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1・新米夫婦、新興住宅地にマイホームを建てる


「ここ、いいんじゃない?!」


新米夫婦である私達はマイホームを建てようと、あちこちの土地をみてまわっていた。

そこは新規分譲地で、スーパーやホームセンターも近く、駅やバス停もそこそこの距離で住みやすそうに感じた。


なにより分譲地にぽつりぽつりと並ぶ新築のお家がお洒落で、私たちもここに建てたいと思った。


秋から冬へと空気が冷え込む季節、首元を吹き抜ける風がちょっとひんやりしていて、わくわくと高揚した心に丁度良かった。




★お隣さんはどんな人?


土地が決まればあとはトントン拍子で。

ハウスメーカーさんと相談しながらデザインを決め、すぐ着工となった。


「工事でご迷惑をかけるかもしれないので」と、先にお家を建てて住んでいるご近所さんへご挨拶に行った。


どの方もにこやかに対応してくださって、一安心だった。


これから何十年も住むことになるので、気になっていたお隣さん。

我が家のお隣の片方はちょうど建設中でご挨拶できなかったけど、反対側のお隣さんには会うことができた。


歳は同じくらい、雑貨屋さんの店員さんを思わせるナチュラルでオーガニックな雰囲気の可愛らしい奥様だった。


「お隣に建てることになりました、峰岸です。どうぞ宜しくお願いします。」


これから長いお付き合いになるのだと思い、ドキドキしながらも柔らかい笑みを向けてみた。

お隣の三津屋さんも微笑み返してくれたので、ちょっと嬉しくなった。




★新生活、はじめる!


順調に工事はすすみ、数カ月でお家が完成した。

私たちはピカピカの新居が嬉しくて、文字通り「舞い上がっている」という状態だった。

でも。

それでいいよね、一生に一度あるかないかの大イベントだもん、キャッキャしちゃう!


引っ越しも無事完了し、私たちは新居にて新生活をはじめることになった。

不思議なもので、掃除も洗濯もご飯を作るのも、庭の草をむしるのも、なんでも楽しい。


ザ・新築効果なのかな??

「建てて良かったね!」とほぼ毎日のように言って感動していた。


引っ越ししてから数カ月、部屋の家具もそろって荷物もだいたい片付いた頃。

私はなんだか・・・。

体調が悪くなってしまった。


「なんか、き、気持ちが悪い・・・。」


食事をしたいのに。

食べようと思うと気持ち悪い、食べたら食べたで気持ち悪い。

私はお腹が強いから、こんなことめったにないのに。

なんだろう。

あれっ、これってもしや!?


そう、私は子どもを授かったのでした。



★産婦人科へGO!


産婦人科へは、出産までのあいだ定期的に通うことになった。

幸い車で10分ほどの距離になので、もしもの時も安心できそうだなと思った。


今日は定期健診の日で、受付をしたあと待合室で座っていた。


目の前には熱帯魚の水槽が置いてあり、お魚がヒラヒラと色鮮やかでとっても綺麗。

よくみてみると、中には体が透明で骨が丸見えのお魚もいた!


水槽の上の方に魚の説明が貼ってあるので確認してみる。

(ふむふむ、グラスキャットっていうんだ・・・。面白い~)


お魚から目を離し顔をあげると、水槽の向こうに見たことのある顔が見えた。

ん、この方はもしかして・・・?

と思った瞬間、その人と目が合った。


間違いない、お隣の三津屋さんだ。

あちらも私が分かったようだ。

こんなところで会うなんて!


どちらからともなく、「お隣の・・・」という声がでる。

ほとんど同時に同じことを言ったので、お互いに笑ってしまった。


(三津屋さんはどうして産婦人科にいるのかな、もしかして私と同じで妊娠?それとも何か心配な症状でも?

うーん、これってどうやって話を進めたらいいのかな??

聞くべきか聞かざるべきか、それとも何か無難な話がいいのか?)


