プロローグ
「村長、駆除依頼を彼らに出したって本当ですか!?」
苦虫を噛み潰したような古老に詰め寄れば更にその顔がしかめられる。
「仕方ないだろう。今年は発生しすぎた」
「しかしっ……」
「うるさい。もう依頼済みだ。撤回はできん。米ももう買った。炊く職人も雇った」
準備は万端らしい。そうなると、この後は水魔法、火魔法を使える人間が駆り出される。場合によっては土魔法もだ。田舎で魔法を使える人間は限られている。しかも。
「今から、収穫の最盛期に入るのに」
人手はいくらあっても足りない。そう零せば村長も大きくため息をついた。
「仕方ない。今回の大発生は我々ではもう対処ができん」
そうなのだ。大量発生した今回のモンスターは数が多いわりに素材としては大して使い物にならない。力はそう強くはなく普段なら村の農夫でも対処ができる。が、今回は如何せん数が多い。どれだけ弱くとも数が集まればこの村の戦力ではひとたまりもない。
しかも冒険者たちも大した稼ぎにはならないと嫌がり、そうそう討伐もしてくれはしない。そんなモンスターたちの対処依頼を、彼らに出すのは仕方がない。そうは分かっていても、恐ろしい。
彼らは依頼金はあまり必要としない。求められるのは炊事場と米、そして風呂だ。それがあればどんなモンスターであろうと依頼は受けてくれる。
ただ、恐ろしいのはその後だ。
どんな醜悪な見た目だろうが、毒があろうが、彼らはすべてを調理して食べてしまう。それが神と呼ばれたり悪魔と呼ばれたりしているものであってもだ。しかも美味しくしてしまう。そのせいで絶滅してしまったモンスターさえいるという。
そんな神さえ食らう彼らを怖く思わない人間は少ない。だからこそ最後の手段として彼らは呼ばれ、そして恐れられた。
そんな彼らはこう呼ばれる。
「ニホンジン」
と。
これは集団で異世界転移してしまった日本人の一団が、異世界モンスターを駆除しつつ美味しく頂く物語。