25・ミッション!役員の初任務はランチ会
先生に依頼されて。
私は幼稚園の年中さんで、役員をすることになった。
「もし誰も引き受けない時は前向きに検討します。」と電話を切り、その後先生から連絡がなかったので本当に油断していた。
先生の見事な手腕により、断るという選択肢が選べなかった…。
う~ん。
役員かぁ。
ランチ会とかやらなきゃなんだよなぁ。
私にできるんだろうか。
春休みが明けて4月の通園が始まる頃、新役員たちの顔合わせがある。
他の学年のママさんには知り合いもいないので、一体どんなメンバーが集まるのか私には想像もつかない。
とにかく行ってみるしかない。
役員を重荷と思わず、幼稚園のことをよりよく知る機会になると考えよう。
きっと良い経験になるはずだ。
私はそう前向きに受け止めることにした。
★役員の初顔合わせ
4月に入り、新役員の会合が幼稚園の多目的ルームにて行われた。
各クラスから2名ずつなので、年長・年中・年少から各4名。
総勢12名が集まった。
まずは会長と副会長を決めるところから始まる。
「じゃんけんやくじ引きで『会長』になってしまう可能性があるなら、立候補して別の役を引き受けたい。」という方がいて、副会長が立候補で決まった。
でもって。
やっぱりだれも会長をやりたがらない。
それは・・・そうだよね。
行事の度に前にでて挨拶したり。
お便りに名前が入ったり。
しょっちゅう幼稚園から連絡が入ったり。
色々と大変そうだもん。
というわけで。
結局くじ引きをすることになった。
皆で順番に紙袋に手を入れ、折りたたまれた紙をとる。
全員が紙を握ったところで、一斉に紙を開く。
・・・・・!
セーフ!!!
良かった!
会長は免れましたよぉー。
私は思わずほっとした顔をしてしまった。
会長になったのは年少さんのママさん。
でも幼稚園初心者というわけではなかった。
年少さんなのは次男くんで、長男くんが春に卒園したばかりだそう。
なので年少のママさんとは言っても、この幼稚園の事は私より詳しい。
そういう方が会長になってくれて良かったと思う。
その後順調に、会計・書記が決まってゆき、年間行事の役割分担がはじまった。
「夏祭り」「運動会」「お遊戯会」「野木桜便り」の4つがあった。
よくわからないうちに、私は「野木桜便り」の担当になった。
お仕事内容は、学期末ごとに写真付きでカラーのお便りをつくること。
担当のお仕事だけするのではなく、全部の行事に全役員参加。
係決めの意味は、担当になった人がリーダーとして取り仕切る、そんな感じらしい。
★ランチ会の準備
役割分担が決まったら、学年ごとに分かれてランチ会の相談が始まった。
同じ年中さんの子どもをもつママ4人でテーブルを囲んだ。
まずはお互いに自己紹介。
私と同じクラスは男の子のママさんで、鳥取さん。
隣のクラスは、男の子のママさんが斎藤さんで、女の子のママさんが小宮山さんといった。
役員主催のランチ会は。
日時や場所、一から十まで役員が準備しなければならなかった。
まずは日時。
毎年だいたい同じ時期に行われるので、これはそう悩まずに決められた。
次に場所。
これがなかなか決まらない。
前回と同じカフェじゃ芸がないし、喜ばれない。
だけど他に良さそうなところが出てこない。
大人数でもOKで、小さな子供が来てもゆったりできるところ、そして皆が集まりやすい場所。
そう考えるとなかなか手頃なお店がないのだ。
しかも私は土地勘がないので、あまり役にたっていない。
穴場なお店も、お勧めのお店も全然思い浮かばない。
結局。
小宮山さんが以前ランチ会で行ったことがあるという、和風レストランに決まった。
そこならお座敷なので小さい子がいても大丈夫だし、大人数もいけるという。
目新しくはないけど…。
みんながある程度なじみのあるお店なら、それはそれで良いだろう。
そういうことで、小宮山さんが予約してくれることになった。
次にお便りの作成を誰がするか、という話になった。
昨年配布されていたランチ会のお便りを思い出す。
(正直、私は手書きのお便りはつくれないなぁ…。字がっ、字がきれいじゃないから。)
そう思ったので確認してみると、特に手書きと決まっているわけではないらしい。
ここまであまり貢献できていない私なので、「パソコンで作ったお便りでも良ければ、やりましょうか?」と言ってみた。
みんなウンウンと、とっても嬉しそうな顔をしてくれた。
申し出てみて良かったなと思った。
「ひとまず次の授業参観までに作ってみるので、みなさんそれで大丈夫か確認してもらえますか?」
「うんうん、みんなでチェックしようね!」
今日の初顔合わせはランチ会の相談をしたところで終わった。
役員さんはみんな優しそうな人ばかりだった。
特に年中の役員は全員先生から頼まれたそうだし、(頼みやすそうで?)穏やかそうな人を選んだのかもしれないと思った。
数日後。
私はお便り作りに着手する。
会場になる和風レストランをネットで調べて、住所・電話番号・ランチメニューを調べる。
私のように土地勘が無い人もいるかもしれないから、地図もあったほうがいいのかな?
昨年もらったランチ会のお便りを思い出しながら、必要事項を入力していく。
急な欠席や変更がある事を考えて、役員の代表者と連絡先も必要だよね。
・・・となると、お店の予約もしてくれたし、小宮山さんが適任かな。
あとはメニューと値段、未就園児さん用の食事。
この用紙の提出期限も付け足して。
んで。
下の方に切り取り線を入れて「名前」「出欠席」「参加人数」「メニュー」「金額」の欄があればいいよね。
入れた方が良い情報を書き込んでゆき、最後は飾りつけ。
さすがに文字ばかりでは味気ない。
なので無料のイラストサイトから幼稚園らしい画像をダウンロードして、書類に貼り付けた。
これでなんとか形にはなったぞ!
