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魔法が日常となった世界で、今日も地球は廻る。  作者: おみたらし
2章_4 潜入編
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119話 止まない雨はない

「間もなく……!? まさか、その洗脳装置を……!」


「イエス! だいたい100万人くらいだったかな? その購入希望者。そして今日、ついに順次発送され始めるのさ……!」


「今日……だと!?」


「そうさ。そして全ての人に届く頃は……ゴールデンウィーク。ああ楽しみだねぇ、きっと日本は大変なことになっちゃうんだから!」


 かつてヒビキやカナ達が身に着けていたアクセサリー状の洗脳装置。それを作ったのはコウキだが、先程コウキは何でも作れる能力を持つと自白していた。なるほど、100万もの洗脳装置を短期間で調達できたのも理解できる。

 だが、その耐久性はそれほど高くはない。大人が踏み潰したり、あるいは錬力術をぶつければたやすく破壊できる。それを理解しているからこそ、ヒビキは宣言した。


「おいお前ら! 全力を尽くしてあの指輪を破壊――」


「無駄無駄……! オレが阻止する、防壁シールティング……!」


「なっ……あいつ、洗脳装置が詰まった段ボールを丸ごと壁で包みやがった!」


 ディジェフティフは段ボールの山を、筒状の分厚い土壁でガチガチに塞いでしまった。洗脳装置が破壊されるのを防止するためだ。だが、そのゴゴゴゴという地響きのような音で1人の男が目覚める。


「んんっ……確か、オレって……」


「ユ、ユウヤ! 気がついたみたいだね、よかった……!」

「オ、オイ! 心配したじゃねえか、許さねぇぞユウサク……マジでよかった……うぅ……」

「鳥岡君……」

「ヘッ……こいつが死ぬわけねぇよ」

「ア、アタイだってそう思ってたさ! けど……よかったよ……」

 

 洗脳はされていたとしても、この技は正真正銘、タケトシのものだ。その音がユウヤに働きかけ、意識を取り戻せたのだ。

 一同はユウヤの復活に喜びを見せる。だが、無慈悲にもディジェフティフはたちまち抹殺の眼差しをユウヤに向ける。


「風谷……さっきの続き。始めるぞ……!」


「……あぁ! 錬力術のすすめⅠで培った錬力スキルを見せてやらぁ!」


「錬力、すすめ……? ……行くぞ風谷!」


 一瞬何かを思い出すような姿を見せたものの、ディジェフティフはユウヤに向かって突進してくる。ユウヤもそれをじっと見ながら隙を伺う。


「いいぞ、ディジェフティフ! やっちまえ、風谷ヨウマを……!」


「……グアアアアアアアアア! 潰れろ、ヨウマあああああああ!」


「潰れねぇよ、オレは足が速いっ!」


 ユウヤはラリアットを間一髪掻い潜り、スケート選手のように柔らかく体を動かしながら攻撃をかわす。そして一旦距離を取ると、人差し指をひょいと動かして攻撃してこいと挑発する。


「この野郎……火山弾ガトリング!」


「へぇ、この技も見覚えがあらぁ……100パー全て忘れたワケじゃなさそうだな、きっと心の中ではタケトシが自我を取り戻そうと奮起している……!」


 ユウヤは爆発的に迫りくる、燃え盛る岩の上を駆け上がり、大きくジャンプしてディジェフティフの頭上をとる。


「し、しまっ……」


「へへ、タケトシじゃねえぞターゲットは……! 狙っているのは……諸悪の根源だああああああ!」


 ユウヤは両手に風を凝縮させ、土壁に包まれた洗脳装置目掛けてその風を解き放つ。

 ユウヤは風の強力な噴射により宙に浮いた状態となり、土壁の中を目まぐるしく吹く回る強風はダンボールを無理やりこじ開け、中にある洗脳装置を持ち上げて部屋中に散らかしてしまった。


「ゼピュロス……考えやがったなぁ!」


「経験があるんでなぁ、このシチューエーションは! タケトシのバ先に忍者もどきが攻めてきた時……こうやって筒の中のターゲットを破壊しようとした!

 よし皆、足元に散らばった洗脳装置をぶっ壊しまくれえええええ!」


 ユウヤはカエデ達に指示を出す。そしてコウキ達がそれに目を取られているのを見計らうと、壁を強く蹴りディジェフティフ向かってロケットの如く飛び出した。


「正気に戻してやる! タケトシ、目つぶってろ!」


「し、しまっ――」


「はあああああっ! 必殺・かすりパンチィィッ!」


 ユウヤはタケトシの体を傷付けないように、ただ首輪という洗脳装置だけを壊せるように、ギリギリのところを狙って拳を突き出した。


 一瞬パリンと音が聞こえたかと思った瞬間、ユウヤは勢い余ってゴロゴロと転がってしまう。だが、慌ててタケトシの方を振り返ると、壊れた首輪とともにうずくまるタケトシが見えた。ユウヤは痛みに耐えながらもタケトシに近づき、手を差し伸べる。


「……あれ……? 確かオレ、牢屋にブチ込まれてから……?」


「タケトシ……オレだ、覚えてるな?」


「ユ、ユウヤ……だよな……?」


「よ、良かったぜ……ウッ」


「お、おい! 大丈夫か、ユウヤ!?」


 ユウヤは安堵と受けたダメージの後遺症からか、再び倒れてしまった。慌ててカエデが駆け寄り、錬力術でその傷を癒やす。


「へへへ……ありがとよ……あ、あ、ありがとヨーグルト……」


「もー、ユウヤふざけないで……! でもよかった……それに、それにタケトシくんももとに戻ってくれてっ!」


「……っ! つ、つ、つ、つつつ月村さん!?」


「へへ……その様子、マジで元通りになったみたいだな」


 少なくとも、この場面だけは大学生達による青春の1ページに見えることだろう。だが、ユウヤ達は直ちに気持ちを切り替えなければならない。なぜなら……


「我の目の前で……即興・友情ごっこなど許さないぞ! さぁディジェフティフ、裏切りは許さぬ。始末を再開するん――」


「させねぇぞブティフール! さぁ……お前ら! 一緒にヤツを始末するぞ!」




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