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魔法が日常となった世界で、今日も地球は廻る。  作者: おみたらし
4章 現代事変〜伍〜
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194話 キャパオーバー

 疾風迅雷から放たれる雷を吸収し、身体が大きく、大きく膨れ上がったロドリゲス。その変化にテンションが上がったロドリゲスは形勢逆転の狼煙をあげようとしたが、身体の中でどこかがブチッと壊れたかのように、その場から動けなくなってしまったのだ。


「そ、そんなハズが……! ありえない……! 神が! このようなハズがないのだ……!」


 時は21世紀中頃。まさに「現代っ子」のヒビキは何が起こっているのかすぐに理解できた。そして同時に情けなくなった。こんな無能にあこがれていた時期があるのか、と。


「……おい、ロドリゲス! オレにアンタを慕う気持ちなんて1ミリも残ってねぇ! 逆にオレは今! お前を便所のタイルのシミ並に軽蔑しているぜ!」


「トイレ、タイル……! 文明社会マウントなど通じぬぞ、今すぐお前の息の根を止めてや――」


「お前は今"風船"なんだ! 空気を入れてこそ自分の力を発揮できるが……入れすぎては破裂、つまりお前は電気をチャージするつもりが、疾風迅雷のあまりにも強大な力はお前のキャパを超えていたんだよ!」


「キャパ、オーバー……だと……」


 ロドリゲスは膝から崩れ落ちる。なぜ、この自分が人間や聖霊より力が劣っているのかと。例え相手が何者であろうと、下等の存在である人間や聖霊に負けるなど、ホリズンイリスの恥であり、あってはならないことだ。

 身体が動かなくとも、そんなことは許されない。許されないからこそ、ロドリゲスは這いつくばりながらもヒビキに近寄っていく。


「あり得ない、あり得ないのだ……! 我らの……誇りが……そんな小手先の術などに……!」


「小手先ィ? フフッ、こっちはこっちで大変なんだぜ? 少し気を抜けば……」


 その瞬間、疾風迅雷はロドリゲスに向かって駆け出した。何も命令は下してない、にも関わらず勝手にだ。


「暴れなければ気がすまねぇ! 雷網颱禍弾、今度は出力8%だあああああああ!」


「8%だと!? さっきが0.01だった、ということはその……!」


「800倍だぜ、"元"師匠さんよ。ただ、流石にそんなに暴れられちゃあ、この街全体吹き飛ぶ。だから……」


 ヒビキは疾風迅雷とロドリゲスを背後から捕まえ、自らも全力を振り絞りきる。


「まとめて自爆、オレもお前もこの疾風迅雷も! まとめて終わらせてやるぜ!」


「なっ!?」

「おい、お前がオレを呼び出したんじゃねえのか!」


「……これはオレなりのケジメなんだ。オレは思えば――」



――――――

『おおっと、驚かせて申し訳ありません。ただ、この講義は“あのお方”のご意向で……潰す使命にあります故』


 ……オレはユウヤ達の大学に赴き、かつての信念に従い大学を破壊した。その時オレを撃退したのはユウヤだった。


『おい、逃げるぞ! 早く!』


『ピンチってやつだな……だが! 抑えてみせる、オレがここで……!』


『ユ、ユウヤ! 何する気だ!?』


『喰らえ! 必殺・決め球、タイフーンストレートォォ!』


(な、何だこの威力はッ! 並大抵の人間レベルではない、もしかしたら……あの方々に並びうるッ!?)


 危険因子だった。誰がどう見ても、あのユウヤはオレ達、いや、今思えばホリズンイリスのクソ共にとっては早く消したい裏切り者だったんだろう。だからこそオレは部下に指示を出した。


『……いいか、お前ら? あの計画を進めていく上で、絶対に消すべき3人がいる。岩田タケトシ、月村カエデ……そして鳥岡ユウヤ、リサトミ大学に通う野郎だッ! 首を持って帰れた者には報酬をやる……その額なんと10万円だ、マンガが200冊買える。素晴らしいだろう!』


『マ、マンガが200冊も!? 欲しいやつ、全巻揃えられちゃうじゃん! ボク、一番乗りで行く!』


『10万円……魅力的! しかし、本当に上手くいくでごさるかね……?』


『それはやるしかないだろう! オレも他の幹部3人と話をつける! いいから消すのだ、1秒でも早くッ!』


 ……それでも無理だった。強かった、ユウヤ率いるチームは。そしてオレが満を持して倒しに行くも……結果は負け。そして気付けば洗脳は解け、奴らの仲間になっていた。

 許された、とは自分ではもちろん思っていない。だからこそ、自分なりにけじめをつけるのだ。あいつらの大事なものを奪ってしまったのなら、オレもそれなりの対価ってものを示さなければ……!


――――――


「オレは奪っちまった。突然、あいつらの大切なものを! だからオレは今更知人に遺言を残したり、やり残したことを済ませたりなどしない! さらなる破壊を防ぐためになッ!」


 ヒビキの身体が光と化していく。明るいはずの身体はシルエット状で、表情を伺うことはできない。


「……おい、戻ってきたぞヒビ……え? どうしたんだよ、何が起こって……!」


 カエデを安全な場所に避難させて戻ってきたユウヤは、突然の出来事を理解できない。だが、最後の力を振り絞ってヒビキはユウヤにメッセージを届けた。


「……すまねぇな、本当に」


「……おいよせ、離しやがれ、人間風情がああああああ!」

「……チッ、せっかく生まれられたのに役目も終わりかよ! ま、楽しかったしいいや」


「ヒ、ヒビキ? 自爆か、おい、待てええええええええ!」


 ユウヤの声をかき消すように、3人は明るい光に飲まれていった。


 

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