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魔法が日常となった世界で、今日も地球は廻る。  作者: おみたらし
3章 現代事変編〜壱〜
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141話 謎の女、スズ

「うわあああああああ!」

「なななななな、何だよアイツら、ってぐぁぁぁ!」

「キャアアアアアアアアア! 助け、て……イヤアアアアア!」


 ユウヤと栄田がアランと戦っている頃。関西だけでなく、関東、九州、様々な地域がコウキの陰謀の渦に巻き込まれつつあった。洗脳装置≪アクセサリー≫が届いた者から順番にゾンビの如く自我を無くして暴れまわる地獄絵図。警察や特殊練力隊の働きもむなしく、ただ絶望が広がり続けるばかりだ。


 だが、ユウヤ達のように立ち上がった人物がいないワケでは無かった。特にその中でも秀でた実力を持つ女がいたのだ。


「グエエ……コウキ様二、従ウゾ……」

「ギギギィ……理想ノ世界ヲ作ル!」


「やれやれ……あの野郎、やってくれたねぇ!」


 その女は群衆が逃げ惑う中、たった1人逆方向に駆け抜け、城壁のように立ちはだかる洗脳されし異形達に立ち向かう。そして一言、とある言葉を叫んだだけで数十体もの相手を気絶させてしまった。


「いい? 絶対に『この私』に従いな、まずは潰れろっ!」


 ただ彼女は1つ、命令を下しただけだ。和解どことか意思疎通すら困難そうな相手を、たった数秒で降伏させてしまった。

 とは言っても、彼女の練力は音に関するもの、というワケではない。ただ、これまでも実際チーム・ウェザー、いやコウキが作ってきた洗脳装置≪アクセサリー≫を身に付けた者に対しては命令が必ず通るのだ。


「……まったく、少しはプライドってもんが無いのかしら」


「……おお、狂犬様が助けてくれたぞ!」

「すごい、本当にすごい! ありがとうございます!」

「まるで神様だ……!」


「あ、あはは……皆さん、無事ならよかったです……」


(ふぅ……これは当然の出来事、なのにね。しかも命令なんて朝飯前どころか夜食前だってのに)


 彼女の名前は犬飼スズ。首都・T都に暮らす少女だが、実際の年齢はシークレットだ。民間人に対しては優しくて強いヒロイン。人助けや事件の解決などによる報酬や寄付等で生計を立てている。

 だが、内に秘める本性は地獄の門番とでも表すのが妥当か。白旗を上げようものなら、その布地は絶望と恐怖という名の色に染め上げられるだろう。少しでも気に障ってしまったものなら、最低でも致命傷は免れない。街の人々は彼女のことをリスペクトしつつも、あえて狂犬と呼んでいる。


 スズには最近、どうしても許せない出来事があった。それはコウキによるあの生放送。もともと、スズはコウキのことが嫌いだった。日本中のいたるところにファンを抱えていた表向きのコウキ。これまで特に炎上騒ぎを起こしたこともなく、迷惑行為を好きで配信するスタイルではない。だが、逆張りなどでも何でもなく、彼女の魂が生理的にコウキを否定していた。

 コウキももちろん、自分の能力でファンを生み出していた、つまり視聴者に妄信的な感情を植え付けてきた事実は存在する。果たしてスズにはその能力が効かなかったのか、それとも他の要因があるのか……


「おお、スズさぁん! 今日も暴れてんねえ、まるでケルベロスって感じ!」


「……やめろよ、佐藤。私はこれから向かうべき場所があるんだ。準備しなきゃだから、帰った帰ったぁ」


「チェ、冷たいねえ。オレもこれくらいできちゃうんだよ? ほらっ!」


 佐藤という名の男は手でピストルの形を作って異形の山に標準を合わせた瞬間、眩い光と音が駆け抜けていき、積み木を崩すようにその山を吹き飛ばしてしまった。


「フギャアアアアア!」

「グアアアアアアア!」


「……おっと、今回は80点ってところか。おしかったなあ」


「あーもう、それは見飽きたよ。私はアイツのところに行かなくちゃならないんだよ、分かったらさっさと帰っておくれ」


「それって誰!? 彼氏!? 見せてみ写真……ってどこ行くんだよ!」


 スズが一体誰に会うつもりなのか興味深々な佐藤を無視し、駅に向かった。彼女が会おうとしている人物は会ったこともない人物、だがとある因縁のためにいつしかは対面することになる運命にある男であった。


「待ってろよ、鳥岡ユウヤ。いや……ジェフリー・ゼピュロス。私はお前に忠告がある。従わなければ……実力行使をするだけさ」


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