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10話:大家さん

家に帰ると私は車のドアを開けて家の中に入る。

「ギャバ猫おかあさ〜ん?」リビングにも台所にも居ない・・が、ふと目を凝らして裏庭を見ればちょっとてっぷりと大きな姿をしたギャバ猫が庭に沢山来ている野鳥を追いかけているのだ。

「ギャバ猫!何してるの?!」がらっと台所から外に出られる扉を開け私は叫んだ。

ギャバ猫は私の方をみるとにやっと笑う。やっぱりこの笑いだけは慣れない・・・コワイ。

「なんや、美香流もう帰って来とったんか? うち、新しいダイエット方法試してんねん。家の中でひなたぼっこしてたら、えらいこいつらがぴーちくぱーちくうるさいからちょっと脅かしたろかおもーてんけど、これが結構なかなかええ運動になってんねんで。最近ちと体重増えたさかい丁度ええわ。」


なるほど・・・それで鳥を追いかけ回していたのか。しかしどう見ても鳥に遊ばれているようにしか見えない・・気もするがそれは言わないでおこう。

「なんだ。吃驚した・・」

「そんな事より、美香流学校いってきたんやろ?どうやった?新しい学校は?」

「う、ウン・・・。なんかいっぱい外人さんがいて、全然日本の学校と違ったよ・・・」

「そんなん当たり前やろ!なんや弱気になってんのか?ちょっと待ちや。」

ギャバ猫はお母さんに変化すると、私の頭をよしよしと撫でてくれた。「大丈夫よ、美香流。きっとすぐに友達も出来て楽しくなるわ。」

「・・・そうかなあ?」

「そうよ。それに今日の4時に大家さんがお子さんを連れてくるんでしょ?美香流の初めてのボーイフレンドになっちゃうかもよ?」


「・・・・ママって単純だね。まあいいや。なんだか今日はとっても疲れちゃった。大家さんがくるまで2時間ぐらいあるでしょ?ちょっと昼寝してくるね。」

そう言うと私は2階に上がりあっという間に寝てしまった。緊張して慣れない英語を聞くのはとても疲れるという事を知った一日だった。


リビングではお父さんとギャバ猫お母さんが話していた。

「なんだ、美香流のやつ、もう寝ちゃったのか?」

「なんだか、疲れちゃったらしいわ。あの子大丈夫かしら、これから・・・」

「そうだな、まあ最初は大変かもしれないが、慣れたらきっと楽しくなるだろう。」

「ねえ、あなた。その大家さんってどういう人なの?美人?」

裕幸はぷっと吹き出して涼子の顔をまじまじと見た。ギャバ猫と涼子、両方の記憶と性格をもつ妻だが、人型の時はやはり涼子のままだった。

「そうだな。昔は美人だったかもしれないが今は随分と恰幅の良いおばさんだよ。こちらの女性は結婚して数年経つと驚くように姿が変わっている人が多く居ると聞くからね。」


「そうなの?ふうん・・・」

「まさか僕が浮気でもしないかと心配している訳じゃないよね?」

「そう言う訳じゃないわ。ちょっと気になっただけ。それに美香流もこれから、その人にお世話になる事だし・・・できるだけ早く完璧に人型になれるようにしないとね。」

「ああ、そうだね・・僕も明日から仕事だし、美香流のこと、宜しく頼んだよ。」

「まあ、まかせなさいって!」

二人で顔を見合わせて笑う。それから時間が過ぎ、4時半頃になると、家の中にチャイムが響き渡った。猫の姿にもどったギャバ猫は二階の部屋へと上がっていく。美香流は15分前におきて寝癖を直すために洗面所にいた。

下からお父さんと、聞き慣れない客の声がする。

「大家さんきはったで」ギャバ猫が小さな声で美香流に声をかけた。

「うん、わかってる、今いくよ。ギャバ猫はどうするの?」不安そうな美香流の様子を見て仕方なさそうに腕に抱かれると一緒に階段を下りていく。


するとひと際大きな声が響いた。「Ahhh, There she is!」まるっと太った外人のおばさんが私に近づいてきていきなり抱きしめる。私とギャバ猫は吃驚して硬直したままだ。

丁度、そのおばさんに抱きしめられたまま、後ろに立つ男の子と目があった。綺麗な青い目・・目があってにっこりと微笑むこの男の子が大家さんの息子なのだろう、確か同じ年だといっていたが、日本でのクラスメートの男の子達より、なんとなく大人っぽい雰囲気だ。

大家さんがやっと美香流を解放してくれると、後ろに立っている男の子を紹介する。

「He's my son, James.=私の息子のジェームズよ。」

とりあえず、昨日習ったばかりの挨拶を返す。「えっと・・Nice to meet you・・・?」自信がないのでどうしても最後らへんは小さな声になってしまう。

よく出来ましたと言わんばかりに大げさに褒めてくれるおばさんと、知的そうで大人しいジェームズとの出会いは始まったばかりであった。

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