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7話:初めての夜

「おいしい!」日本ではアメリカの牛は狂牛病で怖いなどとおばあちゃんが心配していたが、買って来た分厚い肉はとてもおいしかった。

「本当は外でBBQにしたらもっとおいしいんだけどね、まだよく使い方がわからないんだ。」とお父さんがいう。確かに裏には黒いバーベキュー用の器具がおいてある。

ギャバ猫お母さんは念願のステーキをお腹いっぱい食べてご機嫌だ。ぺろぺろと口の周りを舐めながらう〜んと伸びをした。


「明日はお父さんの車をサムおじさんと取りに行って、私の学校に行くんでしょ?なんかちょっと怖いなあ。」美香流は小学6年生だが、入るのは中学1年になるという。というのは、テネシー州の学校の制度は、5年、3年、4年制であるかららしくいきなり同級生と違い中学生になるというのは心もとない。

「美香流が嫌だったら、1年学年を落として5年生から行ってもいいんだよ?」

「ううん、私頑張る。それに、最初はESLっていうのがあるんでしょ?他にも・・・日本人がいるといいのになあ。サムおじさんみたいな。」

「う、う〜んサムおじさんみたいな小学生はいないと思うが、確かおじさんの娘の一人は同じ学校の上級生にいたと思うぞ?まあ、今日は美香流も疲れただろうし、シャワーを浴びてゆっくりと休みなさい。明日は、昼から、ここの家の大家さんにも逢うからね。」


確かに今日はすべてが初めて続きで興奮していたのか身体はとても疲れていた。私は二階にあがると、持って来たトランクの中から、歯ブラシとチューブ、そして旅行用の小さなシャンプーやリンスの入ったバックを取り出して、洗面所に向かう。

トイレの便器に座りながら、お風呂も今までと違い、シャワーなんだとぼーっと考えた。

シャワーを浴び終わると、はたと、タオルが無い事に気がつく。洗面所から美香流は大きな声でギャバ猫お母さんを呼んだ。

「おかあさ〜ん!お願い、ちょっと来て〜!!!」しばらくするとお母さん姿のギャバ猫がやってきた。「なに、美香流?そんな大声だして?」

「タオル忘れちゃった!トランクにあるの持って来て!」

ギャバ猫お母さんはやれやれといった調子でタオルを持ってくると美香流に手渡した。そういえば、ギャバ猫お母さんは、お風呂には入らないのだろうか?確かギャバ猫はあまりお風呂が好きではなかった。お母さんは反対にお風呂が大好きだったが・・・。


「ねえ、ギャバ猫お母さん、お風呂は入らないの?ずっと籠の中だったから疲れているし、よごれてるんじゃない?猫の姿に戻ったら私が洗ってあげるよ?」

するとギャバ猫お母さんは嫌そうな顔をして私を見ていった。「まだ美香流に洗ってもらうほど年寄りじゃないわよ。私の中のギャバ猫は嫌がってるけど、人型の時は私の方が強いんだから、しっかりと後でシャワーを浴びさせてもらうわ。ほら、美香流もいつまでもそんな格好でいたら風邪引くわよ。早くパジャマに着替えるのにゃ!」


まだベット以外は何も置いていない南側の部屋に戻ると美香流は窓の外を見る。サブデビジョンと呼ばれる住宅街の中に美香流たちの新しい家があるのだが、青い街灯に照らされた家並みはとても可愛くて美香流はいよいよ自分が外国に来た事を実感するのだった。

大家さんが用意してくれていたのか、ベットには可愛い花柄のシーツが布団がちゃんとかけられていた。日本では今頃、お昼頃で、薫子ちゃんや、みんなは給食を食べている頃なのだろうかと様々な事を思い描くうち、美香流は深い眠りの中に引きづり込まれて行った。


お父さんとギャバ猫お母さんが、その後、そっと部屋の電気を消しに来て、二人でよく眠っているわなんて話していた事など私は知る由もなかった。

ギャバ猫お母さんは夫婦の寝室に戻ると、夫に声をかけた。

「今更ながらだけど、あなたがこんなに順応力があるなんて思わなかったわ。」

「そりゃあ、最初は僕だって吃驚したさ。曲がりなりにも科学者だからね、どういう原理でこうなったのか色々考えたりもしたし・・・」

「・・・・私が怖くない?美香流はすぐに馴染んでくれたけど・・・」

「そんなことあるもんか!涼子さんが死んでしまった時は美香流がいなければ後を追ってしまうぐらいに辛かったんだ。どんな形にしろ、君が戻って来てくれて僕は本当に感謝しているよ、ギャバ猫にもね。まあ、まさかギャバ猫が100年近くも生きて来た猫だなんて思いもしなかったけど!」そういって小さく微笑む。


「ありがとう!裕幸さん!」そういって抱きついたが途端に術が解けてギャバ猫の姿に戻った。

「まったく・・涼子の魂もずっとお前達と一緒に居たいのはわかるけど、ずっと人型なんは疲れるンや。それにさっさと戻らんと、涼子に風呂入られてしまうとこやったからなあ。」

目をまん丸くしている裕幸に向かってギャバ猫が言った。

「まあ、裕幸はん、そないなことで、うちらの魂は混ざりあっとるけど二つの意識がちゃんとあるんや、涼子の事もうちの事もこれからよろしくやで?」

裕幸はそっとギャバ猫を抱くと言った。「はい、ギャバ猫涼子さん、これからも僕と美香流をよろしくお願いしますね・・・」

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