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魔法が日常となった世界で、今日も地球は廻る。  作者: おみたらし
3章 現代事変編〜参〜
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160話 タケトシの過去 その1

 岩田タケトシ。リサトミ大学に通う19歳で、趣味は筋トレ。持ち前のフィジカルから運動はかなり得意で、さらにその勤勉さから成績も優秀、まさに文武両道である。


 そんな彼の生い立ちは波乱万丈だった。生まれは田園風景の広がる田舎であったが……今のタケトシの姿からは考えられない程、昔は“ヤンチャ”であった。

 これはタケトシがまだ小学3年生だった時の話である。




「……おい、おい! あいつが来たぞ!」

「うわあ、怖すぎだろ……不良の仲間なんでしょ? あいつ……」


「チッ……久々に来てやったと思ったらこの仕打ちかよ……うざい奴しかいねぇぜ、やれやれ!」


 今のタケトシからは考えられない程、幼い頃は気性が荒く、学校をダルいという理由だけでサボることも多くあった。だが共に遊ぶ何人か友人はおり、その中の1人が鳥岡ユウヤだ。


「うわー、ひさしぶりー! 元気だったか、岩田〜!」


「おい鳥岡……あんま大きい声出さないでよ、目立っちゃうじゃんか……それに今は違うクラスなんだ。学校のルールで他のクラスに入ってきちゃダメなはずだろ?」


「別にいいだろ、見つかるまでに逃げたら怒られないってば……ほら! 休み時間なんだから鬼ごっこしようぜ!」


「無理。お前足速いし勝てねえよ。廊下は走るとキケンなんだ……代わりに腕相撲ならいいぞ」


「えぇー! んじゃあさ、鬼ごっこするか腕相撲するか、鬼ごっこで決めようよ!」


「おいおい、人の話をちゃんと聞いてくれ。マジでバカなのは錬力術だけにしてくれよ……」


「うるせえなー。この前のテスト、ぜーーんぶ90点以上だったんだからな。頭いいもんねー、それにバカって言う方がバカなんだもんねー!」


「はぁ!? 今お前もバカって言った、バカなのはそっちだ、そっち!」


 今やタケトシとユウヤは10年以上の付き合いになる。中学も同じ、高校は別のところへそれぞれ通ったものの時々一緒に遊びに行き、そして大学でまた再会した。切ろうとしても切れることは絶対に無い、そんな繋がりだ。


 タケトシが幼少期グレていたのには理由があった。それは当時、学校の中で暴れ回っていた不良に目をつけられ、少しでもナメられないように自ら怖い存在を演じて不良らを威嚇し、彼なりに不良に対抗していたのだ。


 タケトシの家は躾が厳しく、「時に人の盾となること」「人のために生きること」を常に説かれていた。幼いタケトシにとってその言葉の意味はよく分からず、ただ悪役を買って出ればいいのかと考えていた。


(人を守るため……そのためにオレがこのクラスのボスになってあげてんだろ! それなのにオレが”不良の仲間“……? 本当にうざい、大嫌いだ全員!)


 タケトシ自身、だんだん学校に行くことがイヤになっていた。好きでもない「ワル」を演じて、家に帰ればいい子を演じなければならない、自分自身の本当の胸の内から背を向ける毎日。

 だが、そんな日常は最悪の形で崩れることになってしまう。これは2047年6月末のことである。


「オラアアアアアアアア! 岩田はどこじゃあああああ!」

「タイマンはりにきたぞー。ビビってないで出てこいゴラアアア!」

「今日こそ来てんだろ!? さっさとこっちこいやああああ!」


「うわ……うわぁ……! またあいつらが来たぞ、岩田のせいだ!」

「もー、岩田くんのせいじゃん……ホント迷惑、ホント嫌い!」

「責任取れよ岩田!」


(こいつら……オレがいてもいなくても、こいつらは色んなクラスに襲いに来るんだよ!)


 タケトシやユウヤが通う小学校には不良グループが存在し、学年問わず様々な教室に突然現れては大暴れするのが彼らの日課だった。

 もちろん彼らもただの小学生、先生や強そうな上級生が現れれば尻尾を巻いて逃げるだけだ。だが、勝てそうな相手にはとことんケンカを売りまくる。だからこそ、自分自身が彼らからして「勝てそうにない」存在になろうとしたのだ。

 そして、ついに力を見せつける日が来たのだ……タケトシは満を持して席を立ち、不良達の前に立ちはだかる。


「……おい。オレに用でもあんのか、アァ?」


「おーっと! ずっとビビって学校休んでたんだろ!」

「お前弱そうだもんな、太ってるだけだもんなー!」

「よーわむし! よーわむし! よーわむし! よーわむし!」


(こいつら……でもまだガマンしなきゃ……! 大事なのはクラスメイトを守ること!)


「おいおい、何とか言えよー! まさか、本当はイキってるだけのザコなんじゃーん!」

「錬力術見せてくれよー! 得意なんだろ、学年トップクラスなんだろー! 早く、早く早く!」


(耐えろ、耐えろ耐えろ耐えろ……!)


「はー……こいつ本当におもんねえなー。こうなったら、こっちから……!」


「お、おい! やめろ!」


「うるせえ、大人しくしてろ!」


「ぐ、離せ……!」


 不良は突然、複数人でタケトシを羽交い締めにした。そしてリーダー格の男がニヒヒと笑いながら無関係のクラスメイトに向かって、なんと水を生成して投げつけたのだ。


「お前のせいだぞ岩田タケトシ! くらええええええ!」


「おい! やめろって、やめろ! 関係ないだろアイツ! やめろおおおおおおお!」






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