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ジビエ会ご一行自分の能力を確認する

それぞれの能力は多分だが、自分たちの経験や仕事に依存する。

それを確認するために、俺たちはまた森の中に入ることになった。

この小屋の周辺はそれほど危険が無いのは先ほどの短時間の探索で分かったが、それでも二人一組の方が危険は減る。

今度は乳木と二人で川へと歩いていた。


「しかし、無菌化できるのは大きいな」

「そうだねぇ。それも大きいけど腐敗と発酵が見分けられるのも大きい。あとこの能力、割と万能かもしれない」


ひょい、と取り上げたのはそれなりに太った芋虫だ。種類は分からないが、でっぷりとしている。それがいきなり、茶色く細くなり代わりに枝のようなものが全身に生え始めた。

その姿は見覚えがある。昆野が嬉々としてコレクションしていた。確か。


「冬虫夏草」

「正解。虫の体内の茸菌を活性化させた」

「すごいな。高級漢方作り放題じゃないか」

「余計な雑菌なく作れるのがいい。しかもこれ、多分普通の冬虫夏草じゃないと思う」


詳しくは昆野に聞くべきだろうが、普通の冬虫夏草でも疲労回復やら免疫強化なんかの効果があると言っていた。それ以上の効果のものができるのは、ここでの生活が長期化した時にはありがたい。

サバイバル知識は皆豊富にあるが、医者はいないのだ。

後で昆野にみっちり説明を聞こうと二人で言っているうちに川に着いた。

ここからは俺の領分だ。


職業漁師の俺の能力となると、なんだろうか。

魚を捕える、というのは大前提として、それの補助になるものの可能性が高い。

ちゃぷ、と片手を水につける。魚を捕える上で便利なもの、となるとまずは船だが、そんなものが出てくる気配はない。

それならば網や釣り具をと思うがそれも出てこない。

あとはなんだろうか。船に積んでいたものを順に思い出していく。

一番初めに思い出したのは船長室だ。舵を取りながら魚群探知機で魚を追うのを思い出していれば、手がジワリと熱くなった。


「っ!?」


次の瞬間、自分を中心に半径三メートルほどの範囲の川の中の様子が手に取るようにわかった。

地形から魚の居る場所がくっきりと目の前に、川に重なるように線描が現れる。


「魚群探知機か!」


ざ、と水から手を引けば目の前に現れた魚影や地形は消える。どうやら水の中に手を漬けている間だけ現れるらしい。


「俺自身が音波の発信源で、受信装置ってことか」


これは便利だ。釣り漁船を運営してはいたが、罠でも魚は取ったことがある。この場所に魚が固まっている、という情報が分かれば罠を仕掛ける場所が限定できる。釣りをするにしても狙いやすくなる。


「当分、魚に困らなくて済むぞ」


乳木に笑いかければ俺が自身の能力がどんなものか理解したのを分かったのだろう。同じように笑い返してきた。


「大量に取れたら魚醤にしようか」


増えた楽しみにいい気分で、追加の水を汲んで帰った。


小屋に帰れば、昆野が大量の蜜蟻を、猪野が鴨に似た鳥を、広畑が小麦に似た植物を手に同じく帰って来ていた。


「どうやら全員、能力が分かったらしいな」

「おう。俺のは便利だぞ」

「ぼくのもだ」

「飯が肉や魚ばっかりにはならんようにしてやるからな」


口々に言いながら戦利品を手に全員で連れだって小屋に入った。


そこでお互いに確認した能力はなるほど、サバイバルには向いていた。


俺は魚群探知機というよりは自分を中心とした水中ソナーの能力を、乳木は菌を自由自在に操り、無菌化だけでなく菌の活動の活性化する能力を、昆野は虫との簡単な意思疎通による蜜の最終や、水、獲物の場所の特定能力を、広畑は植物の即時の品種改良と成長促進能力を持っていた。

そして猪野だがこいつは強力だった。なんとライフルで狙いを定め、引き金を引けば弾が無くとも弾らしきものが獲物に当たる能力だった。

ライフルの弾は無限ではない。ここに持ち込めている数に限りがある。それを能力で補填できるならば、無限に弾がある状態だ。心強い。


「なんか、昔やったゲームを思い出すなぁ」


ぽつ、と乳木が零す。


「それなら昔読んだマンガだなぁ。ほら、皆やらなかったか?」


その場にあった手ごろな長い棒を特徴的な構えで広畑が構える。

皆、なんとなくここが今まで居た世界と違うのは分かっていたのだろう。それでも口にしなかったのは、それなりに全員大人だからだ。

いい年した大人が「ファンタジー世界にいるんじゃないか?」はちょっと言い辛い。

それでもお互いにゲームやマンガの中でしか起こらないようなことを体験した後だ。言ってしまってもいいだろう。


「まるでファンタジーの世界だな」


俺が言うより先に一番年上の猪野が言う。そういえばこいつが猟師になったきっかけはファンタジー小説だったはずだ。

くく、と笑い声が誰ともなく漏れる。

全員、アニメやマンガの過渡期に子供時代を過ごした人間だ。それなりに幼少期に影響を受けている。

そして元々好奇心が強い人間しかいない。となれば、能力を生かしてこのファンタジー世界で楽しむ以外、選択肢はない。


「ファンタジーに出てくる飯、美味そうだったもんなぁ。今から楽しみだ」


昆野の台詞に大きく頷きながら、期待感に身が震えた。

ブクマが付いてて驚きました。

とてもうれしいです。ありがとうございます。

男しか出てきてないむさ苦しい話ですが、お楽しみいただければ幸いです。

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