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魔法が日常となった世界で、今日も地球は廻る。  作者: おみたらし
4章 現代事変〜伍〜
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196話 恐ろしき景色

 光は儚く散っていった。そこにはただ、倒れたヒビキと息を荒くしながらも攻撃を耐えたロドリゲスが膝をつきながら立っているだけであった。


「ハァ、ハァ、ハァ……ビックリさせやがって、この出来損ないが……!」


「ヒビ……嘘だろ? 嘘だよな……!?」


 ヒビキのまさに「捨て身」の攻撃。大きくロドリゲスの体力を削ったのは間違いないだろうが、それでも倒し切ることはできなかったのだ。


 カエデを安全なところへ避難させていたので、どんな戦いを繰り広げていたのかはユウヤには分からない。ただ察することができたのは、ヒビキはもう、助からないということだけだ。


 複雑な気分である。ほんの数週間前まではお互いがお互いを憎んでいた関係だし、ヒビキは絶対許せない存在だったのに……ヒビキも操られし駒の1つであることを知り、気付けば神の一族やら自身の生まれなどが明らかになって……この1か月弱はあまりにも濃すぎた。


(ヒビキ。東雲、ヒビキ……そんな姿になっちまって……)


 ヒビキの表情は「無」である。いや、もはや最後の感情を読み取るのが困難と言うべきかもしれない。まるで落雷により焼き焦げた樹木のように、もはや塵となってそこに横たわるばかりのヒビキ。だが、不思議とユウヤは最後の思いが何となく分かった。気が狂いそうな程に続いた、連日の知人の「死」。


 ……気付けば、ユウヤの身体は勝手に動いていた。


「コンパウンド発動、ペガサス、そして……ケルピーッ!」


「オ、オイッ! 待て、待てって! 話し合おうじゃないか、確かお前はジェフリー、我らと同じ一族の――」


「……うるせぇよ、底の底まで落ちていけ」


 もはやユウヤは戦うことに違和感など感じなくなっていた。戦って、戦って、また戦って。戦うのが日常になってしまったこの頃、ユウヤは本来、普遍的な大学生であることなど既に忘れてしまっていた。


「……待て、待てって! そんなに破壊衝動を剥き出しにしちゃあ、オレは一体どうなっちまうんだよォ!」


「……さぁな? もう分かってんだろ? どうなるか、なんてさ……」


「ヒッ、ヒッ……ウワアアアアアアア!」


 ロドリゲスは情けない悲鳴を上げながら、フラフラになりながらも逃げようと試みる。何度倒れようと、ひたすらに、数センチずつでもユウヤから距離をとる。


(やめろよ……! 来るな、来るなよ鬱陶しい……いや、むしろオレが奴を"狩れば"いいんじゃねえのか!? そうだ

そうだそうだその通り! だって、オレも……!)


 ロドリゲスは逃げ惑いながらも、こっそり足元に力を込める。コイル鳴きのような音が、辺りに大音量で響き渡る。


(オレも……ホリズンイリスの末裔、いや、オレは四天王ッ! そうだ、何忘れてんだよオレ! 奴がホリズンイリス一族の習性で、怒りで力を増幅させられるなら! オレものうのうと下界で生きているヤツを憎めば! 力を振り絞れるじゃねえか……アハハハハハハハ!)


 ロドリゲスは最後の賭けに出る。ユウヤを返り討ちにする、一か八かの最後の作戦だ。もし自分が滅ぼうとも、ユウヤを道連れにできれば御の字! 地獄に落ちるなら引きずり込んでやるさ、地獄の底まで!


「ジェフ……いや、鳥岡ユウヤ……! 待ってくれよ、これ以上は……!」


「……あぁ、言わなくても分かるさ。お前はただの腰抜け、まだアパタイザー? とかのが悪の組織なりのプライドを持っていた。お前はダサい、だから恥かく間もなく終わらせ――」


「終わるのはお互い様だぜ! 最後の輝脚だ、地獄じゃ見れない明るさだぜ――」


「タイフーン・ストレート、千本ノック。じゃあな」


「ぐ、ぐ、ぐあああああああああああああ!」


 ロドリゲスの足掻きは通じることなく、突風の底へと消えていった……。

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