロー》》の到着を喜んだ。どうやら、皆かなり彼らのことを頼りにしているようだ。


「並べえええええええっ! 陣形“雀蜂”っ!」

「ハアアアアアアアッ!」


 5人は指定の陣形を組み、「突撃」の合図とともにカフェへと突入した。



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