115話 倉庫へ
「……到着だ。ここが例の洗脳装置をたくさん保管している倉庫……中にはコウキ、チーム・ウェザーの4人いる幹部の中で圧倒的実力を持つ男がいる」
「コウキ……」
「ええ。表の顔は不沈陽という名前のインフルエンサー。だけど時々チーム・ウェザーの思想やそれに関するグッズを販売、以前から少しずつ野望のために動いていたのよ」
カナの顔はかなり強張っている。それを見てユウヤは察した。コウキという男は、それほどまでに高い実力を備えた者なのだと。緊張のあまり少し考えただけで、喉が渇く。それを見たカナは指を鳴らしてどこからか水を手元に集め、ユウヤに飲ませてあげる。
「……ありがとう、カナ。でもこの水、どこの水だ?」
「え? 蛇口からの水だよ。誰かがトイレの後、出しっぱなしにしてる」
「……ブヘェッ! 蛇口は蛇口でもトイレのかよ……何だか嫌だな、気分的に」
「フフッ、まぁいいじゃん。この先……もっと嫌な現實を見なければならないんだからな」
そう言うとカナは手のひらをユウヤ達の前にかざしてきた。どういう意味かと真銅が不思議そうな顔をしていると、カナは微笑みもう片方の手で小さくガッツポーズをしてみせた。その意味を理解したユウヤとメイは顔を見合わせて頷き、カナの手の上に自らの手のひらを重ねる。
「……ほら、先生も」
「あっ、はい……」
真銅がユウヤに催促されて手をかざした瞬間、横から見知らぬ手のひらが3本、さらにその上にかざされた。驚いたユウヤはその方向を見ると、そこに立っていたのはカエデとイチカ、そして服がボロボロに破けたヒビキだった。
「カエデにイチカ、なぜここに!? それにヒビキは……無事だったみたいだな」
「フフ、私達も先生にこっそり、ここの場所を教えられたんです。だから来ちゃいました」
「そうだぞ、ユウヘイ!」
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『……あれ、何でしょうかこれ』
『ん? どうした?』
『いや、何やらどこかの地図らしきものと日付が……』
『……ホントだ、でもウチが見たときはそんなもの書いてなかったのに』
『……行きましょう、必ず治して』
『……ああ!』
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「炙り出し、です。そこの女の子、見たところ炎系の錬力術を得意としているように見えましたので……こっそり、隠しメッセージを残したんです」
「そ、そうだったんですね……だけど2人とも、絶対にオレ達の後ろにいると約束してくれ。今から戦うであろう男は……次元が違う」
「ユウヤ、それならオレから説明済みだ。しかもこの2人、オレが雑魚共に囲まれたときにちょうど駆けつけてくれたんだ。援護射撃くらいなら……させてやってくれ。やる気はマックスのようだしな」
「……でも、もしものことがあれば……!」
「大丈夫だよ、ユウヤ! 私達仲間なんだから……私とイチカさんだけ助かるなんて、そんなことできない」
「そうだぞユウスケ! ウチの実力はもう分かってんだろ!」
カエデとイチカは笑顔をユウヤに見える。ユウヤはふと感じた。無論、仲間の死を望むワケでは無いのだが……不思議な話、『魔王に挑むも失敗したパーティ』のように、散ってみるのも最悪のバットエンドでは無いのかな、と。そして、自分達の意思を継ぎ、また奴らに抗う者が現れてくれるなら……それが成果なのかな、と。
そしてトゥルーエンドとしてはここでコウキを倒し、その上にいるのであろうホリズンイリス族とやらに会ってやるんだと。
「……へへ、なぜか気が変わったぜ。皆で一緒に戦いたい、皆で魔王討伐ってのも悪くねえ」
「魔王って……それじゃアンタさっきのケンジと変わんないよ? もう19とかでしょ、大人になりなよってば」
「フッ、子ども時代の夢はなかなか消えないもんだぜ? そして今から、それを実行してやろうじゃないの」
ユウヤ、真銅、カエデ、イチカ、メイ、ヒビキ、カナ。7人は顔を見合わせ、微笑んで重ねた手のひらを大きく持ち上げて掛け声を上げた。
「「「「「「「オーーーーッ!」」」」」」」