授業参観で役員さんたちにみてもらおう。
4月最初の授業参観。
私は用意したランチ会のお便り(案)を持って参加した。
年中の役員4名は打ち合わせということで、少し早く来ることになっていた。
持参したランチ会のお便り(案)をみせる。
分かりやすくていいね、と言ってくれた。
役員代表で小宮山さんの連絡先を載せるのもOKしてもらえたし、特に修正もなく進んだ。
できるだけ早く配った方が良いので、帰る時に先生に配布をお願いしていこう。
先生の仕事が早くて。
授業参観の翌日にはランチ会のお便りが配られた。
キリトリ線から下の「出欠席」部分が幼稚園に届いたら、ひらりを通して私へ届くようになっている。
数日間かけて、用紙はぼちぼち集まってきた。
みなさんちゃんと読んでくださっている!
締め切り期間までに全部が出そろい、用紙をなくしてしまった1名の方は欠席と連絡があった。
こうしてみると年度はじめだけあって、欠席がほとんどいない。
さてさて、のんびりしてはいられない。
集計作業にとりかかろう。
出席者をクラスごとに分けて名簿にし、更に注文したメニューごとに分ける。
ランチメニューそれぞれの合計注文数を取りまとめて、小宮山さんに連絡をした。
お店とのやり取りは小宮山さんが担当してくれる。
これでランチの注文はOK!
当日困らないように、合計金額を計算してお店に支払う金額を出しておこう。
それとおつり用の小銭も準備しなきゃだし。
後は、当日受付で使う出欠表も作って・・・。
初めてのランチ会準備。
マニュアル等も一切ないし、去年の様子を参考にして用意してるだけだけど、本当にこれで大丈夫かな?
当日までハラハラして、気が抜けない私でした。
★まさかの展開
当日がやってきた。
私達役員4人は早めに和風レストランに集合して、机の配置や受付の用意をする。
大きなお座敷を貸してもらえたので、テーブルを真ん中に寄せ、ひとつの大きな島にした。
座布団を数えながら、ひとりひとりが狭くならないよう調節して配置してゆく。
受付用に小さめのテーブルを1つ借り、そこに出席確認&支払い確認のチェック表を置く。
会場準備が終わって少し一息ついたとき。
同じクラスの役員「鳥取さん」が話があるのと言ってきた。
なんだろう?と耳を傾けると。
「実はウチ、急な転勤が決まってしまって。それで来月には引っ越ししなきゃいけないの。幼稚園もやめるから役員できなくなっちゃって。本当にごめんね。」
「え?すごい急だね?!こんな時期に?」
「うん、もう本当にびっくりして…。しかもいつこっちに戻れるかもわからないの。」
「うわぁ。わ、私たちのことは気にしないで、引っ越しがんばってね。」
本当に急な話だった。
転勤って、4月ばっかりじゃないんだね。
今回のランチ会は4人でできるけど、次回からは3人か。
頑張るしかない!
鳥取さんも、買ってまだ数年のお家を手放すかどうかで悩んでるようだし、引っ越しも差し迫ってるしで、ほんと、役員どころじゃないよね。
ひとまず今日は鳥取さん含め4人で準備したランチ会。
みんなに楽しんでもらえるといいね。
ランチ会の集合時間少し前から、じわじわと参加者が集まってきた。
順に受付をしていく。
今日は急な欠席や変更がなくて良かった。
みんなが揃ったところでランチが運ばれてくる。
お寿司セット、天ぷらセット、から揚げセット、親子丼セット、カツ丼セット、海鮮丼セット。
人気だったのは天ぷらセットと海鮮丼セット。
天ぷらは自宅ではできないくらいカラっとしてて、熱々の揚げたてが提供された。
食べるとサクサクの衣が良い音をたてている。
添えられている天つゆがこれまた美味しいんだよね。
海鮮丼は見るからにお得。
サーモン、マグロ、ネギトロ、白身のお魚、イカ、タコ、大きめの海老、いくら。
こんなに良いんですか?と聞きたくなる。
海鮮丼が人気なのは納得!
ランチを食べ終えた頃、デザートで抹茶アイスがでた。
みんなで歓談しながら抹茶アイスを食べる。
私達役員4人は。
いつでも動けるようテーブルの一番端、入り口のそばに座っていた。
すると。
伝言ゲームみたいに、急に隣の人から耳打ちされた。
「役員さん、ランチ会ばっかりで飽きてきたから『飲み会』がしたいって。まわってきたよ。」
「・・・!?」
驚いて顔をあげ、会場を見回す。
こちらを見ている人はいない。
一体誰からまわってきたのか、隣の人もわからないようだ。
発信者不明のリクエスト。
・・・そうか。
飲み会を期待されてるのか。
役員も3人になっちゃうのに、夜の飲み会なんてできるかなぁ。
とりあえず「飲み会がしたいって話がまわってきた」と、役員メンバーに告げた。
「お酒好きなママさん多いからね。」と、小宮山さんは言った。
年中なのは小宮山さんの次女なので、小宮山さんも幼稚園歴が長いのだ。
次回なのか、年度末なのか。
とにもかくにも自分が役員をしている間に「飲み会」を企画しなければならないようだ。
お酒の席なんて妊娠してからずーっと行ってない。
夜ってことは子どもを旦那に預けてってことだよね。
・・・大丈夫かなぁ。
しかしだ。
リクエストされた以上、飲み会をやる方向で検討しなきゃ。
初のランチ会が終わったのに、ゆっくりできない気持ちになった。
役員って、色々あるんだね・・・。




