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魔法が日常となった世界で、今日も地球は廻る。  作者: おみたらし
2章-1 アズハ班進撃編
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65話 あの世への受け流し

「お前みたいなヤツには、今テキトーに思いついた技で始末するのがオレなりの礼儀だぜ! 自らのために、他人の命をお粗末に扱うヤツなんてな!」


 イチカに入り込んだフェニックスはかなり自信があるようだが、それでもユウヤは警告する。


「おいフェニックス、こいつは街中の人々の命を奪うことすら厭わない! 火突ひーととか武霊蒸ふれいむとか、得意技で一気にやっちまえ!」


「やーーーだね、弱火でじっくりいたぶってやるのさ、死なない程度に」


「チッ、ワガママバードが……」


「まぁまぁ、生き急ぐなって! 今日のタイトルは『無差別攻撃女に舐めプしてみたpart1』だああああああ! バズり間違い、ナッシング!」


「ったく……」


 フェニックスの傍若無人っぷりにユウヤが呆れているのを横目に、フェニックスはイチカの腕をギュッと組ませると、雑巾から水が絞り出るかのように紅い光が漏れ出した。アズハもその謎の光を警戒する。


「何をする気よ、バカ女!」


「これか? これはただの太陽の凝縮さ。長い長い時を超えて燃える炎のね」


 その光はまるで太陽のように大きく、そして丸くなり、イチカの頭上に持ち上がった。まるで地上にも太陽が生まれたかのような輝きと熱気を放っている。

 そして、異変はすぐに起こった。アスファルトがジリジリと音を立てて、まるで沸騰しているかのように暴れだす。家の外壁が少しずつ溶け始め、草木が一瞬にして枯れ、土や砂が燃え始め、陽炎が霧のように揺らめく。にも関わらず、ユウヤが感じるのは「あつい」だとか「苦しい」などではなく、快楽そのものだ。あまりの環境で狂ってしまったなどではなく、羽毛布団に包まれているかのように安らかな気持ちになる。その様子は、まるで地獄にいながらも天国を錯覚しているかのようだ。


「オレがこいつに入り込んでいるからこそ、これほどまでの技を使えている! 今の技は……永炭成エターナルとでも名付けよう」


「な、何をぺちゃくちゃと……」


 そしてその刹那、アズハは赤い光に包まれて動けなくなっていたのだ。


「う、動けないっ! 一体これは……」


「凄まじい熱に酔いしれなぁ! 燃えろ、さぁ永遠にぃ!」


 イチカの指からパチンと音が鳴った瞬間、アズハは《《静止した爆発状》》の炎に包まれた。中からはアズハのうめき声が聞こえる。


「ガァ……グァァ……アァ……」


「ヒヒヒヒヒヒィ! さらに追加攻撃しちゃうぜぇ、」


「……とでも言うと思ったかしらぁ? 《《死になさい》》、炎よ!」


 アズハがそういった途端、どんどん炎はブラックホールに吸い込まれるように歪んで消えていく。そして現れたのは無傷のアズハであった。


「オ、オレの炎が消えるなんて!」


「永遠に続くものなんて無いのよ? 命も、物質も現象も」


「うるせぇ、その例外がまさにオレなんだがなぁ!」


 イチカは翼を広げてアズハに攻め寄る。そのスピードはユウヤまでもを驚かせてしまうほどだ。


「な、なんて速さ……もしかしたらオレよりも!」


「オラオラオラァ! この肉体は近距離戦が得意みたいだからなぁ、今度はこっちでいたぶってやらぁ!」


 ズバババババァン! 連打、連打、ものすごい連打がアズハに襲いかかる。パンチ、キック、フック、タックル、エルボー。何種類もの攻撃がまるで打ち上げ花火のように次々とアズハに襲いかかる。しかし、アズハはびくともしていない。


「なぜだ、なぜ効かない!」


「やれやれ、私はその攻撃を《《あの世に連れていける》》ってのに……」


「どういうことだ、それは!」


「……こういうことよ!」


 アズハは再び指を鳴らす。すると頭の周りの霧が広がったかと思うと、その中からバシン、ドカン、ダダダァァンとイチカが放った連打の《《音が響いてきた》》のだ。


「解説するとね、あの世という異界にその攻撃自体を連れて行った。そのおかげでその猛攻はアタシへのマッサージにすらなれなかったのよ」


「……へぇ、やるじゃんか」


 いつもの住宅街が、今日も奇妙な戦場と化した。


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