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魔法が日常となった世界で、今日も地球は廻る。  作者: おみたらし
2章-1 アズハ班進撃編
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59話 異常、非情、そこに邪魔者登場

「……カラゲ、オムビ、マシジ! 何をしてるのよ! この能無し、恥さらし、いいとこ無しいいいいい!」


 アズハはかなり機嫌を悪くしていた。送り込んだ3人の使いが誰一人として成果を上げられなかったからだ。吸いかけのタバコを何十回も何十回も踏みつけて消火し、拳を振り上げ吸い殻を灰皿へと叩きつける。その衝撃で灰がテーブルに撒き散らされると、さらにアズハは喚くように叫ぶ。


「ほ、本当にかたじけないでござる! ユウヤ殿、かなり頭も切れるようでして!」


「そ、それに噂に聞いていた“追い込まれないと真価が発揮されない”弱点も克服してきているみたいです! いや、その弱点の水準すらかなり高いところへと到達している可能性が!」


「それにさぁ、ヤバいのは他にもいるのよぉ? メイっていうヤツなんだけど。ママ本当にびっくりしちゃった」


 3人はそれぞれ弁明する。マシジはそうでもないが、オムビとカラゲはかなりアズハに対して萎縮している。上目遣いでアズハの顔色をうかがい、何度もペコペコと頭を下げる。

 それでも機嫌が治らないアズハは棚に置かれたぬいぐるみを地面に叩きつけ、


「ギャアアアアアアア! ふざけんじゃないわよ、クソユウヤアアアアアアアアア!」


 と叫ぶ。3人がそれを見て言葉を失ったことに気付くと、流石のアズハも優しくそのぬいぐるみを拾い上げ、


「痛かったよね。ごめんね、ヒビキくん。好きだよ、本当に好き好き好き好き好き! 同じ洗剤で洗ったから実質ヒビキくんの匂い、似た服着させたからもはやヒビキくんなのに! ごめんね、大好きだよ」


 と頬に擦り付けたぬいぐるみを労ってベッドに優しく置いた。そして添い寝するような形になり、頭を撫でながら何やら独りでぶつぶつと話している。


(うわっ……気味悪いを通り越して恐ろしいぜ)


(もはや愛なんかじゃないでござる……もはや執着そのものですな)


 ぬいぐるみとの会話を終えるやいなや、アズハは再び目の色を変えてドン引き状態のカラゲとオムビに命令を下す。


「オイ無能共! 《《アレ》》、取ってこい! あとユウヤの家を教えろ、私が直々にヒビキくんのためにアイツを消してやるんだから……!」


「は、はいっ!」

「アレ……? はい、《《アレ》》でござるね!」


 2人はアズハから逃げるように倉庫室へと向かって走った。



「あぁ……それにしてもアズハ様のご機嫌をとるのは疲れちまうぜ」


「人使いが荒いというか……困ったお方でござるね」


「最近は特にそうだもんな……ヒビキ様が「()()()()()()になってからかなり気が立っている」


「狂愛度合いにも磨きがかかったでござるならね……ユウヤ殿との戦いの前後で」


 カラゲとオムビが世間話《アズハの愚痴》をしながら倉庫を探し漁っていると、オムビが金属探知機のようなものを見つけた。


「これでいい……でござるかね?」


「あぁ、それだろうな。テレポート兼人物探知機。これでユウヤ達のところへ戦いに行くつもりなんだろう」


「あぁ……毎度行き当たりばったりなお方でござるね」

 

 テレポート兼人物探知機。チームの科学者であるブティフールが開発したチーム・ウェザーの秘密兵器である。

 特定の人物の顔写真などの情報を登録すると、その者の近くまでテレポートできる。さらにそれだけではなく、任意の場所から場所までの移動手段としても利用できる。要注意人物が生まれた際にいち早く排除するために作られた極秘のマシーンだ。

 そんなマシンをカラゲとオムビがを2人で担ぎ上げ、再びアズハの所へと向かった。


「アズハ様! 持ってきました、これで合っていますでしょうか?」


「例の探知機でござる! これでユウヤ殿の所へ行くつもりでござるか?」


「……来い」


「「え?」」


「カラゲ、オムビ! お前らも来い、挟み撃ちでヤツの首を持って帰んだよおおおおお!」


 アズハがカラゲとオムビの肩を乱暴に掴み、ユウヤの家の前にテレポートしようとしたその瞬間であった。

 突然、それを阻止するかのようにアズハの部屋のドアがバターンと開いたのだ。


「だ、誰よ! ノックくらいしなさ――」


「悪いけどそれはさせないよ、氷室アズハ!」


「……ア、アンタは!」


 アズハの目の前に立ちはだかったのは、何とカナであった。

 アズハはカナに起きている異変にすぐに気付いた。アクセサリー、もとい洗脳装置が歪な形に変形しているのだ。チームへの忠誠心が解けたのだ、アズハはすぐに勘付いた。


「……その指輪、ネックレス。こうなったらもう味方同士ではないみたいね」


「味方? 別にアタイはアンタを元々仲間だなんて思ってない。ただ、その異常なヒビキへの執着心とチームへの忠誠心、そして洗脳装置を打ち砕きに来ただけ」


「ヒーロー気取りってところね……余計なお世話よ、水をささないで」


「ヒーロー? あぁそうよ、アタイはこれからそうなるつもり。悪者をまとめて地獄へ送る、ヒーローにね」




 

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