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魔法が日常となった世界で、今日も地球は廻る。  作者: おみたらし
1章-4 決戦・ヒビキ編
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37話 望まぬ力

「お前らは! えっと、ポワソと……誰だ?」


 ユウヤが指差したのは見たこともない男。ユウヤが怪訝な顔をしていると、その男はニヤリと笑いながら話し始めた。


「オレの名はネンミ! サムとの挟み撃ち作戦を命じられてここに来たのさ」


「は? え? やっぱオレのこと狙ってんじゃねえか、サム!」


 今度はサムの方へと振り返るユウヤ。だが、当のサムはきょとんとした顔をしている。その様子を見てネンミという男は憤怒する。


「おい、何だその顔は! 本当にいい加減にしやがれ、いつもサボってばかりいやがって!」


「だってボク、別にこのチームの理念に共感してません」


「はぁ……本当はダメなんだけどよぉ、お前、一度致命傷を浴びたいようだなぁ?」

「そうだぞサム! この前アタイのことも邪魔してきたしなぁ、一度痛い目見さしてやらぁ!」


 ポワソもネンミに同調する。今にも喧嘩が勃発しそうなこのムード。もはやユウヤは置いてけぼりだ。しかし……


「……ユウヤ、ここは一旦見ていて欲しいデース」


 サムが耳打ちする。どうやら2人と戦うつもりらしい。ユウヤは理解が追いつかない。なぜ味方同士で戦う? 1vs2で勝つつもりなのか? そもそも、なぜそこまでしてサムは自分のことを守ってくるのか。全てが謎でしかない。

 でも、どうやらサムは本気で2人と戦うつもりのようだ、ユウヤは一旦下がって様子を見ることにした。いや、そうせざるを得なかった。なぜならば……


「おいサム、覚悟しやがれぇ!」


 まず仕掛けてくるのはネンミ。懐から水筒を取り出したかと思うとその中身を空中に勢いよく散布する。そして指を鳴らしたかと思うと、その水飛沫は一瞬にして凍りつき、歪な形の武器を作り出した。


「ヒヒヒ、さぁあの世で醜態晒してこいやぁ!」


 ネンミが飛び出してくる。両手に武器を持ち、その先端で突き刺さんとばかりにどんどん接近してくる。ただ、サムはそれを見ても棒立ちするばかりか、今更ストレッチを始めた。それを見てネンミは激怒する。


「ナメてんじゃねぇ、ごらぁあああ!」


 ネンミはその武器をフルスイングする。このままではまともに攻撃を喰らうぞ、何をしているんだ一体! ユウヤがそう思った矢先、サムの目つきが鋭く変わった。そしてただ一言、呟いた。


「ナメてるのはアナタでしょう、そんな子供騙しで」


「う、嘘だろこいつ……」


 気付くとサムはその氷の武器を片手で掴み、簡単にへし折ってしまった。そしてその氷をまるでアイスを食べるかのようにかじって噛み砕いてしまった。


「暑くなって来ましたから、コールドなおやつはベリーグッド、ネ」


「な、何だとサム……ふざけてたら本当に首をへし折――」


「そんなに怖いこと言わないでクダサーイ、あとよければこのアイス、よければど――」


「いらねぇわボケェ! 知覚過敏なんだよオレはぁ!」


「オー、そうでしたか……ならばポワソ、一緒にティータイムにしませ――」


 サムが笑顔で前を見ると、そこにポワソの姿はない。どこだ、どこに行ったんデス? 周りを見回るサムの肩に1本の腕がポンと置かれた。そして、その腕は獲物を捉えるワシのように、肩を硬く掴んだ。


「こっちだよサムゥゥゥ!」


 ポワソの声とともに、ザバーンという波のような音が聞こえてくる。そしてその瞬間、ポワソの腕には大きな大きな水の塊のようなものが宿っていた。


「こ、この技は!」


 ユウヤはその技に見覚えがあった。かつてポワソに奇襲された時、自らの息の根を止めようとしてきた技。いきなりこの技を使うとは、本気でサムを仕留めようというつもりなんだろう。思わずユウヤは叫んでしまう。


「お、おい! それは!」


「セイレーン・サイレン。ガールフレンドの憤怒より見飽きちゃいましたデース!」


 サムはポワソの腕も掴みながら優雅に氷を食べている。それどころか、今度はポワソが作り出した水を手ですくい、そのままゴクリと飲んでしまった。


「なっ、お前!」


「この国は意外にも暑いデース! だから水分補給は大事、大事ネ」


「うるせぇ、なら二度と水分補給しなくていいようにしてやる」


「オー、いと恐ろしデース」


 ポワソは一旦ネンミと横並びになる。そして同時にニヤリと不穏な笑みを浮かべた。


「水を生み出せるポワソと、その温度を変えられるオレ。直属の上司が違うのに、あえてこのコンビを組んだ理由がおわかりか?」


「ンー? このコンビ……メイビー!?」


「あぁその通りさ、大量の熱湯に氷塊まで作り出せるのさ、スタミナの限りなぁ!」


 ポワソが叫んだとともに空中にどんどん水の何かが形成されていく。そしてそれは一瞬にして氷付き、空中に巨大な氷山が形成されたのだ。

 1912年、4月。とある豪華客船は氷山に激突して多大なる事故を起こしてしまった。大自然は時に人間へ牙を向き、無惨にも命を奪ってしまうのだ。

 そして再び大きな氷山が、人類へとその本性を見せ始めたのだ。流石のサムも身構え、半歩後ろに下がっている。そして、ただ一言だけ呟いた。


「彼女タチ、禁断の領域に足を踏み込んでしまっていたとはネ、想定外デス」


「禁断の領域って?」


 ユウヤは問い返す。


「……聖霊。それにしてもあのお方も非情過ぎネ、ただの下っ端にここまでさせるなんて」


「せ、精霊って!」


「だってよく見てくだサーイ! ポワソの背中辺りからは魚のような尾、ネンミからは肉食動物の牙のようなもの! 本人達も意図せず聖霊と結ばれ、そしてその力を使っていますネ」


 ……確かに、いつのまにか2人の体からは尾や牙のようなものが生えていた。これが力の根源だとするならば、それはユウヤにも心当たりがある。あの夢に何度も出てくるペガサス。その類なのだろうか、と。

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