そんな考えがパパっと頭をよぎっていたら、三津屋さんのほうから切り出してくれた。


「実は今日、定期健診に来てたんです。もしかして、峰岸さんも・・・だったりします?」

「そうなんですね、おめでとうございます!・・・実は私もなんです。」


普段、普通に生活していると接点もなく、なかなかお会いすることもないので久々の再会だった。




★まさかのまさか


産婦人科でばったり会うという偶然と、同じ時期に妊娠したという偶然に、私たちは少し気分が高揚したんだと思う。


三津屋さんとは挨拶くらいしかしたことなっかったけど、この時初めて挨拶以上の会話をした。


赤ちゃんは順調ですか?という話からはじまり、最近の様子など。

出産予定日の話になり、お互いに予定日を聞いて驚いた。


なんと予定日は三津屋さんと数カ月違いで、お腹の子供たちは同じ学年になることがわかったのだ!


「すごい偶然ですね!」


「一緒に学校通うかもしれないですよね?!」


「お互い子どもが同じ性別だったら、もっとすごいですね!」


お隣のお子さんが同じ学年。

私も子供の頃、近所の子たちとよく遊んだっけ。


そうこうしているうちに、私が診察に呼ばれたため「また今度」となった。


「親子共々、どうぞ宜しくお願いします。」


お互いにそう言って、にこやかにお辞儀をして解散した。


三津屋さんと次に会ったのは、朝のゴミステーションだった。

あれから産婦人科の定期健診で会うことはなかったので、数カ月ぶりだった。


私よりも三津屋さんの方が予定日がはやいので、よく見るとすでにお腹がふっくらしていた。

もう少ししたら出産のためにご実家に里帰りするそうで、しばらくこちらにはいないと言っていた。

次に会うときは赤ちゃんを抱いているかな?


「すごく楽しみです、元気な赤ちゃんを産んでくださいね!」


「ありがとうございます、峰岸さんも体に気を付けてくださいね。」


じゃあ、また・・・となった時、三津屋さんが「あ、そうだ!」と私を呼び止めた。


「赤ちゃんの性別が分かったの、たぶん女の子だって。峰岸さんは、もう性別わかりました?」


「え、本当ですか?! まだ決定ではないですが、うちも多分女の子だろうって言われました。」


そこでまた、すごい偶然だね!となってゴミステーションの前で話し込んでしまった。

出産したら子供同士を会わてみようねとか、大きくなったら一緒に遊ばせようねとか、小学校も一緒に通えるね、などなど楽しい未来にお互い夢が膨らんでいた。




★安定の妊婦生活


私の妊婦生活は順調そのもの。

お腹がすいて食べてしまい、それが体重に反映されるのが唯一の悩みだった。


検診にいくとお腹の赤ちゃんの心音を聞いたりするのだけど、うちの子は検診の度にこう言われた。


「ふふ、今日もよく寝てますね~」


心音の様子で、お腹の中で寝てるか起きてるかわかるのだそうだ。


何となく感じていたことだけど、この子は穏やかで落ち着いた感じの子のようだ。

それでもって多分健康志向。

だって、ジャンクフードを食べると気持ち悪くなって、リンゴやイチゴを食べるとお腹で嬉しそうに動くんだもん。


そうこうしているうちに予定日が近づいてきた。




と思っていたら、予定日を過ぎた・・・。


やはりな。

何となく、この子はゆっくり出てくる気なんじゃないかと思ってた!

結局、病院で「これ以上遅くなったら促進剤を使います」というリミットの前日にやっと陣痛がきた。


お腹が痛いけど陣痛だと思わなかった、のんきなワタシ。

病院に行ったら、数時間で出産となった。


出産の感想は、とにかく「痛い」「やばい」「叫ぶ」でしょうか。


あとは出血が多かったようで、ちょっと意識がもうろうとして、産まれて感動!涙どばー!とかしている余裕がなかったです。

もうヘロヘロで!!


でも、ちらっとみたら私のかわりに旦那が涙どばー!してた(笑)

マイホームも建て、赤ちゃんも無事産まれて、私たち新米夫婦は希望に満ちあふれておりました。



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