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11話:大家さん2

お父さん達が何かを話している間、美香流は、ジェームズ君に色々教えてもらったら?と言われたものの、言葉がわからないのに何を教えてもらえば良いのか・・・リビングのソファでくつろぐ彼を見ながらこっそりと息を吐いた。

しかし、すらっとして均整のとれた少年らしい体つきといい、整った顔といい、こんな男の子はきっともてるんだろうなあとぼんやりと考える。というかこんなこと考えている時点でなんだかおばさんっぽいなあと思う。

私の遠慮の無い視線に気がついたのか、ジェームズ君が読んでいた本から目を上げて私を見た。にっこりと笑って何か話しかけてくる。どうしよう・・・。

一瞬パニックに陥った私は、本を指差して言った。「What is this?」って本に決まってるだろう!と自分でもツッコミを入れたくなるが、顔を真っ赤にした私に彼は何かを一生懸命説明してくれる。もしかしたら、この本の内容を聞いたのかと思って説明してくれているのかもしれないが。説明してくれる内容は一切わからないが、とりあえず頷いておく。日本人の悪い癖だ。


すると、ギャバ猫がとことこと歩いてくると、とんとソファーの上に飛び乗り、ジェームズ君の側までいくと、頭を彼にすり寄せて甘えた仕草をする。

実はちょっと前に分かった事だが、ギャバ猫はかなりのイケメン好きだった。テレビでカッコイイ男の人が映っているとかならず、テレビの前の特等席を陣取ってそこから動かない。が、あまり好みでない人が映るとふいっと顔を背けてしまう。なんだかこの態度もあからさまだなあと思いながらも、ジェームズ君の説明が止まり、ギャバ猫へと集中したので少し助かる。


彼は猫好きなのか、猫を抱き上げると頭を撫でたりして手慣れた様子だ。彼は私の方を見て猫を指差して言った。「What is your cat's name?」

今、猫の名前って言ったよね?ちょっとした単語なら分かる。でもどうやって答えればいいんだ?ギャバ猫・・・・えっと、ギャバ猫だから・・「gyaba・・・cat?」

ジェームス君は小さく答えた私の声をじっくり聞いていたらしく、聞き返して来た。「gyaba cat? What is this mean?」え?もうわかんない?何?

えっと・・・「Her name is gyaba cat」とりあえず今度はちゃんと言いなおしてみる。

多分理解はしていないかもしれないが、彼はちょっと首をすくめるとギャバ猫の事を「Gyaba」と呼んだ。ギャバ猫は私のほうをちらっと見ると仕方なさそうに、「にぎゃ〜」と不思議な声で答える。でもそれを聞いたジェームズ君は満足そうに、もう一度ギャバ猫の頭を撫でた。


しばらくするとお父さんと大家さんがリビングに戻ってきた。といっても二人は台所にあるテーブルで色々と喋っていたのだが・・。

「美香流、ジェームズ君とは仲良くなったみたいだね。学校も一緒だからこれから何かあったらきっと彼が助けてくれると思うよ。とりあえず、明日注射を終えて、明後日から学校なんだけど、行き帰りは、ジェームズ君と一緒に、大家さんが連れて行ってくれるからね。それで、僕が帰ってくるまでは、大家さんのお宅に居る事になると思うけど・・・美香流大丈夫かい?」


大丈夫もくそも不安でいっぱいだが、お父さんもお仕事できているのだから、甘える訳にはいかない。でも、ギャバ猫はどうするんだろう・・・。

「おとうさん、ギャバ猫は?」

「大丈夫・・その辺は抜かりないよ。たぶんギャバ猫もしばらくはうちと大家さんの家を行ったり来たりするだろうし」

「Ok,We got to go, See you tomorrow, Mikaru.=そろそろいかなきゃ、じゃあ、また明日ね、ミカル」そういって大家さんは来たときと同じように私をぎゅっと抱きしめた。これが俗にいうハグと言う物なのか・・・。ぼーっとしてると、今度は、ジェームズ君まで、私を軽く抱きしめて「Bye, Mikaru」と言って出て行った。ただの挨拶だとは分かっているがどうもなれない。同じ年の男の子にこんなに接近されたのは初めてだった。二人が車で去ると、私はどっとまた疲れてソファーに座り込んだのだった。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

その頃、車の中ではジェームズと、母のステラが話していた。(喋りは英語ですが、日本語に変えます)

「どうだった?ミスター堀内の娘さんは?可愛かったでしょ?私も今日初めてあったけど、以前写真で見せてもらったのより小さくて可愛かったわ。」

「そうだね。言葉はあんまり分からないみたいだったけど、一生懸命な所が可愛いよ。」

「明日から暫くの間、うちで面倒を見る事になっているから、しっかり面倒をみてあげるのよ?」

「ああ、うん、分かってる。暫くってその後は?彼女お母さんいないんだろ?」

「そうなのよね、遠慮しなくていいいって言ったけど、そのうち、住み込みのお手伝いさんを雇うとかなんとかって言ってたわ。」

「ふうん・・・そうなんだ。」

「明日はあなたを学校に送り届けてから、彼女を連れて予防注射を受けに行くわ、その後は夜までずっとうちに居るから・・・そうそう、暫く彼女がなれるまでは、遊びの約束控えてね?」

「分かったよ。」ジェームズはミカルとそして、ギャバという変わった猫の事を思い出してくすりと笑う。なんだかこれからが楽しみだった。

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