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魔法が日常となった世界で、今日も地球は廻る。  作者: おみたらし
4章 現代事変〜肆〜
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176話 奥野兄妹 その1

「おらっ! はっ! 喰らえ脚技ァ!」


「フンギャアアアアアアア!」

「ザ、ザコ如キニィィィ……!」


「ええい、一体どんだけ倒されれば気が済むってんだ! 武霊蒸ふれいむッ!」


「グギャアアアアアアアア!」

「ゴオオオオオ……!」


 S県の左端の方で、イチカとモニトーは虫の大群のようにわらわらと列をなして襲いかかってくる敵と戦っていた。操られし者達は元々の錬力術のスキルやフィジカルがどうであれ、まるでゾンビになったかのようにしぶとく、考えが通じなさそうな恐ろしい相手ばかりである。


 だが、1番の強敵はこのゾンビのような集団の指揮を取っている「聖霊・マンティコア」に乗っ取られし、名も知らぬ老人である。

 いくら自分達のほうが若いとはいえ、下手すりゃ2人まとめてお陀仏だ。


「おお、どんどん倒していくぞー!」

暴威留ほいーるのリーダーの名はダテじゃないぜ! このままやっちまえ!」

「イチカおねーちゃんも、そのお兄ちゃんも頑張れー!」


 ビルの屋上などに避難した市民からは2人を応援する声が響いてくる。また、イチカの率いる暴威留ほいーるのメンバー達も、逃げ遅れた人達をひとまず安全な場所へ送り届ける仕事を引き受けてくれている。イチカは決して、ここで負けることだけは避けるつもりだ。


「クソ……こうなったら奥の手、毒は毒をもって制するしか無い……!」


「マ、マイシスター? 一体何を言って……」


「ヘッ……アイツが聖霊とやらに操られて暴走するならば、こっちは聖霊の力を使って無双してやる! 出てこいフェニックス、力を貸せッ!」


 イチカは強気な言葉を並べるが、内心かなり焦っていた。なぜなら以前、フェニックスの力を制御しきれず、意識と身体をほぼ乗っ取られた経験があるからだ。


(大丈夫、ウチは完全に乗っ取られやしない。ただ今は強くならなければならない、多少のリスクを犯してでも……!)


「強くならなければならない……気に入ったぜ、その言葉を……って、んん!? ウチの口が勝手に動い――」


 まるで催眠術にでもかかったかのように、突然イチカの身体が浮遊する。そして全身は激しい光と熱に包まれ、翼を、尾を、そして燃え盛るオーラを纏い、激しく唸りを上げながら「降臨」した。


「マ、マイシスター!? 急に翼とか生やしちゃって、そういう新技まで生み出したのか! 流石だぜマイシスター!」


「フッフッフ……久々の登場だぜ! オレ様はイチカ様、この世界で最もアツい野郎だああああああああ!」


「おお! 流石だ、やっちまえええええ!」


「命令すんじゃねぇ! だが、悠久の時を生きてきたオレ様が、ほんの一瞬で気に入らねぇアイツらを叩きのめしてやらああああああ!」


「グギャアアアアアアアア……」

「ウォ、オオオオオオオオオ!」

「グアアアアアアアアアアア!」


「お、おおおおお! やっぱり流石だ、マイシスター!」


 モニトーは良くも悪くもバカである。目の前にマンティコアという聖霊が人間を乗っ取り、姿形まで変貌させて暴れまわっているというのに、同じような現象が起こっている妹を心配するどころか、逆に感心してしまっている。

 だが、流石という評価は的を射ているものであった。まるで太陽のように眩しいその炎は瞬く間に敵全体を包み込み、一瞬にしてダウンさせてしまったのだ。


「ちょろい、ちょろいぞ! 早く戦わせてくれよ、あのマンティコアとやらと!」


「……そうだな、ならば暴れる暴徒達を共に片付けようぞ! うおおおおおおおおおおお!」


 2人は気合をさらに入れ、次から次へと来る敵を流れ作業のようになぎ払う。それを見てオーディエンスはエールを送ってくれるが、肝心のボス「マンティコア」は何かを企みながら奥に突っ立っているだけだ。


(ヘッヘッヘ……しもべ共はすぐにやられていく、だがこれでいい。こうやって体力をじわじわと削っていく……さすれば勝利の女神はこちら側に微笑む。我ながらいい作戦だぁ、さぁもっとスタミナを削ってしまいなぁ!)


 2人の健闘もあり、残りの敵はあと50人ほどとなった。理性を失い、ただ命令と本能のままに猪突猛進してくる敵を倒すのは、イチカとモニトーにとって全く苦では無かった。控えているのは大ボスであると、この時は知る由もなく……ただ、次々と錬力術や武術で圧倒し続ける。


武霊蒸ふれいむッ! オレ様にかなうもんなら、パンチの1つでも当ててみやがれッ!」


「そ、その通りだ! マイシスターとボクにかなうもんなら、何かしらの武道をせめて5年は稽古してくることさ!」


 2人は有頂天だ。だが、これも全てマンティコアの手の内。マンティコアはその指をパチンと鳴らすと、一斉に「しもべ」達が倒れてしまった。

 突然の出来事に、2人は驚く。


「は!? 何が起きたんだよ!」

「What's!? 何が起こったんだい!?」


「……もう戦いたいんだろう? このマンティコア様とよぉ! こいつらの強さを10とすれば……ワシは5000は軽く超えているだろうな。さぁ、どこからでもかかってこい、すぐに潰してやるさ」


「待ちきれず宣戦布告、ってワケか……おもしれぇ、やってやんよ!」

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